EVトラックの導入について。メリットや事例、導入手順、補助金などを解説

物流業界で脱炭素化が加速する中、荷主からのCO2削減要請への対応として「EVトラック」が注目されています。「コストや航続距離が不安」とためらわれがちですが、実際には燃料費の削減やドライバーの負担軽減など、自社でトラックを保有する企業にも大きなメリットがあります。
本記事では、EVトラック導入のメリットや課題、先行企業の導入事例、具体的な導入手順などを詳しく解説します。
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- EVトラック導入には、燃料費の削減や地域・取引先からの評価などのメリットがあります。
- EVトラック導入現場からは「静かで振動が少ない」「運転時の疲労が軽減された」などの声が報告されています。
- EVトラック導入前に稼働状況とCO2排出量を把握し、自社に最適な車両を計画的に選定することが重要です。
EVトラックが物流・製造など各業界で注目される理由
近年、専業の物流業界をはじめ自社で製品や資材の運搬を担う製造業や建設業など各業界において脱炭素化に向けた取り組みが本格化しています。2050年のカーボンニュートラルや、脱炭素社会の実現に向け、輸配送における温室効果ガス(GHG)排出量の削減は、日本全体でクリアすべき重要なテーマです。

2024年度の日本のCO2(二酸化炭素)排出量のうち、運輸部門は19.3%を占め、そのうちの37.8%はトラックなどの貨物自動車によるものです。この運輸部門のデータには、運送会社だけでなく、モノを運搬するあらゆる企業の経済活動が大きく関わっています。
燃費改善などの努力により運輸部門の排出量は減少傾向にありますが、さらなる削減に向けた新たなアプローチとして、走行中にCO2を排出しない電気自動車(EV)であるEVトラックへの関心が高まっているのです。
このEV化の波は大手企業にとどまらず、中小の運送会社や、自社で車両を保有する各メーカー・建設業者などにも波及しています。その背景にあるのが、サプライチェーン全体でのCO2削減要請です。社会全体でサプライチェーン排出量の管理が広まる中、荷主や発注元企業は委託先・調達先の削減実績を取引の評価基準に組み込み始めています。業種にかかわらず、自社でトラックを保有する企業にとって、取引先からの環境対応への要請は今後の事業継続や新規受注を左右する重要な課題といえます。
(参考:環境省『エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集(令和5年度版)』、国土交通省『運輸部門における二酸化炭素排出量』)
EVトラックの導入で得られるメリット4点
脱炭素化への対応や荷主からの要請など、EVトラックへの移行は「環境対応のための負担」と捉えられがちです。しかし、実際には現場の労働環境改善や長期的なコスト削減など、運送会社自身にとっても実務上の大きなメリットが存在します。
ここでは、EVトラック導入によって得られる4つのメリットを紹介します。
(参考:環境省『エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集(令和5年度版)』)
1.ランニングコスト│ガソリン代の変動に左右されにくい
ガソリン車やディーゼルトラックなどを運用するうえで、原油価格に連動する軽油やガソリン価格の高騰は経営を直撃する大きなリスクとなりえます。一方、EVトラックは電力で走行するため、ガソリンのような日々の急激な市況変動に直接振り回されにくく、電気料金プランに基づいた燃料費の予測や予算管理がしやすいという特徴があります。
また、EVはエネルギー効率に優れているため、ガソリン車・ディーゼル車と比較して走行距離あたりの燃料コスト(電気代)自体を安く抑えやすい点も大きな魅力です。
■ガソリンエンジン自動車をEVに置き換えた場合の試算例

※計算条件については、上記の『電動車の充電設備・充放電設備の導入』のページ内を参照
深夜電力の活用に加えて、自社の電力使用状況を可視化し充電タイミングを最適に制御・管理することで、ランニングコスト削減の効果をより一層高めることが可能になります。
企業や施設で使用するエネルギーを「見える化」し、最も効率的になるよう最適に制御するデマンド管理については、下記の記事が参考になります。
