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【完全ガイド】カーボンニュートラルは矛盾している?問題点や解決策を解説

目次
記事の要点
  • カーボンニュートラルの矛盾点としては、「温室効果ガスの排出を許容している」「取り組むことでかえって環境への悪影響が懸念される」ことが挙げられます。
  • 企業にとっては、「温室効果ガス排出量計算の複雑さ」や「再生可能エネルギー設備の設置費用の高さ」などが、カーボンニュートラルの課題となります。
  • カーボンニュートラルには矛盾点や課題があるものの、地球温暖化対策が急務であることから、全ての企業がカーボンニュートラルに取り組むことが重要です。

地球温暖化対策として社会全体に求められているカーボンニュートラルですが、矛盾点もいくつか指摘されてます。「必要性は認識しているものの、本当にやる価値があるのか」と懐疑的で、カーボンニュートラルに取り組むべきか熟考している企業も多いでしょう。

そうした疑念を解消すべく、本記事ではカーボンニュートラルの概要や矛盾点、企業にとっての課題・問題点、解決策などを解説します。これを読めば、カーボンニュートラルへの理解がより深まり、矛盾点・課題点を認識した上で対策を進めていこうという機運になるでしょう。

そもそも、カーボンニュートラルとは?

そもそも、カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させることを意味する言葉。ここでいう排出量・吸収量ともに人為的なものを指します。つまり、温室効果ガスの作為による排出量から、人間の手による植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質ゼロにすることですね。

カーボンニュートラルについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

参考:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルに関連する枠組み・宣言

カーボンニュートラルに関連するものとして覚えておきたいのが、「パリ協定」と「1.5℃特別報告書(SR1.5)」「2050年カーボンニュートラル宣言」です。

「パリ協定」とは、1997年に採択された「京都議定書」の後継となる、気候変動問題に関する国際的な枠組みのこと。2015年12月に、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択されました。同協定では、カーボンニュートラル実現に向けた基本的な考え方などが示されています。

それを受け、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2018年10月にパリ協定の内容に関する科学的根拠として、「1.5℃特別報告書(SR1.5)」を発表。「世界の人為的なGHG排出量を、2030年までに2010年比で約45%減少させ、2050年までには実質ゼロにする必要がある」旨を提示しました。

「パリ協定」と「1.5℃特別報告書(SR1.5)」を受け、菅内閣総理大臣(当時)が2020年10月26日の所信表明演説において、以下のことを宣言。この宣言は、「2050年カーボンニュートラル宣言」と呼ばれています。

2050年カーボンニュートラル宣
我が国は、二〇五〇2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す、ここに宣言いたします。
引用:首相官邸『令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説

これらの発表・宣言があることから、「2050年までのカーボンニュートラル実現」を達成できるよう、日本社会全体で温室効果ガスの排出削減に取り組んでいく必要があるのです。

カーボンニュートラルの矛盾点

2050年までの実現が目標となっているカーボンニュートラルですが、「矛盾点がある」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。カーボンニュートラルには、以下のような矛盾点が指摘されています。

カーボンニュートラルの矛盾点
  • 温室効果ガスの排出を許容している
  • 取り組むことでかえって環境への悪影響が懸念される(例:バイオマス発電)

それぞれについて、見ていきましょう。

温室効果ガスの排出を許容している

カーボンニュートラルの概念は、捉えようによっては、「温室効果ガスの排出を許容している」ともいえます。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させることであり、温室効果ガス排出量をゼロにすることではないためです。

そのため、「相殺さえすれば問題ないのだから、温室効果ガス排出量を減らす必要はない」との誤解を生んでしまう可能性があります。その結果、温室効果ガス排出量が変わらない/増えるという状況を招きかねないのです。

取り組むことでかえって環境への悪影響が懸念される(例:バイオマス発電)

カーボンニュートラルを実現するための方法が、かえって環境への悪影響を及ぼす恐れがあります。例えば、バイオマス発電(家畜の排せつ物や生ゴミ、生物資源などの動植物由来の有機物を燃焼することによる発電)は、CO2排出量の少ない再生可能エネルギーですが、以下の懸念点もあります。

