【入門編】カーボンニュートラルとは?メリットや取り組み例をわかりやすく解説
- カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量を均衡させることです。
- 2050年までにカーボンニュートラルを実現する必要があり、日本をはじめとする世界各国が取り組みを進めています。
- カーボンニュートラル実現に向け、各企業は「温室効果ガス排出量の見える化」や「再生可能エネルギーの活用」「サプライチェーン全体での温室効果ガス削減」などに取り組む必要があります。
温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量を均衡させることを意味する、カーボンニュートラル。日本政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」をしたこともあり、取り組む企業が増えています。カーボンニュートラルに企業として取り組みたいものの、「何から始めたらよいのか、見当がつかない」というケースもあるでしょう。
そこで今回は、カーボンニュートラルの定義やメリット、企業の取り組み例などをわかりやすく解説します。これを読めば、カーボンニュートラルについての理解が深まり、実現に向けて企業としてどのような取り組みを実施すべきかのヒントが得られるでしょう。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させることを意味する言葉です。排出量・吸収量ともに人為的なものを指します。つまり、温室効果ガスの作為による排出量から、人間の手による植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質ゼロにすることですね。
合計を実質ゼロにすると同時に、排出量自体の削減と、吸収作用の保全および強化も重要です。
参考:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは』
2050年までにカーボンニュートラルの実現を
現在、世界各国が「2050年までのカーボンニュートラル実現」を目指して、取り組みを進めています。背景には、2015年にCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された「パリ協定」があります。パリ協定とは、1997年にCOP3で採択された「京都議定書」の後継となる、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みのことです。
パリ協定では、世界共通の長期目標として以下の内容が合意されました。
パリ協定の合意内容 ・世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに(2℃目標)、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標) ・今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること |
合意内容の2つ目は、カーボンニュートラルの実現について述べています。しかし、パリ協定では「いつまでにカーボンニュートラルを実現すべきか」については明確に示されませんでした。
具体的な時期が示されたのは、パリ協定を受け、2018年10月に開催されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第48回総会においてです。パリ協定の合意内容に関する科学的根拠に基づき「世界の人為的なGHG排出量を、2030年までに2010年比で約45%減少させ、2050年までには実質ゼロにする必要がある」ことが示されました。つまり、2050年までにカーボンニュートラルを実現すべきであることが明示されたのです。
これらを受けて、日本では菅内閣総理大臣(当時)が2020年10月26日の所信表明演説において、以下を宣言しました。
我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。 |
この宣言は、「2050年カーボンニュートラル宣言」と呼ばれています。
「2050年までのカーボンニュートラル実現」を達成できるよう、日本社会全体で取り組んでいくことが必要です。
類語・関連用語との違い・関係性
カーボンニュートラルの類語・関連用語には、「脱炭素」「カーボンネガティブ」「ゼロエミッション」「カーボン・オフセット」などがあります。
用語 | 意味 |
---|---|
脱炭素 | 全体として温室効果ガスの排出をゼロにする状態のこと。CO2排出量削減に焦点を当てた言葉という意味合いが強い |
カーボンネガティブ | 温室効果ガスの排出量が、森林や植林による吸収量よりも少ない状態(温室効果ガスの吸収量>排出量)のこと |
ゼロエミッション | 人為的活動からの廃棄物(温室効果ガスや大気汚染物質など)の排出を限りなくゼロにすること |
カーボン・オフセット | 排出量削減努力をしてもなお排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するなどして、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方 |
脱炭素は、全体として温室効果ガスの排出をゼロにする状態のことで、CO2排出量削減に焦点を当てた言葉という意味合いが強いとされています。一方、カーボンニュートラルは、CO2排出量の削減およびCO2吸収量の増加に焦点を当てた言葉です。しかしながら、2つの言葉が表す方向性に大きな違いはありません。
カーボンネガティブやゼロエミッションは、カーボンニュートラルを達成したのちの目標といえるでしょう。
カーボン・オフセットは、カーボンニュートラルを実現するための補助的な手段です。
カーボンニュートラルの取り組みはなぜ必要?