2.ドライバーの負担軽減│長時間運転でも疲れにくい
EVトラックはエンジンを持たずモーターで駆動するため、ディーゼル車に比べて走行中の振動が少ないことが特徴です。
長時間にわたる配送業務や集配を行う現場では、車両特有の振動やエンジン音が身体的な疲労やストレスの要因となりやすいとされています。そのため、環境省の資料では、実際にEVトラックを導入した事業者やドライバーからの「静かで振動が少ないため運転時の疲労が軽減された」「作業環境や労働環境の改善につながっている」といった声が確認できます。
人材不足が深刻化する物流業界において、こうした現場の負担感を和らげる取り組みは、ドライバーの定着率向上や採用面でのアピール材料の一つとしても期待されています。
3.静音性│騒音が少ない
モーター走行による静音性は、早朝や深夜の配送、住宅街や病院周辺など、騒音への配慮が求められるエリアでの集配業務で大きな強みとなります。
近隣への影響を気にせずスムーズに集配できるため、配送の時間帯やルートの選択肢が広がり、結果として柔軟で効率的な配車計画を組むことが可能になります。
(参考:環境省『Let’s ゼロドラ!! EV等を購入された方の声!』)
4.信頼獲得│地域や取引先からの評価につながる
EVトラックによる配送は、自社の環境への取り組みを外部へ直接アピールする機会となります。街中を走るトラックそのものが環境配慮企業の看板として機能するため、地域住民や取引先からの社会的信頼の向上に効果的です。
特に、環境意識の高い企業や自治体との取引においては、この姿勢が大きな優位性をもたらします。中小企業であっても先進的な脱炭素経営を実践している事実を示すことで、新たなビジネスチャンスの獲得につながるでしょう。
押さえておきたいEVトラック導入の課題と対策
数多くのメリットを持つEVトラックですが、導入にあたってはいくつかの課題が存在します。事前に課題とその解決策を把握しておくことが、EVトラック導入成功へとつながるでしょう。
1.車両価格の高さと充電インフラの整備
EVトラック導入にあたって最初のハードルとなるのが、車両本体の導入コストです。大容量バッテリーを搭載しているEVトラックは、従来のディーゼルトラックと比較して車両価格が高価になる傾向があります。さらに、事業所や物流拠点に充電設備を設置するための工事費用が必要になります。
車両やインフラの費用を抑える計画(補助金活用など)とあわせて、重要となるのがエネルギー運用の見直しです。
初期投資や運用の負担を抑える手段として、PPA事業者(第三者)が発電設備を設置・所有するオンサイトPPAの活用や、自家消費型太陽光発電と蓄電池・EV充電器を組み合わせたエネルギー体制の構築が有効です。昼間に太陽光で充電し、夜間に活用するなどの工夫により、電気の基本料金の上昇を防ぐことが可能になります。
2.航続距離・積載量への影響
EVトラックは、ディーゼル車に比べて一回の充電で走行できる航続距離が短く、重いバッテリーを積載する関係で最大積載量が制限される場合があります。
この問題に対しては、1日の走行距離や荷量が比較的限定されているラストワンマイル配送(拠点から各戸・店舗への短距離配送)や近隣エリアへの配送から優先的にEVトラックを配置するアプローチが有効です。環境省の報告書においても、まずは運用コントロールがしやすい短距離配送から導入を進めることが現実的かつ効果的とされています。
こうしたルート選定の工夫に加えて、拠点に戻った際の計画的な充電ルールの策定や、積載量に応じた配送ルートの見直しを進めることで、EV特有の制約をカバーし、業務に支障をきたさないスムーズな運用が可能になるでしょう。
(参考:環境省『脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築』)
EVトラック導入企業の成功事例
商用EVトラックを導入し、脱炭素化とコスト削減や業務効率化などを両立させている企業事例を紹介します。
1.株式会社トーウン│CO2排出量とエネルギーコストの削減
神奈川県にある株式会社トーウンでは、環境負荷低減を目的に商用EVトラック導入を推進しました。
従来のディーゼルトラックからEVトラックへ置き換えることで、車両の走行に伴うCO2排出量の削減に成功。また、電力で走行するEVトラックの特性を活かし、ガソリン代や軽油代といった燃料費の支出を抑えることで、エネルギーコストの削減も実現しています。