バイオマス発電による環境への悪影響
  • 原料となる森林や植物を伐採しすぎることにより、環境や生態系への悪影響を及ぼす
  • 森林伐採が進むことにより、温室効果ガスの吸収量が減ってしまう
  • 燃料の加工・輸送時に化石燃料を使用するため、CO2は少なからず排出される

また、本来であれば食物や家畜の餌となる生物資源をバイオマス発電に使用することで、人々の生活と両立しにくくなることも、懸念点といえますね。

カーボンニュートラルの問題点

カーボンニュートラルの推進にあたっては、以下のような問題点があると指摘されています。

カーボンニュートラルの問題点
  • 国・地域によっては火力発電からの脱却が困難である
  • 先進国と発展途上国の間で格差が生じる
  • 国別CO2排出量の計測方法が不公平である
  • 産業による不公平感がある

それぞれについて、解説します。

国・地域によっては火力発電からの脱却が困難である

カーボンニュートラルの問題点の一つは、国・地域によっては火力発電からの脱却が困難であることです。

火力発電では、化石燃料を燃焼して電力を生み出すので、発電時に大量のCO2を排出します。カーボンニュートラルに向けては火力発電から脱却する必要がありますが、国・地域によっては、火力発電に替わるエネルギー源に乏しいのが現状です。そうした国・地域があることを踏まえると、全ての国・地域でカーボンニュートラルを実現するのは現実的でないといえるかもしれません。

先進国と発展途上国の間で格差が生じる

「先進国と発展途上国間の格差」も、カーボンニュートラルの問題点として指摘されることが多いです。

先進国と発展途上国では、経済発展や人口増加の度合いが大きく異なります。先進国は経済発展を遂げており、人口は減少傾向にある国が多いです。一方、発展途上国はこれから経済が発展していく段階であり、そのほとんどの国が人口増加傾向にあります。経済発展と人口増加への対応のため、「発展途上国におけるエネルギー需要が拡大する=発展途上国における温室効果ガスの排出量が今後増大する」可能性が高いことは明らかです。

しかしながら、カーボンニュートラルの実現にあたっては、そうした事情は考慮されません。そのため、「発展途上国の経済発展がないがしろになる」「先進国よりも、発展途上国の方が負担が大きい」との見方があるのです。

国別CO2排出量の計測方法が不公平である

国別CO2排出量の計測方法が不公平であることも、問題点といえます。

現状、国別のCO2排出量の計測方法は、「生産ベース」です。生産ベースとは、「製品の生産過程でCO2を発生する」というように、「CO2排出が実際に起こった国」で排出量を計測する方法のこと。人件費の安い発展途上国の工場で商品製造などを行っている先進国の企業も多いですが、そうした際に生じたCO2排出量は「発展途上国」のものとして計上されるケースが少なくありません。(ただし、EU圏内では製品に課される炭素価格に対応した価格を域外からの輸入製品に課す制度が運用されているため、不公平感は少ないといわれています。)

つまり、「生産ベース」は、先進国にとって有利、発展途上国にとって不利な計測方法です。このことから、製品の生産時に排出されたCO2をその製品が最終的に消費される国の排出量として計測する「消費ベース」への転換が求められています。

産業による不公平感がある

産業による不公平感があることも、カーボンニュートラルの問題点の一つです。

例として、サービス業のように「価値・サービス」を提供する業界は他の産業に比べ、もともと温室効果ガス排出量が少ない傾向にあるため、少しの企業努力で成果が出る可能性があります。一方、もともと温室効果ガスの排出量が多い傾向にあるのが、石油関連の産業や自動車産業、建設産業などです。こうした産業でカーボンニュートラルを実現するには、相当の企業努力が必要となります。

それでもカーボンニュートラルに取り組むべき理由

カーボンニュートラルの矛盾点や問題点は、一つの国や企業の努力だけでは解決が困難です。「矛盾点・問題点があるのなら、取り組まなくてもよいのでは?」と考える方も、少なからずいるでしょう。しかしながら、カーボンニュートラルは社会全体として取り組む必要があるものに変わりはありません。その理由としては、地球温暖化への対応が急務であることが挙げられます。

