社用車の電気自動車(EV)化。メリット・デメリットと導入ポイント

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「社用車を電気自動車(EV)に変えるメリットとは?」燃料価格の高騰やサプライチェーンからの脱炭素要請が強まる中、この問いは企業の生存戦略に直結する重要課題となっています。
本記事では、維持費の抑制や公的な補助金の活用、さらには「動く蓄電池」としての活用法まで、EV導入がもたらす価値を多角的に解説します。運用上の懸念を解消し、次世代の経営基盤を築くための指針としてご活用ください。
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- 社用車のEV化は維持費の削減に寄与し、手厚い公的補助金を活用することで初期導入コストの壁を大きく下げることができます。
- 航続距離や充電器の不安は、走行データに基づき近距離車両から優先導入する段階的なステップと普通充電器の活用により解消可能です。
- 「EV導入」という目に見えるCO2排出削減策は、SBTなどの排出削減目標の達成を支えるエビデンスとなり、取引先からの信頼獲得を後押しします。
社用車EV化は生存戦略!EV化が進む背景と企業価値を最大化する理由
近年、社用車として電気自動車(EV)が選ばれるケースが急増しています。その背景には、世界的な「脱炭素(カーボンニュートラル)」の流れに加え、日本国内でも「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」が始動し、企業間でCO2(二酸化炭素)排出枠を売買する「排出量取引」や「カーボンプライシング」の導入といった政策的な後押しが本格化していることが挙げられます。
これまで環境対策は大企業の課題と思われがちでしたが、状況は変わりつつあります。サプライチェーン全体でのCO2排出量(サプライチェーン排出量)の削減が求められる現在、大手企業は取引先である中小企業に対しても「CO2排出量の可視化と削減」を求めるようになっています。つまり、環境対応が遅れていると、取引などのビジネスチャンスを失う「失注リスク」に直結する時代に突入しているのです。
また、社用車をEV化することは、企業にとって分かりやすく、かつ即効性のある「炭素コスト削減」の手段でもあります。従来のエンジン車(ガソリン車)の使用による化石燃料への依存度を下げることは、将来的な炭素税や排出量取引などによる経済的負担を減らすだけでなく、変動の激しい原油価格の影響を受けにくい強固な経営体質を作ることにもつながります。社用車のEV化は、単なる車両の入れ替えではなく、企業が生き残るための重要な投資と言えるでしょう。
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社用車をEV化する3つのメリット
社用車をガソリン車からEVに切り替えることで、企業は具体的にどのような恩恵を受けられるのでしょうか。ここでは、経営に直結する3つの大きなメリットを解説します。
1.【経費削減】ガソリン代比で約1/3。燃料高騰に負けない財務体質へ
最大のメリットは、ランニングコストの削減です。環境省の試算によると、EVの燃料コストは、ガソリン車と比較して半額以下に抑えられることが示されています。
例えば、年間1万km走行する場合、ガソリン車の燃料代は約11万円かかるのに対し、EVの電気代は夜間電力活用などの場合、約5万円で済むというデータがあります。これは走行距離1kmあたりで換算すると、ガソリン車の約1/2〜1/3程度のコスト感となります。

さらに見逃せないのが、「消耗品の削減」と「点検のシンプル化」です。国土交通省の資料によると、EVはエンジンを搭載していないため、これまでガソリン車では定期的に発生していたエンジンオイルやオイルエレメントの交換作業が丸ごと不要になります。また、減速時にエネルギーを回収する「回生ブレーキ」により、ブレーキパッドの摩耗が抑えられ、交換サイクルが長くなるという特長もあります。
こまごまとした部品交換に追われることがなくなるため、車両管理の負担は軽くなります。もちろん、プロによる確実な法定点検はありますが、摩耗や劣化するパーツそのものが少ないEVは、長く乗るほど管理のしやすさと維持費の安さを実感できるはずです。
(参考:国土交通省『電動車の特性を理解して運転しましょう ~電動車は加減速時に注意が必要~』)
2.【受注・採用強化】脱炭素の実績を選ばれる理由に変え、企業の価値を高める
2つ目のメリットは、企業の社会的信用とイメージの向上です。街中を走る社用車がEVであることや、自社のホームページなどで「営業車の100%EV化」を宣言することは、顧客や地域社会に対しての大きなアピールになります。
特に環境意識の高いZ世代にとって、企業のサステナビリティへの姿勢は就職先選びの重要な基準です。「環境に配慮しているクリーンで先進的な企業」という印象は、優秀な人材の確保にもプラスに働きます。また、取引先からの信頼獲得にもつながり、競合他社との差別化要因として機能します。