国としても実現することを目指しているカーボンニュートラルですが、なぜ取り組みが必要なのでしょうか。その理由としては、地球温暖化への対応が求められていることが挙げられます。
「以前よりも、真夏日・猛暑日が増えた」「春や秋でも、夏のように暑いときがある」という声が聞こえるように、気温上昇を感じている人も多いでしょう。実際、2020年時点の世界平均気温は、工業化以前(1850~1900年)と比べて約1.1℃上昇。長期的には、100年あたり0.76℃の割合で上昇しており、今後も更なる気温上昇が見込まれています。
地球温暖化の影響もあってか、近年、世界全体で猛暑や豪雨といった気象災害が頻発しています。この状態が続くと、水資源や自然生態系、人々の健康への悪影響が懸念されるだけでなく、「工場の操業停止」「物流の遅延・断絶」などが生じて産業・経済活動に影響が出る可能性もあります。地球温暖化がこれ以上進行しないよう、早急な対策が必要であることがわかりますね。
私たちの生活に多大な影響を与えている地球温暖化の要因は、「温室効果ガス」であると考えられています。私たちの暮らす地球を守り、持続可能な社会をつくっていくために、世界全体でカーボンニュートラルに取り組んでいく必要があるのですね。
150以上の国・地域が年限付き(2050年までなど)のカーボンニュートラル実現を宣言
日本は「2050年カーボンニュートラル宣言」をしたことがわかりましたが、他の国々の取り組みも気になりますよね。経済産業省が発表した『エネルギー白書2023』によると、2050年までにといったように年限付きのカーボンニュートラルの実現を表明している国・地域は、2022年10月時点で合計で150以上あります。また、これらの国・地域におけるGDPは、世界全体のGDPの約94%を占めています。
日本政府と世界各国の動きについて、見ていきましょう。
参考:経済産業省『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023) 第1節 脱炭素社会への移行に向けた世界の動向』
日本政府の動き
カーボンニュートラルの実現に向け、日本政府はさまざまな取組を実施しています。ここでは、日本政府の動きとして、「地域脱炭素ロードマップ」「改正地球温暖化対策推進法」「グリーン成長戦略」の3つを見ていきましょう。
地域脱炭素ロードマップ
地域脱炭素ロードマップとは、2021年6月に策定された、地方創生に資する脱炭素に国全体で取り組み、さらに世界へと広げていくためのロードマップのこと。2030年までに集中して行う取り組み・施策を中心に、地域脱炭素のプロセス・具体策を示しています。日本政府は、5年間の集中期間に政策を総動員し、人材・技術・情報・資金を積極支援していく方針です。
同ロードマップでは、2030年までに少なくとも100カ所以上の「脱炭素先行地域」を選定することを明示。2024年3月18日時点で、全国36道府県94市町村の73提案が選定されています。また、自家消費型太陽光や省エネ住宅といった脱炭素の基盤となる重点対策を全国で実行することも明らかにしています。これらの施策により、地域の脱炭素モデルを全国に広げ(脱炭素ドミノ)、2050年を待たずに脱炭素達成を目指しています。つまり、日本政府はできるだけ早期のカーボンニュートラルを目指しているといえますね。
あわせて、脱炭素先行地域づくりと重点対策の全国実施を後押しするため、以下の3つの基盤的施策を進めていくことも示されました。
基盤的施策
- 地域の実施体制構築と国の積極支援のメカニズム構築
- グリーン×デジタルによるライフスタイルイノベーション
- 社会全体を脱炭素に向けるルールのイノベーション
制度の詳細については、環境省の資料をご確認ください。
参考:環境省『地域脱炭素ロードマップ』『地域脱炭素ロードマップ【概要】』
参考:環境省 脱炭素地域づくり支援サイト『脱炭素先行地域』
参考:環境省 脱炭素ポータル『国・地方脱炭素実現会議(第3回)で『地域脱炭素ロードマップ』が決定!!』
改正地球温暖化対策推進法
地球温暖化対策推進法(温対法)とは、1997年の京都議定書への採択を受けて1998年に成立した、日本における地球温暖化対策の第一歩となる法律のこと。対策を強化すべく、これまでに何度も法改正が行われています。直近では、2021年に大きな法改正がありました。
2021年法改正のポイントは、以下の通りです。
改正ポイント | 概要 |
---|---|
2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念として明記 | ・パリ協定や2050年カーボンニュートラル宣言などを踏まえ、2050年までに脱炭素社会を実現することを明記 |
地方創生につながる再生可能エネルギー導入を促進 | ・地方自治体が策定する地方公共団体実行計画において、地域の脱炭素化や課題解決に貢献する事業の認定制度を創設 ・関係法令の手続のワンストップ化が可能に |
