【中小製造業向け】CO2排出量算定はなぜ必要?基礎知識と重要性をわかりやすく解説

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「取引先の大手企業からCO2排出量のデータ提供を求められたが、どう算定すればいいのかわからない」「脱炭素経営という言葉は聞くけれど、自社のような中小製造業にどんなメリットがあるのか?」今、製造業を取り巻く環境は激変しています。カーボンニュートラルへの対応は、もはや「環境活動」というボランティアではなく、サプライチェーンに残るための「生存戦略」となりました。
本記事では初めてCO2排出量算定に取り組む担当者に向けて、算定の基礎から具体的な手順、さらにその先にある「中小企業版SBT」の活用までをステップバイステップで解説します。
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- 脱炭素は中小製造業の生存戦略です。取引先による選別やコスト高騰、海外規制への対応として排出量算定は不可避であり、企業の存続を左右する最優先の経営課題です。
- まずは自社で把握しやすいScope 1(燃料)とScope 2(電気)から着手し、段階的にサプライチェーン全体(Scope 3)へ広げていくのが、実務における定石です。
- 中小企業版SBT認定の取得は信頼と実利を生みます。国際規格の目標を掲げることで、大手との取引維持や融資優遇、採用力の強化など、具体的な経営メリットを享受できます。
なぜ今、中小製造業にCO2排出量算定が求められるのか
かつてCO2排出量の管理は、エネルギーを大量に消費する大企業だけの課題でした。しかし現在は、日本企業の99%以上を占める中小企業、特に製造業においてその重要性が急速に高まっています。
サプライチェーンからの要請と選別リスク
最大の理由は、主要な取引先である大手企業による「サプライチェーン排出量」の管理強化です。大手企業は自社だけの削減では目標を達成できないため、部品や原材料を供給する中小企業に対しても、排出量の把握と削減を求めています。

算定ができない、あるいは削減の意思がないとみなされると、「環境への配慮が欠ける企業」として、将来的に取引から除外される「サプライヤー選別」のリスクにさらされる可能性があります。
原材料・エネルギーコストの高騰対策
CO2排出量を算定することは、自社のエネルギー使用実態を「見える化」することと同義です。どの工程で無駄に電気を使っているのか、どの設備が非効率なのかが明確になります。
エネルギー価格が高騰し、原材料費が経営を圧迫する中、CO2算定を起点とした省エネ活動は、直接的なコスト削減に直結します。排出削減は、そのまま利益率の改善へとつながるのです。
輸出企業への影響と海外規制
海外、特に欧州(EU)市場と取引がある企業は、より切実な状況にあります。「炭素国境調整措置(CBAM)」などの規制により、製品の製造過程で出されたCO2量に応じて事実上の関税が課される動きが進んでいます。正確なデータを出せない製品は、国際市場での価格競争力を失うことになります。
製造業担当者が知るべきCO2排出量算定の基礎知識
算定を始める前に、まず押さえておくべき2つのキーワードがあります。
Scope1・2・3の分類
CO2排出量は、発生源ごとに「Scope(スコープ)」という3つの区分に分類され、「Scope1・2・3」があります。

