電気自動車(EV)の二酸化炭素排出量。ガソリン車との比較や運用戦略

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「電気自動車(EV)は走行中クリーンだが、製造時の負荷が高く実はエコではない」という指摘があります。しかし、一部を切り取るだけでは真の姿は見えてきません。材料採掘から廃棄までを網羅するライフサイクルアセスメント(LCA)の視点ではじめて実態が浮かび上がります。
本記事では公的なデータを元にEVとガソリン車の二酸化炭素(CO2)排出量を徹底比較します。さらに、製造時の環境負債を日々の運用でいかに相殺し、削減効果を最大化させるか具体的な戦略を解説。車種選びから再エネ導入、SBT認定の活用まで、一歩先を行く脱炭素経営のヒントを探ります。
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- EVは製造時のCO2排出量が多いものの、走行距離を重ねることでトータルの排出量はガソリン車を逆転します。
- 適切な車種選定や再エネ充電といった運用戦略により、EVのCO2削減効果を最大限引き出すことができます。
- 脱炭素アクションをSBT認定と結びつけることで、企業としての強固なブランド価値と信頼を構築できます。
EVは本当にエコ?「製造から廃棄まで」の二酸化炭素排出量
「電気自動車(EV)は走行中に二酸化炭素(CO2)を出さないが、製造段階ではガソリン車より環境負荷が高い」という指摘を耳にしたことはあるでしょうか。この指摘がどの程度実態を捉えているのか、国が公表しているデータを元に詳しく見ていきましょう。
製造時の二酸化炭素負荷はガソリン車の約2倍
自動車が環境に与える影響を正しく評価するには、走行中の燃料消費だけでなく、材料の採掘、部品の製造、車両の組み立て、そして最終的な廃棄・リサイクルに至るまでの全工程を網羅したライフサイクルアセスメント(LCA)の視点が不可欠です。
■ガソリン車と電気自動車のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量

※10年で15万km走行したと仮定
環境省の試算によると、車両の製造段階におけるCO2排出量は、ガソリン車と比較してEVの方が圧倒的に多く、その合計は約2倍に達しています。
EVのCO2排出量を押し上げている大きな要因はバッテリー製造にあります。リチウムやコバルトといった希少金属(レアメタル)の採掘や精製、および電極製造プロセスにおいて多量のエネルギーを必要とするためです。

加えて、日本の一次エネルギー供給は2024年度速報値でも依然として80.0%を化石燃料に依存し、水力発電を除く再生可能エネルギー(再エネ)などの利用率も11.7%に留まっています。現状の発電方法では電力由来のCO2排出量が大きくなりやすく、出荷時点のEVはガソリン車よりも重い環境への負債を抱えた状態からスタートすることになります。
長く乗るほどEVのトータル二酸化炭素排出量はガソリン車を下回る
製造時に多くのCO2を排出するEVですが、使用(走行)段階に入ると排出量の合計において、EVの優位性が高まります。
ガソリン車は走行するたびに燃料を燃やし、常にCO2を排出し続けますが、EVは走行時のCO2排出がゼロだからです。