企業の温室効果ガス排出量情報のオープンデータ化 | ・企業の温室効果ガス排出量に係る算定・報告・公表制度について、電子システムによる報告を原則化 ・企業の温室効果ガス排出量情報について、従来の開示請求を不要にし、オープンデータ化 |
温対法については、以下の記事で詳しく説明しています。参考にご覧ください。
参考:環境省『地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について』
参考:環境省 脱炭素ポータル『改正地球温暖化対策推進法 成立』
グリーン成長戦略
グリーン成長戦略とは、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「経済と環境の好循環」を構築していくための産業政策のこと。同戦略では、産業政策・エネルギー政策の両面から成長が期待される14の重要分野について、実行計画を策定。国として高い目標を掲げ、可能な限り具体的な見通しを示しています。
なお、14の重要分野は以下の通りです。
概要 | 重要分野 |
---|---|
エネルギー関連産業 | 1.洋上風力・太陽光・地熱 2.水素・燃料アンモニア 3.次世代熱エネルギー 4.原子力 |
輸送・製造関連産業 | 5.自動車・蓄電池 6.半導体・情報通信 7.船舶 8.物流・人流・土木インフラ 9.食料・農林水産業 10.航空機 11.カーボンリサイクル・マテリアル |
家庭・オフィス関連産業 | 12.住宅・建築物・次世代電力マネジメント 13.資源循環関連 14.ライフスタイル関連 |
参考:経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(概要資料)』
世界各国の動き
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の資料に基づき、カーボンニュートラル実現に向けた主要国・地域の取り組みを表にまとめました(2021年10月1日までの各国情報を基に作成)。
国・地域 | 達成目標年 | 主な取り組み |
---|---|---|
アメリカ | 2050年 | ・EV充電ポートの設置(予算:75億ドル) ・スクールバス、フェリーのEV、低炭素化(予算:75億ドル) ・スマートグリッド化(予算:30億ドル) ・バッテリーなどのリサイクル(予算:75億ドル) ・航空燃料30億ガロンを持続可能エネルギー由来とし、航空関連の炭素排出を2030年までに20%削減 ・GMなど自動車3メーカーと2030年までに年間販売の40~50%を電動車(EV、PHEV、水素電池)とすることに向けて挑戦することに合意 |
中国 | 2060年 | ・2035年における新車販売について、新エネ車50%(PHV含む)、残り50%を省エネ車(全てHEV)に ・EV公共急速充電ポートを2025年には80万ポート、2035年には146万ポート(低速充電は2035年1.5億ポート)に ・水素ステーションを2030年には5,000ステーションに ・自動運転とV2X(車両とあらゆる物を連携させる技術)による都市交通のスマート化を積極的に推進 |
EU | 2050年 | ・EUの国道について、2030年までにEV軽車両用600kW/充電ステーション、EV重量車用2,030kW/充電ステーションを60kmごとに設置 ・EUの国道について、2030年までに高圧水素ステーションを150kmごと、液体水素ステーションは450kmごとに設置 ・2035年以降は、ゼロ・エミッション車のみ販売可能に ・次世代航空機について、2030年に低炭素航空機の実証試験、2035年に低炭素航空機の利用開始、2050年にカーボンニュートラル航空機の利用開始を目標に(2021年から、官民共同開発研究を開始) |
イギリス | 2050年 | ・EV充電設備に、13億ポンドを投資 ・港湾整備として、風力タービン大型化に向け1.6億ポンドを投資 ・数千台のグリーンバス、数百マイルの自転車専用レーンなどを導入 ・産業、運輸、建物の分野において、今後10年で2.3億トンのCO2排出量(換算)を削減 |
参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『TSCトレンドCOP26に向けたカーボンニュートラルに関する海外主要国(米・中・EU・英)の動向』
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット
日本政府がカーボンニュートラルに取り組む中、各企業にも対策を進めていくことが求められています。また、カーボンニュートラルに取り組むことは、企業としての「責任」であるだけでなく、「メリット」をもたらします。
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットは、以下の通りです。
カーボンニュートラルに取り組むメリット
- エネルギーコストの削減につながる
- 企業イメージが向上する
- 資金調達をしやすくなる
それぞれについて、見ていきましょう。
メリット1.エネルギーコストの削減につながる
