企業がSBTを取得する5つのメリット。デメリットへの不安も解消

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SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく目標)は、パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと。SBTi(Science Based Targets initiative)は企業分類を定めており、大きく分けると「通常版SBT」と「中小企業版SBT」の申請方法があります。中小企業版SBTは、リソースや人材が限られている中小企業でも取り組みやすいよう、通常版に比べて手続きが簡略化されています。
今回は、SBT認定の取得を検討している企業に向けて、SBT認定を取得するメリット5つを解説するとともに、デメリットはあるのか、課題と解決策なども紹介します。SBTの申請方法も掲載していますので、ぜひご覧ください。
HELLO!GREENでは「中小企業版SBT認定を取得したいが、ノウハウが不足している」「対応できる人材がいない」とお困りの企業さまを支援しています。環境省認定「脱炭素アドバイザー」が認定取得まで一気通貫でサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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- 企業がSBT認定を取得するメリットは、脱炭素経営の加速や新規取引の獲得、コスト削減などです。
- 申請の手間がかかる、英語で申請するためハードルが高いなど、負担や課題もありますが、補助金や外部サービスの活用で対応できます。
- SBTのメリットを知り、認定を取得しようと思った場合には、申請方法も確認しておきましょう。
SBT認定を取得するメリット5つ
近年、大企業に加えて日本国内の中小企業によるSBT認定の取得も拡大しています。日本の中小企業の認定数は962社にのぼり、これは2023年1月と比べて4倍以上の増加です(2024年8月時点)。多くの企業がSBT認定に向けて動く中で、SBT認定の取得を検討している企業にとっては、「どのようなメリットが期待できるのか」が気になるところでしょう。
企業がSBT認定取得で得られるメリットは、主に以下の5つがあります。
■SBT認定を取得するメリット
- 科学的根拠に基づいた脱炭素経営に取り組みやすくなる
- ESG投資への好影響が期待できる
- 新規取引の獲得につながる
- 中長期的にコストを削減できる
- イノベーションの創出につながる
メリット1.科学的根拠に基づいて脱炭素経営を進めやすくなる
SBTは科学的根拠に基づいて温室効果ガス削減目標を策定し、SBTiの基準に沿って認定を受けるため、脱炭素経営の基盤となり得ます。脱炭素経営とは、気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のこと。SBT認定取得に向けた取り組みで、温室効果ガスの排出量を測定することで、排出量が特に多い場所(ホットスポット)が明確になります。これにより、削減すべき重点領域を把握できるため、施策の優先順位も立てやすくなり、排出削減を効果的に進めることが可能です。
また、SBTは国際的な認証のため、社内外のステークホルダーへの説明もしやすく、経営層から現場まで一体となった脱炭素経営を促進する効果もあります。その結果、「脱炭素経営に積極的に取り組む企業」というイメージが強化され、自社への社会的信頼が高まるとともに、人材採用への好影響も期待できるでしょう。
メリット2.ESG投資への好影響が期待できる
環境への取り組みは、投資家からの注目を集めやすくする効果も期待できます。なぜなら、近年、ESG投資(企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みを投資先の選定基準とする投資方法)が世界的に急拡大しているためです。
SBT認定を取得することで、自社が科学的な根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定していることを示せるため、環境意識が高い投資家からの信頼を得やすくなります。投資家からの資金調達が容易になると、事業拡大や新規プロジェクトへの投資などがしやすくなり、事業の成長にもつながっていくでしょう。
メリット3.取引先からの信頼が高まり、連携が広がる
環境問題に取り組む企業との取引を優先する動きは、世界的に広がっています。特にグローバル展開している大手企業を中心に、サプライチェーン全体で脱炭素を進める動きが強まり、取引先に温室効果ガスの削減を求めるケースも増えている状況です。
SBT認定を取得することで、環境意識の高い企業から調達先や取引先として選ばれやすくなり、これまで接点のなかった企業との新規取引の獲得や、既存の取引先との関係強化につながる可能性があります。自社製品を海外に輸出している企業の場合、海外市場での評価向上にも貢献し、国際競争力の強化にも寄与するでしょう。
メリット4.中長期的にコストを削減できる
SBTの達成に向けた取り組みは、短期的には投資が必要になる場合もありますが、中長期的にはコスト削減効果をもたらします。省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入などによりエネルギー効率が向上し、エネルギーコストの削減が期待できるためです。例えば、太陽光発電を導入した場合、設備費用はかかるものの、月々の電気代を抑えられるため、中長期的には投資分(設備費用)を回収できるでしょう。