さらに、航続距離や積載量といったEV特有の課題を補うため、荷主と協力してバラ積みからパレット積みに変更し作業時間を短縮。これにより、荷役にかかる作業時間の短縮に成功しました。この荷主と連携した先進的な温室効果ガス削減の取り組みは、荷主企業のESGレポートにも掲載されるなど、サプライチェーン全体での社会的評価や信頼獲得にもつながっています。
(参考:環境省『エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集(令和5年度版)』)
2.株式会社東洋食品│騒音の少ない給食配送車
学校給食の配送業務を担う株式会社東洋食品では、埼玉県久喜市の「ゼロカーボンシティ宣言」に伴う要請を受け、給食センターの配送車両としてEVトラックを採用しました。学校給食の配送車としてEVトラックを導入するのは日本初の取り組みです。
走行音が静かで環境負荷の少ないEVトラックは、市内の小中学校を回る給食配送に最適であるとともに、街中や学校を走ること自体が自治体や企業の環境対応を示す高いPR・宣伝効果を発揮。さらに、CO2排出量やエネルギーコストの削減に加え、従来のディーゼル車より加速性能に優れ運転しやすくなった点も、配送現場で評価されています。
(参考:環境省『エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集(令和5年度版)』)
3.グリーンコープ生活協同組合ふくおか│脱炭素化・地域支援
戸別配送を展開するグリーンコープ生活協同組合ふくおかでは、グループ全体の脱炭素化に向けて配送トラックのEV化を推進しています。
EVトラックの導入にあわせ、充電に使用する電力には再エネ(再生可能エネルギー)を採用し、非化石証書も活用することで走行・充電を含めた「CO2排出量ゼロ」を達成しました。また、拠点にEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入して電力需要のピークシフト(電気を使う時間帯をずらし、特定の時間に電力が集中するのを回避する手法)を行うなど、エネルギーコストの削減も同時に実現しています。
さらに、災害時にはEVトラックの大容量バッテリーを非常用電源として地域住民に提供できる体制を整えており、脱炭素化と同時に「地域の防災・支援拠点」としての役割も果たしています。
(参考:環境省『令和6年度版(2024年度版)活用事例』)
EVトラック導入に向けた3つのステップ
EVトラックの導入を成功させるためには、いきなり車両を購入するのではなく、計画的に手順を踏むことが重要です。ここからは、自社の状況に合わせて無理なく導入を進めるための、現実的な3つのステップを解説します。

ステップ1.現在の稼働状況(走行距離・積載量・CO2排出量)の把握
最初に行うべきは、自社で稼働している社有車や配送トラックの現状把握です。各車両について、主に以下の項目を調査します。
- 1日の走行距離
- 配送エリア
- 荷物の積載量
- 充電設備を設置できる駐車スペースの有無
これにより、どの配送ルートであればEVトラックに置き換えが可能かを明確にできます。
同時に、現在自社でどのくらいのCO2を排出しているかを把握することが不可欠です。現状のガソリンや軽油の使用量からCO2排出量を可視化することで、EVトラック導入によってどれだけの削減効果が得られるかを具体的に把握できるようになります。
CO2排出量の算定
自社のCO2排出量を算定することは、単にEV化の効果を測るだけでなく、今後の脱炭素経営の基盤となります。燃料使用量(ガソリンや軽油のリットル数)に所定の排出係数を掛け合わせることで、Scope1(直接排出)のCO2排出量を算出できます。
算定とともにSBT認定を取得しよう
CO2排出量の算定とあわせてSBT(Science Based Targets)認定の取得を目指しましょう。SBT認定とは、パリ協定が求める水準に整合した「科学的根拠のあるGHG削減目標」を掲げている企業として、国際機関から公式に認められる仕組みのことです。また、要件を満たすことで通常版よりも手続きや費用の負担を抑えられる「中小企業版SBT」での申請が可能となります。