カーボンニュートラル実現に向けて、CO2排出量が少なく、エネルギー効率の高い設備を導入すれば、導入コストはかかるものの、年単位で考えるとエネルギーコストの削減につながります。エネルギーコストが抑えられた分を、既存事業の拡充や新規事業の展開などに回すこともできるでしょう。
メリット2.企業イメージが向上する
カーボンニュートラルへの関心は、社会全体で高まっています。そのため、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを社外にアピールできれば、「環境に配慮している会社」として、企業イメージが向上するでしょう。その結果、新規取引の受注、人材採用への好影響なども期待できます。
なお、カーボンニュートラルに取り組んでいることを社外にアピールする方法として効果的なのが、「SBT認定」の取得です。SBTとは、5年~10年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと。SBT認定企業になれば、SBTi(SBTの認定などを行う国際的なイニシアチブ)のホームページなどに企業名が公開されるため、自社の認知度がより高まるでしょう。
なお、SBT認定の詳細については、こちらの記事が参考になります。
メリット3.資金調達をしやすくなる
近年、企業の「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」への取り組みをもとに投資先を決める「ESG投資」が投資家の間で広まっています。
カーボンニュートラルは環境問題解決に直結するため、カーボンニュートラルに向けた取り組みをすることで、投資先として選ばれやすくなるでしょう。また、企業の社会的信用も高まるため、金融機関からの融資も受けやすくなる可能性があります。
こうしたメリットもあるので、企業として積極的に取り組んでいけるとよいですね。
カーボンニュートラルの課題
企業がカーボンニュートラルに取り組むにあたっては、以下のような課題があります。
カーボンニュートラルの企業としての課題
- 温室効果ガス排出量の計算が複雑である
- 自社のみで取り組んでも、効果が限定的である
- 再生可能エネルギーの導入には多額の費用がかかる
- かえって環境に悪影響がおよぶ可能性もある
こうした課題があることを認識した上で、「企業として何をすべきか」を考え、実行していきましょう。
カーボンニュートラルの実現に向けた企業の取り組み事例
カーボンニュートラルの実現に向け、企業としてどのようなことに取り組んでいけばよいのでしょうか。企業の取り組み事例を紹介します。
温室効果ガス排出量の見える化
まず取り組むべきなのが、温室効果ガス排出量の見える化です。見える化することで、自社の現状・課題を明確化でき、削減目標を設定しやすくなります。あわせて、目標達成に向けた施策を円滑に進められるよう、社内体制も整備していきましょう。
とはいえ、温室効果ガス排出量の計算はとても複雑です。人力で算定しようとすると多くの労力がかかってしまうため、温室効果ガス排出量計算サービスの活用をおすすめします。
再生可能エネルギーの活用
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーのこと。具体的には、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどが該当します。再生可能エネルギーは発電時に温室効果ガスを排出しません。そのため、オフィスや工場などで使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えることで、温室効果ガスを大幅に削減できます。
あわせて、使用する電力量自体を減らせるよう、省エネも徹底するとより効果的でしょう。
参考:経済産業省資源エネルギー庁『 なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|総論』
サプライチェーン全体で温室効果ガスを削減
カーボンニュートラルの実現に向けては、サプライチェーン全体で温室効果ガスを削減していくことも必要です。サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、物流、販売、廃棄に至るまでの一連の流れのこと。自社のみで温室効果ガスの削減に取り組むよりも、サプライチェーン全体で取り組んだ方が、成果が期待できます。例えば、メーカーの場合には、原材料の製造元や物流会社などに削減を呼びかけつつ、製品が使用されたり廃棄されたりする際の削減も考慮するとよいでしょう。
なお、サプライチェーン全体で温室効果ガスの削減を図る上で覚えておきたいのが、「Scope1」「Scope2」「Scope3」という温室効果ガス排出に係る3つの分類です。
- Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
- Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
- Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)15のカテゴリに分類される
各Scopeにおける温室効果ガス排出量を合計したものが、「サプライチェーン排出量」となります。
とはいえ、「自社のサプライチェーンがどの程度か」がわからないというケースも多いでしょう。温室効果ガスの排出削減に向け、まずは現状を把握し、目標を設定することから始めることが必要ですね。
Scopeやサプライチェーン排出量については、以下の記事で紹介しています。考え方として複雑な面もあるので、ぜひこちらの記事で理解を深めてくださいね。
植樹・植林活動の実施
「温室効果ガスの吸収量を増やす」という観点から、カーボンニュートラル実現に効果的なのが、植樹・植林活動の実施です。会社主導のもと、顧客や地域住民らとともに植樹・植林活動に取り組むとよいでしょう。
植樹・植林活動をするのが難しい場合には、「会社の庭に、苗木を植える」「オフィスの屋上を緑化する」ことから始めるのがおすすめです。
カーボン・オフセットの活用
カーボン・オフセットの活用も、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つです。
カーボン・オフセットの取り組みは、「製品・サービスオフセット」 「会議・イベントオフセット」「組織活動(自己活動)オフセット」「クレジット付製品・サービス」「寄付型オフセット」の5つに分類されます。それぞれ、「オフセット主体」=誰が、「オフセット対象」=何のカーボン・オフセットに取り組むのかによって分けられます。
類型 | オフセット主体(誰が) | オフセット対象(何を) |
---|---|---|
製品・サービスオフセット | 製品・サービスの製造/販売/提供者、または製品・サービスの購入・利用者 | 製品・サービスのライフサイクルからの温室効果ガス排出 |
会議・イベントオフセット | 会議・イベント主催者 | 会議・イベントの企画・準備、開催、 会議・イベント主催者およびび撤収に伴う温室効果ガス排出 |
組織活動オフセット | 企業、自治体、NGOなどの組織 | 事業活動に伴う温室効果ガス排出 |
クレジット付製品・サービス | 製品の製造・販売者やサービス提供者、イベント主催者など | 購入者や来場者の日常生活における温室効果ガス排出 |
寄付型オフセット | 製品の製造・販売者やサービス提供者、イベント主催者など | オフセット対象を限定しない ※クレジットの活用による地球温暖化防止活動への貢献・資金提供などを目的に、広く一般を対象に参加を呼びかける |
とはいえ、カーボン・オフセットはいつでも自由に活用できるものではありません。自社で温室効果ガスの削減努力をした上で、それでも削減しきれない場合にのみ検討できるものです。最初からカーボン・オフセットありきで考えないよう、注意しましょう。
ネガティブエミッション技術(NETs)の活用
ネガティブエミッション技術(Negative Emissions Technologies、略称:NETs)とは、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで、CO2排出量を実質としてマイナスにする技術です。具体的には、以下のような技術が該当します。
技術 | 概要 |
---|---|
植林・再生林 | 樹木によるCO2吸収を促進する技術 |
土壌炭素貯留 | バイオマス中の炭素を土壌に貯蔵・管理する技術 |
バイオ炭 | バイオマスを炭化し炭素を固定する技術 |
DAC | 大気中のCO2を直接捕集する技術 |
DACCS | 大気中のCO2を直接回収し、貯留する技術 |
BECCS | バイオマスエネルギー利用時の燃焼により発生したCO2を回収・貯留する技術 |
風化促進 | 玄武岩などの岩石を粉砕・散布し、風化を人工的に促進する技術 |
海洋肥沃・生育促進 | 海洋への養分散布や優良生物品種などの利用により、生物学的生産を促し、CO2吸収・固定化を人工的に加速する技術 |
植物残渣海洋隔離 | 海洋中で植物残渣(植物性の固形状の不要物)に含まれる炭素を半永久的に隔離する方法 |
海洋アルカリ化 | 海水にアルカリ性の物質を添加し、海洋の自然な炭素吸収を促進する炭素除去方法 |
現時点では研究・開発段階の技術が多いものの、いずれ実用化が進む見通しです。ネガティブエミッション技術が実用化したタイミングで、活用を検討するとよいでしょう。
カーボンニュートラルを理解し、できることから取り組もう
世界全体として地球温暖化への対応が急務であることから、企業にもカーボンニュートラルへの取り組みが求められています。カーボンニュートラルに取り組むことで、「エネルギーコストの削減」や「企業イメージの向上」「資金調達の容易化」が期待できます。具体的な取り組みとしては、「温室効果ガス排出量の見える化」や「再生可能エネルギーの活用」「サプライチェーン全体での温室効果ガス削減」などがあります。
カーボンニュートラルについて正しく理解した上で、「自社として何をすべきか・何ができるか」を考え、取り組みを進めましょう。