3.【BCP対策】災害時の「動く蓄電池」としての活用
3つ目は、BCP(事業継続計画)対策としての側面です。EVは、大容量のバッテリーを搭載した「動く蓄電池」としての機能を持っています。
資源エネルギー庁によると、災害などによる停電が発生した際、EVは外部給電機能を活用することで、非常用電源として大きな役割を果たします。オフィスの照明やPC、通信機器などへの給電が可能となり、緊急時でも最低限の事業機能を維持することができます。
また、自社の事業継続だけでなく、地域の避難所への電力供給や、近隣住民へのスマートフォン充電スポットとしての開放など、社会貢献活動にも直結します。自治体と災害時における協力協定を締結する企業も増えており、いざという時の備えがあることは、企業としてのレジリエンス(回復力)と信頼性の証明になります。
(参考:資源エネルギー庁『災害時には電動車が命綱に!?xEVの非常用電源としての活用法』)
社用車をEV化する3つのデメリットと解決策
メリットが多い一方で、導入に踏み切れない理由として挙げられるデメリットもあります。しかし、これらは適切な対策を行うことで解決可能です。
1.【コスト】高い車両価格には「最大130万円の補助金+リース」
「EVは車両価格が高い」というのは、導入を検討する企業にとって最大のネックです。しかし、2026年現在、国による手厚い補助金制度が用意されており、EV導入コストの壁を大きく下げることが可能です。
経済産業省の資料によると、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)におけるEVの補助上限額は、以下の通り設定されています。

さらに、自治体によっては独自に補助金を設定している場合もあり、これらを組み合わせることで、より手厚い支援を受けることも可能です。
こうした補助を活用しつつ、さらに賢く導入する手段として「カーリース」が選ばれています。最新の制度では、リース車両であっても車を使う使用者が直接申請を行い、国から補助金を受給する仕組みとなっています。
ただし、リース期間が処分制限期間以上であることなど、一定の要件を満たす必要があります。また、中古車のリースは対象外となるため注意が必要です。詳細は一般社団法人次世代自動車振興センターのホームページをご確認ください。
また、リース活用には財務・会計上の管理をシンプルにできるメリットに加え、EVで懸念されがちな「将来のバッテリー劣化による値崩れ(リセールバリューの下落)」を心配する必要がなくなり、中長期的な経営の見通しが非常に立てやすくなります。
2.【インフラ】受電容量や工事の負担には「普通充電」のスモールスタート
「EV用充電器の設置工事が高額になるのでは?」「電力契約(受電容量)を上げる必要があるのでは?」という懸念もよく聞かれます。
しかし、社用車の運用実態を考えると、高出力な「急速充電器」は必ずしも必要ではありません。夜間や休日に長時間駐車している間に充電する「普通充電器」で、多くの運用はカバーできます。
急速充電器と普通充電器の違いについて、一覧にまとめました。
| 普通充電器(出力:10kW未満) | 急速充電器(出力:~150kW) | |
|---|---|---|
| 充電時間 | 長時間(数時間~半日) | 短時間(概ね30分間) |
| 電源 | 交流・単相(日本では100Vまたは200V) | 交流・三相の高電圧(日本では450V) |
| 出力 | 交流3kW・6kW | 直流50kW以上が増加90kW以上も増えており、高出力化が進んでいる |
| 設置費用 | 安い(数万円~数十万円) | 高い(350万円~数千万円) |
| 設置場所 | 商業施設・ホテル・集合住宅・自宅など | 高速道路のSAPA・道の駅・SSなど |
| 維持・固定費用 | 比較的安い(年数万円~) | 高い(年100万円~) |
普通充電器であれば設置工事費も抑えられ、既存の電力契約の範囲内で設置できるケースも多々あります。まずは数台のEV導入に合わせて、コンセント型の充電設備から「スモールスタート」することをおすすめします。
また、事業所に太陽光発電設備やソーラーカーポートを設置している場合は、その電力をEV充電に回すことで、燃料費を実質ゼロに近づけることも可能です。
3.【電欠リスク】航続距離への不安には「適材適所の車種選定」
「営業中に充電が切れたらどうするのか」という航続距離への不安(電欠リスク)は、EV導入において最も多い懸念事項です。しかし、現在のEV車性能と企業の運用実態を照らし合わせると、このデメリットは適切な車種選定によって解決可能です。
■EV、家庭用蓄電池の容量など比較(各数値は一例)
| EV | 軽EV | 軽貨物EV | PHEV※ | (参考)一般的な家庭用蓄電池 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 電池容量 | 60kWh | 20kWh | 16kWh | 20kWh | 5~10kWh |