近年、世界の平均気温は上昇傾向が続いており、地球温暖化が進行しています。それに伴い、世界全体で猛暑や豪雨といった気象災害が頻発。この状態が続くと、水資源や自然生態系、人々の健康への悪影響だけでなく、「工場の操業停止」「物流の遅延・断絶」などによる産業・経済活動への悪影響も懸念されます。

世界の年平均気温偏差
参考:気象庁『世界の年平均気温』を加工して作成

地球温暖化の要因は「温室効果ガス」であることから、私たちの暮らす地球を守り、持続可能な社会をつくっていくために、世界全体でカーボンニュートラルに取り組むことが必要です。

カーボンニュートラルに取り組むメリットと企業としてできること

ここでは、企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットと、カーボンニュートラルの実現に向けて企業としてできることを簡単に紹介します。

企業として取り組むメリット

カーボンニュートラルに取り組むことにより、以下のようなメリットが期待できます。

企業として取り組むメリット
  • エネルギーコストの削減につながる
  • 企業イメージが向上する
  • 資金調達をしやすくなる
  • 新規事業の創出につながる

カーボンニュートラルへの取り組みを全社的に進める際は、こうしたメリットがあることを前もって伝えておくと、従業員からの理解・協力を得やすいでしょう。

カーボンニュートラルに向け、企業としてできること

カーボンニュートラルに向け、企業としてできることの一例を挙げます。

企業としてできること
  • 温室効果ガス排出量を見える化する
  • 再生可能エネルギーを活用する
  • サプライチェーン全体で温室効果ガスを削減する
  • 植樹・植林活動を実施する
  • 補助的にカーボンオフセットを活用する など

まずは、自社の温室効果ガス排出量の現状を把握することから始めましょう。その上で、「何から取り組むべきか」を優先付けし、施策を実行していくことが重要です。

メリットと企業としてできることについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

企業がカーボンニュートラルに取り組む上での課題・問題点

カーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいるものの、「難しい」「うまくいかない」と感じている企業も少なくないでしょう。企業がカーボンニュートラルに取り組む上での課題・問題点としては、以下のようなものがあります。

企業がカーボンニュートラルに取り組む上での課題・問題点
  • 温室効果ガス排出量の計算が複雑である
  • 自社のみで取り組んでも、効果は限定的である
  • 再生可能エネルギーの導入には多額の費用がかかる
  • 再生可能エネルギー設備の設置により、環境に悪影響が及ぶ可能性がある

それぞれについて、見ていきましょう。

温室効果ガス排出量の計算が複雑である

カーボンニュートラルに取り組む際の実務的な課題といえるのが、温室効果ガス排出量の算定方法の複雑さです。温室効果ガス排出量は、基本的に以下の計算式により算出します。

温室効果ガス排出量(tガス)=活動量×排出係数(活動量当たりの排出量) 

「活動量」とは、温室効果ガスの排出量と相関関係にある排出活動の規模を表す指標のこと。具体的には、生産量や使用量、焼却量などが該当します。

「排出係数」とは、活動量当たりの排出量のこと。排出活動ごとに、排出係数が定められています。

ここで覚えておきたいのが、活動量や排出係数の前提となる「排出活動」が多岐にわたることです。そのため、実際に温室効果ガス排出量を算出する際は、まず「自社におけるこの活動は、どの排出活動に該当するのか」を特定する必要があります。排出活動によっては、排出係数が細分化されているケースも少なくありません。

また、温室効果ガス排出量をCO2に換算する際には、以下の計算が必要です。

温室効果ガス算定排出量(tCO2)=温室効果ガス排出量(tガス)×地球温暖化係数

「地球温暖化係数」とは、温室効果ガスの種類ごとに定めている係数のことで、CO2を「1」とした場合の温室効果の強さを表す数値です。2024年4月時点では約30に細分化されています。

このように、温室効果ガス排出量の計算は非常に複雑です。算定にあたって多くの労力・時間が必要となるだけでなく、担当者の認識違いによる計算ミスも発生しやすいでしょう。