図が示すように、製造時の負荷が大きい80kWhのバッテリーを搭載したEVでも、ガソリン車と比較してトータルで約20%のCO2排出量を削減できています。よりバッテリー容量が小さい40kWhのEVであれば、削減効果は約30%にまで拡大します。
EV導入は、車両を入れ替えて終わりではありません。むしろ、導入後の運用をどうデザインするかが、脱炭素戦略の本質といえます。短期的な買い替えサイクルを前提とせず、経営戦略として中長期的に活用し、着実に走行実績を積み上げていくのがよいでしょう。製造時の環境負荷を運用を通して削減実績へと転換させていくことが、EVの環境性能を最大限に引き出し、企業の脱炭素経営を成功に導く一手となります。
【ビジネスシーン別】二酸化炭素排出量削減を最大化するEVの選び方
社用車をEVに切り替える際、単に「最新だから」「補助金が出るから」という理由だけで選ぶのは得策ではありません。
「どの程度の距離を、どのような目的で走るか」という実態に合わせた車両選定こそが、環境性能と経済性の両立を可能にします。
営業・配送など「近距離・多頻度」なら軽EVが最適
街中でのルート営業や、ラストワンマイルを担う小口配送業務には、軽EVが最適です。軽EVはバッテリー容量が比較的小さいため、製造時のCO2排出負荷を低く抑えることができます。
| ※ラストワンマイル:目的地の間の短距離・特定の敷地内や区域内・最寄り駅やバス停と自宅など、比較的狭い範囲内の移動を指す。また、ラストマイルやファーストワンマイルとも呼ばれる。 |
また、ストップ&ゴーが多い市街地走行では、回生ブレーキ(減速時のエネルギーを電気として回収する仕組み)が頻繁に作動するため、エネルギー効率が非常に高くなります。
車両価格も普通車のEVに比べて安価であり、導入ハードルが低い点も魅力です。「毎日決まったルートを50〜100km程度走る」といった運用であれば、夜間の普通充電だけで十分対応でき、最も合理的に脱炭素化を進められます。
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長距離移動や役員送迎なら「大容量バッテリー車」を計画的に
広域をカバーする長距離移動や、企業の顔としての役員送迎には、航続距離に優れた大容量バッテリー搭載車が有力な選択肢となります。ただし、バッテリー容量が大きいほど製造時の環境負荷も増大するため、この初期負債を考慮した戦略的な運用が求められます。
導入にあたっては、頻繁な車両更新を前提とした従来のサイクルを避け、中長期的なスパンで稼働し続ける体制の構築が重要です。
また運用面では、拠点での普通充電を基軸に据えつつ、長距離走行時は外部インフラを組み合わせる効率的な運行計画を立てましょう。管理体制を最適化することで、大容量車ならではの利便性を維持しながら、効率的なCO2排出量削減につながります。
【参考】PHV・FCV・合成燃料|脱炭素化を加速させる次世代技術
社用車のEV導入を基本戦略としつつ、その他の次世代技術も視野に入れることで、脱炭素戦略の幅はさらに広がります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
PHEV/PHV|プラグインハイブリッド自動車
外部からの充電が可能なハイブリッド車です。日常の近距離移動は電気、長距離移動はガソリンなど、バッテリー(蓄電池)とエンジンを併用できるため、実用的な「移行期の有力候補」として期待されています。また、2026年1月からは補助金が従来の60万円から最大85万円へと大幅に拡充されており、初期投資の負担が大きく軽減されました。
FCEV/FCV|燃料電池自動車
車載の水素と空気中の酸素を化学反応させて燃料電池で発電し、モーターで走行するモビリティです。排出されるのは水のみという優れた環境性能に加え、3分程度の短時間での充填と長距離走行を両立できる実用性に大きな強みがあります。
高価な部材に起因する車両価格の高さやインフラ(水素ステーション)整備の立ち遅れなどの課題はありますが、稼働率の維持が不可欠な長距離輸送や大型商用車分野における脱炭素の切り札として注目を集めています。
合成燃料
CO2と水素を原料に製造される燃料で、その中でも再生可能エネルギー由来の水素を用いたものを「e-fuel」と呼びます。既存のエンジンや給油設備といったインフラをそのまま活用できることが最大の利点です。現在は2030年代前半の商用化を見据え、製造コストの低減や供給体制の確立といった課題解決を目指して研究が進んでいます。電動化が困難な大型・特殊車両のカーボンニュートラル化を支える、将来の有力な選択肢の一つとなるでしょう。
(参考:環境省『Let’s ゼロドラ!!』『次世代自動車ガイドブック2018-2019』、資源エネルギー庁『2019年の今、「水素エネルギー」はどこまで広がっているの?』『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』、経済産業省『令和6年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」』『第1回 モビリティ水素官民協議会』『第17回 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会』)
「EV」✕「再エネ」が正解。電源構成で変わる環境価値
EVの製造段階で発生したCO2負荷を早期に解消し、その環境性能を最大限に引き出すには、走行に使う電気を再生可能エネルギーへ切り替えることが非常に有効なアプローチとなります。
最も直接的な方法は、自社拠点への太陽光発電設備の導入です。発電した電気をEVへ供給することで走行時の排出量を実質ゼロに抑え、製造時の環境負債をよりスピーディーに完済できます。電気代の削減や災害時の電源確保(BCP対策)といった、経営上のメリットを同時に得られる点も大きな魅力といえるでしょう。
一方で、設備の設置が難しい環境であっても、再エネ100%の電力プランへの切り替えや、非化石証書の活用といった柔軟な選択肢も存在します。自社の立地条件や予算などの状況に合わせて、最適な方法を検討してみてはいかがでしょうか。
社用車のEV化を信頼に変える!中小企業版SBT取得のすすめ
社用車の電動化や再エネ導入といった具体的なアクションを、客観的な「企業の信頼」へと転換させるために有効なのが、国際的な削減目標である「SBT(Science Based Targets)」の認定取得です。また、SBTには、企業規模など所定の条件を満たすと「中小企業版SBT」という専用の枠組みで申請することができます。
SBT認定を維持することは、大手企業のサプライチェーン選定における競争力強化や、金融機関による融資審査での加点要素(ESG評価)となるなど、対外的な評価の向上に直結します。
実務面においても、EV導入はガソリン消費による直接排出(Scope1)を抑え、再エネ導入は電気使用に伴う間接排出(Scope2)を削減するため、これらを組み合わせることでSBT目標の確実な達成を目指せます。社用車のEV導入や太陽光発電の設置を進める際は、その成果を確かなブランド価値へと昇華させるためにも、SBT認定の取得をセットで視野に入れて取り組みましょう。
EV導入は「運用戦略」で成果が決まる
EVは製造段階でCO2負債を抱えてスタートしますが、その後の運用戦略次第でトータルの排出量はガソリン車を大きく下回ります。
自社の用途に合った車種を選び、さらに太陽光発電などの再エネ活用を組み合わせることで、その削減効果は最大化されます。単なる車両の入れ替えに留まらず、中長期的な視点でエネルギーの質と運用の最適化を追求することが、脱炭素経営を成功させる鍵となります。
持続可能な未来に向け、まずは自社に最適な脱炭素とは何か?を検討することから始めてみませんか。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。