EVトラックへの移行でScope1を削減し、さらに再エネ電力などを活用してScope2(間接排出)も抑えることは、SBTが求めるCO2削減目標の達成に非常に有効です。こうした実効性のある取り組みをSBT認定という客観的な評価と結びつけることで、環境に配慮した企業として、自社の価値を取引先にアピールすることが可能になります。
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ステップ2.用途に合った車両選定と充電インフラ・補助金の計画
現在の稼働状況と自社のCO2排出量が明確になったら、自社の用途に合致した車両の選定と、充電設備・補助金活用を含めた導入計画の策定に進みます。
EVトラックの種類
現在、国内で普及が進んでいるEVトラックは、主に軽トラックや1トントラック、2トントラックといった小型EVトラックが中心です。ラストワンマイル配送や都市部・近接エリアでの集配業務に適しています。
中型・大型EVトラックの開発や普及も進みつつありますが、航続距離や導入コストを考慮し、自社の配送ルートに最も適した車両タイプを選ぶことが重要です。
(参考:環境省『脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築』)
EVトラックと合わせて導入したい再エネ・EMS
EVトラックの導入効果を高めるためには、再エネやEMSとの組み合わせが有効です。
事業所の駐車場屋根を活用したソーラーカーポートや自家消費型太陽光発電を導入すれば、太陽光でつくった電気でEVトラックを充電でき、電気代とCO2排出量を同時に抑制できます。また、EMSを活用して複数台のEVトラックの充電時間や受電量を適切に制御・管理することで、電力使用のピークを平準化し、基本料金の上昇を防ぐ運用が可能になります。
EVトラック導入で使える補助金
EVトラックや充電施設を導入する際は、国や自治体からの補助金を活用することで初期費用の負担を大きく軽減できます。制度によっては車両の登録(ナンバー取得)のタイミングで条件が異なったり、国の制度と自治体独自の補助金を併用できたりする場合があります。公募時期や申請要件をあらかじめ確認し、車両の導入スケジュールに合わせて計画的に準備を進めることがポイントです。
EV購入に使用できるCEV補助金のほか、脱炭素関係の補助金については下記記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
ステップ3.運用ルールの実行と見直し
車両と充電インフラが整ったら、実際の運用を開始します。EVトラックの特性(航続距離や充電時間)に合わせて、現場の運用ルールやタイムスケジュールを柔軟に見直すことが重要です。
■EVトラックの運用ルール例
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 休憩時の継ぎ足し充電 | ドライバーの休憩時間を活用し、こまめな充電を習慣化する |
| 荷役時間の短縮と充電への転換 | 荷主企業と連携してバラ積みからパレット積みに変更し、浮いた作業時間を充電に充てる |
| 立ち寄り先での充電実施 | 配送先や荷主の施設内に充電器を設置してもらい、パートナー企業と協力して稼働率を向上させる |
実際の運行データを検証しながら定期的にルールを改善していくことで、現場に負担をかけずにEVトラックのメリットを引き出すことができます。
(参考:環境省『エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集(令和5年度版)』)
EVトラックの導入を成功させ、自社の脱炭素化を加速させよう
物流業界における脱炭素化は、荷主からの要請に応えるだけでなく、コスト削減や現場環境の改善など、自社の競争力を高める絶好の機会です。初期費用や運用の課題も、補助金の活用や再エネ・EMSとの組み合わせ、現場に合わせた運用ルールの策定によって導入のハードルを下げることができるでしょう。
まずは「自社の稼働状況」と「CO2排出量」を把握することからスタートします。現状を可視化できれば、自社の用途やルートに最適なEVトラックが見えてくるはずです。無理のない車種選定から、着実な脱炭素化への第一歩を踏み出しましょう。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。