参考:環境省『温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル(Ver5.0)(令和6年2月) 第Ⅱ編 温室効果ガス排出量の算定方法

自社のみで取り組んでも、効果が限定的である

自社のみでカーボンニュートラルに取り組んでも、効果は限定的であると考えられます。なぜなら、一つの製品が作られ、最終的に廃棄されるまでにはさまざまな工程があり、自社のみで全てを担っている企業はほとんどないためです。

仮に、自社が「製造」のみを担っている場合、自社の取り組みだけで「製造」におけるカーボンニュートラルを実現することは可能かもしれません。しかし、「原材料調達」や「物流」「廃棄」などを担う取引先において何の取り組みもなされなければ、一つの製品を全体として見たときに、「効果はさほどない」となってしまう可能性があります。

自社のみでできる取り組みを確実に進めるとともに、関係先と連携を図っていくことも大切です。

再生可能エネルギーの導入には多額の費用がかかる

太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入に多額の費用がかかることも、企業にとっての課題です。例として、太陽光発電の場合、設置容量(何kW)や太陽光パネルの本体価格(メーカーによって金額に開きあり)にもよりますが、法人向けでは設置費用が数千万円単位になるケースもあります。

設置費用の他に、定期メンテナンスの費用や保険料なども必要です。また、太陽光発電設備は、法人税(個人事業主の場合は所得税)や固定資産税、償却資産税の対象にもなります。

このように多額の費用がかかることを認識し、どのくらいの規模の設備を導入するかを十分に検討することが大切です。

再生可能エネルギー設備の設置により、環境に悪影響が及ぶ可能性がある

再生可能エネルギーは温室効果ガスの削減に効果的なものではありますが、設備設置により、環境に悪影響が及ぶ可能性があります。設備を設置するにあたり、周辺の樹木を少なからず伐採することになるケースが多いためです。

大規模な設備を設置したい場合には、広範囲での森林伐採が必要になるケースもあるでしょう。樹木や森林を伐採すれば、その分だけ温室効果ガスの吸収量が減り、カーボンニュートラルの実現が遠のくということを忘れてはいけません。

企業がカーボンニュートラルに向けた課題を解決するためには?

企業にとってのカーボンニュートラルに取り組む上での課題・問題点は、企業努力によって解決が可能です。カーボンニュートラル実現に向けた計画が頓挫しないよう、課題・問題点の解決を図っていきましょう。

ここでは、課題・問題点を解決するために企業としてできること・すべきことを紹介します。

温室効果ガス排出量の算出ツール・サービスの活用

温室効果ガス排出量の計算を効率化したい場合におすすめなのが、算出ツール・サービスの活用です。

算出ツールについては、経済産業省『エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツールの利用マニュアル 』や日本商工会議所日商エネルギー・環境ナビ『CO2チェックシート』のホームページからダウンロードできます。

外部に作業を一任したい場合には、専門知識を有する外部企業が提供している温室効果ガス排出量の算出サービスを活用するとよいでしょう。

グローバル・バリューチェーンでの温室効果ガスの削減推進

カーボンニュートラルに向けた取り組みの効果を高めるには、自社のみで施策を実施するのではなく、グローバル・バリューチェーンにおける温室効果ガスの排出量削減を図っていく必要があります。グローバル・バリューチェーンとは、複数の国々に配置された生産工程の間で、財やサービスが完成されるまでに生み出される付加価値の連鎖のこと。複数国間における、原材料の調から製造、物流、販売、廃棄に至るまでの一連の流れと考えるとわかりやすいでしょう。

グローバル・バリューチェーンでの温室効果ガス排出量の削減に向けては、バリューチェーンマネジメントを進めていく必要があります。バリューチェーンマネジメントとは、「ステークホルダーとの対話を通じての重要な環境課題の特定」や「重要課題の予防・対応に有効な体制の構築」など、バリューチェーン全体の関係者と協働して戦略的に対処すること