| 分類 | 対象 |
|---|---|
| Scope1(直接排出) | 自社での燃料燃焼による排出。製造業では、工場のボイラーや乾燥炉で使用するガス・重油、フォークリフトの燃料などが該当します。 |
| Scope2(間接排出) | 他社から供給された電気や熱の使用による排出。工作機械の稼働や照明で使用する「購入電力」が代表例です。 |
| Scope3(その他の間接排出) | 原材料の調達や製品の輸送、廃棄など、自社の活動に関わる他社の排出。サプライチェーン全体の排出が対象で、広範な把握が必要です。 |
まずは自社だけで把握しやすいScope 1・2から算定を始め、段階的にScope 3へと広げていくのが実務の定石です。
CO2排出量算定の基本計算式はシンプルな掛け算!活動量×排出原単位
「計算が難しそう」と思われがちですが、基本は非常にシンプルな掛け算です。
CO2排出量 = 活動量 × 排出原単位
- 活動量:電気の使用量、ガスの使用量、ガソリンの購入量など、活動の規模を表す数値
- 排出原単位:活動量1単位当たりのCO2排出量を示す係数(省庁が公表)
CO2排出量算定については、以下の記事が参考になります。ぜひお読みください。
CO2排出量算定の4ステップ
実務としてどのように算定を進めるべきか、具体的な4つの手順を見ていきましょう。
ステップ1.算定範囲(バウンダリ)の決定
まずは「どこまでを自社の範囲として計算するか」を決めます。基本的には、自社が管理権限を持つ全ての拠点が対象です(本社、営業所、工場、倉庫など)。「まずは一番エネルギーを使う工場から着手し、全社へ広げる」といったスモールスタートも一つの手です。
ステップ2.社内データの収集・活動量の把握
次に、ステップ1で決めた範囲内の「活動量」データを集めます。
- 電気・ガス:毎月の検針票や請求書
- 燃料(ガソリン・軽油・灯油・重油):領収書や給油カードの明細
製造業では、製造ラインごとに子メーターを設置している場合、排出量をより詳細に把握することが可能になります。
ステップ3.排出原単位の選定と計算
集めたデータに「排出原単位」を掛け合わせます。
- 電気の場合:契約している電力会社が公開している「調整後排出係数」を使用
- 燃料の場合:環境省の「排出量算定・報告・公表制度」で定められた係数の使用が一般的
ステップ4.「Scope3」への挑戦
Scope1・2の算定に慣れたら、次に取り組みたいのがサプライチェーン全体を対象とする「Scope3」です。
製造業においてScope3は排出量の大半を占めますが、いきなり完璧を目指す必要はありません。まずは「原材料の調達」や「輸送」など、自社のビジネスに大きく関わるカテゴリから着手しましょう。算定方法も、「原材料の購入金額」に政府公表の係数を掛けるといった簡便な手法から始め、段階的にカバー範囲を広げていく姿勢が、持続可能な脱炭素経営の鍵となります。
Scope3のカテゴリについては、以下の記事が参考になります。
算定だけで終わらせない!中小企業版SBTのススメ
CO2排出量を算定したら、次の目標として「中小企業版SBT」の認定取得を推奨します。SBTとは、パリ協定に整合する科学的根拠に基づいた削減目標です。
通常、大企業向けルートではScope3の厳密な算定や膨大な申請書類、高額な審査費用(11,000ドル〜)が必要ですが、「中小企業版SBT」は、これらのハードルが大幅に緩和されています。
Scope3の算定・報告義務は免除され(サプライチェーン全体の排出削減を約束する「コミットメント」は必要)、公式ホームページのフォームから簡略化された手続きで申請が可能です。申請費用も1,250ドルまたは2,000ドルと抑えられており、リソースの限られた中小製造業でも国際基準の認定を取得できる現実的な選択肢となっています。
なぜ中小企業版SBTを目指すべきか
CO2排出量の算定は「現状把握」に過ぎません。その数値を「中小企業版SBT」という国際規格の目標に昇華させることで、自社の取り組みに客観的な信頼性が備わります。単なる自己申告ではなく、外部機関の認定を得ることが、取引先や金融機関から正当な評価を受けるための強力な武器へと変わるのです。
SBT認定取得による3つのメリット
サステナビリティ担当者として、社内でSBT認定取得を提案する際に役立つ3つのメリットを整理します。
メリット1.大手企業との取引維持・拡大
多くのグローバル企業がサプライヤーに対しSBT水準の目標設定を求めています。SBT認定を取得していることは、それだけで「大手の基準をクリアしている企業」という強力な証明になり、既存取引の継続や新規案件獲得に直結します。
メリット2.金融機関からの融資優遇
地域金融機関も環境経営に取り組む企業を支援する融資メニューを強化しています。SBT認定を条件に金利が優遇されるケースもあり、設備投資のための資金調達コストを抑えられる実利的なメリットがあります。
メリット3.採用力の強化とブランドイメージ向上
深刻な人手不足に悩む製造業界において、「環境への配慮」は若年層の就職先選びの重要な指標です。「国際的なSBT認定を受けている」という事実は、先進的でクリーンな企業イメージを与え、優秀な人材の獲得や従業員の満足度向上に寄与します。
正確なCO2排出量算定と中小企業版SBT認定取得で、選ばれる製造業へ
製造業におけるCO2排出量の算定は、単なる事務作業ではなく、コスト削減と信頼獲得のための「経営戦略」そのものです。「何から始めればいいか」と迷っている担当者の皆様、まずは昨年度の電気とガスの使用量を確認するところから始めてみてください。そして、Scope1・2の算出ができたら、ぜひ中小企業版SBTの認定取得を目指してみましょう。
国際基準の目標を掲げることは、自社の持続可能性を高めるだけでなく、次世代に選ばれる製造業へと進化するための大きな一歩となります。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。