| 航続距離 | 450km | 180km | 133km | 87km | – |
| モード | WLTCモード※ | WLTCモード | WLTCモード | WLTCモード(EV換算) | – |
※PHEV:プラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)。搭載したバッテリー(蓄電池)に外部から給電ができる。バッテリーに蓄えた電気でモーターを回転させるか、ガソリンでエンジンを動かして走る
※WLTCモード:市街地、郊外、高速道路の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的な走行モード
軽EVでも航続距離は180kmを超えるものが主流となっています。これは都市部でのルート営業や配送業務、近隣エリアの顧客訪問といった「1日の活動範囲が決まっている業務」であれば、1回の充電で十分に対応できるスペックです。
解決のポイントは、全ての車両を一気にEV化しないことです。近距離移動がメインの営業車から優先的にEV化を進め、長距離移動や緊急対応が多い部署には当面ハイブリッド車を残すといった「適材適所」の配置により、電欠リスクを最小限に抑えつつ効率的に脱炭素化を図れます。
(参考:環境省『Let’s ゼロドラ!!』、経済産業省『総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 自動車判断基準ワーキンググループ 交通政策審議会 陸上交通分科会 自動車部会 自動車燃費基準小委員会 合同会議(第2回)』)
社有車EV化を成功させる4つのステップ
実際に導入を進めるための具体的な手順を紹介します。
1.走行データからどの車両をEV化すべきか優先順位をつける
まずは現状把握です。運転日報や車両管理システム(テレマティクス)のデータを活用し、各車両の1日の平均走行距離や稼働率を洗い出します。例えば、以下の条件に該当する車両をピックアップしてみてください。
- 1日の走行距離が100km未満の車両
- 決まったルートを走ることが多い配送・営業車両
- 事業所に戻って毎日駐車する時間が確保できる車両
これらの条件に当てはまる車両が、社用車EV化の最優先候補です。データを基に優先順位をつけることで、無理のない移行計画が立てられます。
2.業務に最適な「車種」と「充電設備」の選定
次に、車種と充電環境を選定します。最近では、日本の道路事情に適した「軽EV」のラインナップが充実しており、小回りが利き維持費も安いため、法人利用でも人気が高まっています。
同時に、充電設備の設置場所を確認します。駐車場の位置、配電盤からの距離などを確認し、EV充電器を何基設置するかを決定します。もし自社屋根に産業用太陽光発電がある場合は、EV充電と組み合わせることで自家消費比率を高め、投資回収を早めるシミュレーションも行いましょう。
3.補助金・税制優遇の活用と資金調達の確定
車種が決まったら、利用できる補助金を確定させます。国(CEV補助金)だけでなく、自治体独自の上乗せ補助がある場合もあるため、都道府県や市区町村のホームページも必ずチェックしましょう。
その上で、現金購入か、リースか、あるいは銀行融資を活用するかなど、資金調達の方法を決定します。補助金の申請期間は決まっていることが多いため、早めの情報収集と申請準備が不可欠です。
4.EV導入実績を「SBT認定」につなげ、信頼を確かなものにする
社用車のEV化は、Scope1を削減する有力な脱炭素経営の手法の1つです。これを単なる「エコカー導入」という環境活動にとどめず、自社の競争力を高める経営戦略の一環として位置づけることが重要となります。まずは国際的な指標である「SBT(Science Based Targets)」の指針に沿って削減目標を掲げ、認定を取得しましょう。
一定の要件を満たす企業であれば、申請プロセスが簡略化された「中小企業版SBT」という枠組みを利用できます。「EV導入」という目に見えるCO2排出削減策は、その目標達成を支える裏付けとなり、SBT認定を取得することで大手取引先や金融機関からの評価を確かなものにできるでしょう。
「自社が中小企業向けの要件を満たしているか」「CO2排出量はどうやって算定するのか」といった初期段階の疑問から、中小企業版SBT申請の専門家として炭素会計アドバイザーの資格を持つ専門スタッフが丁寧にお答えします。まずは無料相談からお気軽にお声がけください。
社用車EV化で「選ばれる企業」の一歩を踏み出そう
社用車のEV化は、単なる環境活動の枠を超え、燃料費削減による「守りの経営」と、企業価値の向上やSBT認定を通じた「攻めの経営」を両立させる、有力な経営戦略の1つとなります。
2026年現在、補助金や車種の充実により、EV導入を検討しやすい環境が整っています。まずは自社の車両データを可視化し、無理のない範囲で具体的なシミュレーションを始めてみましょう。その一歩が、将来の競争力を支える土台となるはずです。
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