バリューチェーンマネジメントには上流・下流という考え方を用います。上流は自社より前の取引先、下流は自社より後ろの取引先・顧客が含まれます。

バリューチェーンマネジメント
参考:環境省『バリューチェーンマネジメント 』を加工して作成

具体的に必要な対応は、「上流向け」と「下流向け」とで異なります。

上流or下流必要な対応具体例
上流向け持続可能な調(ライフサイクル全体にわたって最も肯定的な環境的・社会的・経済的影響をもつ調達)」を通じた環境配慮などに積極的に取り組んでいるサプライヤーからの調達と、環境負荷の少ない製品・サービスの調達・再生材や生物多様性およびその持続可能な利用に配慮した原材料や製品の調達

・省エネルギー性能など環境性能の高い機器、設備、車両の調達

・合法性の確認がとれた資源を使用した製品の調達 など
下流向け自社製品・サービスが使われる段階の環境負荷を減らす「環境配慮製品・サービス」の供給・環境に配慮した輸送サービスの提供

・小売業などにおける環境に配慮した販売(エコ商品、包装削減対策)の実施

・移動手段やモノ、空間などをシェアするサービスの提供 など

参考:環境省『バリューチェーンマネジメント

補助金や融資の活用検討

費用面の課題解決として有効なのが、経済産業省や環境省などの補助金制度や、日本政策金融公庫や銀行などの融資の活用です。

2024年5月末現在、以下のような補助金制度があります。(※全て、第一次公募期間は終了

カーボンニュートラルに関連した補助金制度の一例
  • 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(環境省)
  • 需要家主導型太陽光発電・再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業(経済産業省資源エネルギー庁)
  • 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(環境省) など

来年度以降も、こうした補助金制度の公募が行われる可能性があるため、関係省庁のホームページなどを定期的に確認しましょう。

なお、補助金制度の多くは、第一次公募期間に申請が殺到するため、第二次公募が行われる可能性は低いといわれています。また、補助金支給や融資実行に先立って審査が行われるため、必ずしも申請が通るとは限らない点にも注意が必要です。それらを踏まえた上で、「どのような補助金を受給できそうか」「どの程度の金額を融資してもらいたいか」などを前もって考え、申請に向けた準備を計画的に進めましょう。

植樹・植林活動の実施などネガティブエミッション技術の活用

環境への悪影響が及ぶ可能性を減らす方法として、実施・活用を検討したいのが、植樹・植林活動などのネガティブエミッション技術です。

ネガティブエミッション技術とは、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで、実質的にCO2排出量をマイナスとする技術の総称。再生可能エネルギーの代わりにネガティブエミッション技術を活用することで、カーボンニュートラルの実現を目指すというのも一つの手です。

ネガティブエミッション技術にはさまざまなものがありますが、私たちにとって身近なものとしては、植樹・植林活動が挙げられます。

植樹・植林活動を実施すれば、再生可能エネルギー設備の設置によって減少してしまう温室効果ガスの吸収量を補填できます。会社主導のもと、顧客や地域住民らとともに植樹・植林活動に取り組むとよいでしょう。「植樹・植林活動の実施はハードルが高い」と感じる場合には、会社の庭に苗木を植えたり、オフィスの屋上を緑化したりすることから始めるのをおすすめします。

なお、植樹・植林以外のネガティブエミッション技術については研究・開発段階の技術が多いのが現状です。とはいえ、今後は実用化が進んでいく見込みのため、実用化したタイミングで活用を検討するとよいでしょう。

カーボンニュートラルの矛盾・問題点にも目を向けて取り組みを

カーボンニュートラルには、「温室効果ガスの排出を許容している」「取り組むことでかえって環境への悪影響が懸念される」といった矛盾点があります。また、地域間での格差などの問題点も指摘されています。しかしながら、地球温暖化対策が急務となっていることから、矛盾点・問題点はあれど、カーボンニュートラル実現に向けて、世界中の国や企業などが一丸になって取り組む必要があります。

企業にとっては、「温室効果ガス排出量計算の複雑さ」や「再生可能エネルギー設備の設置費用の高さ」などが、カーボンニュートラルの課題となります。課題解決に向け、温室効果ガス排出量の算出ツール・サービスや補助金/融資の活用を検討してみてはいかがでしょうか。