また、「炭素税」や「排出量取引制度」などの導入が世界各国で進む中、早期に排出量削減に取り組むことは、将来的な金銭的負担の軽減にもつながります。
(参考:内閣官房GX実行推進室『GX実現に資する排出量取引制度に係る論点の整理(案)』)
メリット5.イノベーションの創出につながる
SBTiは、SBTの排出削減目標を「先進的な企業による気候変動対策(AMBITIOUS CORPORATE CLIMATE ACTION)」としています。野心的な目標を実現するために、従来の業務プロセスや製品・サービスの見直しが必要になる、新しい技術や手法を導入するなどの工夫が不可欠で、企業によってはビジネスモデルの転換を迫られる場合もあるでしょう。
こうした変革の必要性が、結果的に従業員の課題意識や問題解決の姿勢を高め、イノベーションの創出につながります。結果として、競争力のある製品・サービスの誕生や新たなビジネスモデルの構築につながる点は、企業にとって大きなメリットでしょう。
SBTがもたらす影響
SBTが、従業員のモチベーションや人材採用に影響を与えることがあります。メリットでも述べたように、SBTへの取り組みによって、環境意識の高い企業というイメージが向上するためです。
また、SBTの目標達成に向けた活動を通じて、排出量の正確な把握や削減施策の実行、サプライチェーンを含む広範な対応が必要になるため、組織全体の業務見直しやプロセス改善が促されます。これが結果として、社内の意識改革や部門間連携の強化などにつながることがあります。従業員が企業の環境目標に主体的に関与できる機会が増えることは、働きがいやエンゲージメントの向上にも寄与します。気候変動への具体的な行動を求める人材にとって魅力的な職場となり、採用面での強みにもなり得ます。
SBT認定の取得にはデメリットもある?
企業がSBT取得による明確なデメリットはありません。また、仮に目標を達成できなかったとしても、具体的なペナルティは設けられていません(2025年4月時点)。ステークホルダーに「目標を達成できなかった企業」とみなされる可能性はありますが、達成できなかった理由に正当な根拠があれば、大きな問題にはなりにくいでしょう。そもそもSBTは科学的根拠に基づいた目標設定を通じて脱炭素経営を推進するものであり、その取り組み自体に大きな意義があります。
ただ、ほかの脱炭素制度と同様に、いくつかの負担や課題はあるため、対応策を検討しておくことは必要です。主な負担・課題とその対応策としては、以下が考えられます。
負担・課題 | 具体例 | 対応策 |
---|---|---|
費用がかかる | ・通常版SBT:USD11,000(手数料別) ・中小企業版SBT:USD1,250(手数料別) ・省エネ設備や再生可能エネルギーなどの導入が必要な場合がある | ・補助金や税制優遇措置を活用する ・段階的な導入により、費用負担の分散を図る(一度に多額の費用が必要にならないように計画する) |
対応できる人材・時間の確保が難しい | ・排出量算定に必要なデータの収集と分析に手間がかかる ・専門知識が必要 ・英語で対応できる人材がいない場合、申請のハードルが高い | ・SBT認定取得支援サービスを活用する |
中小企業版SBTの場合、1ドル140円とすると、申請費用として約18万円(手数料別)が必要となります。SBTなどに関する補助金制度を設けている自治体もありますので、自社のある地域の情報を調べてみることをおすすめします。
人材・時間の確保については、手間のかかる作業や自社だけでは対応が難しい作業を外部の専門サービスを活用することで、SBT認定取得に向けた手続きを円滑に進められます。
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【参考】SBTの申請方法
SBTの認定取得を検討する企業のために、申請の主な6ステップを紹介します。

最初のステップである「コミット」とは、2年以内にSBT認定を行うと宣言することです。コミットなしでも申請可能ですが、自社の取り組みを社外にアピールする効果や従業員の意識向上などのメリットがあるため、コミットすることをおすすめします。
温室効果ガス排出削減目標を設定し、申請書を作成したら、SBTiに提出。申請後は、SBTiが目標の妥当性を確認し、審査結果が通知されます。認定後は、年1回の「進捗状況の報告・開示」と、最低5年ごとの「目標の妥当性の確認」が必要です。必要に応じて、再計算・目標の再設定を行いましょう。
各ステップの詳細は、以下の記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。
企業にとってのメリットが大きいSBTを取得しよう
SBT取得は、企業にとって多くのメリットをもたらします。SBT認定を取得することで、脱炭素経営を計画的に進めやすくなり、ESG投資や新規取引の獲得にもつながるでしょう。省エネ対策などによる中長期的なコスト削減や、目標の見直しを通じたイノベーションの創出も期待できます。
一方で、申請の手間などの課題もありますが、補助金や外部支援の活用により対応が可能です。自社の成長と持続可能性を両立させるためにも、SBTの取得を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。