再エネの「追加性」とは?RE100の新基準との関連性や調達方法を解説

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近年、企業の脱炭素経営において「追加性」という言葉をよく耳にするようになりました。大企業を中心に注目を集めていますが、いずれはサプライチェーン全体、つまり中小企業にも影響が及ぶ重要なキーワードです。
この記事では、再エネの追加性の概念やRE100の改定された基準、具体的な再エネ調達手法について解説します。
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- 「追加性がある」とは新たな再エネ設備の増加を促す効果を指し、企業が脱炭素社会に貢献する上でのキーワードとなっている
- RE100の技術要件改定により、運転開始から15年以内の設備から調達する「15年要件」などルールの厳格化が進んでいる
- 追加性を確保した再エネ調達は、SBTの目標達成や企業価値の向上において今後さらに重要性を増していく
再エネの「追加性」とは?
世界的に脱炭素化の動きが加速する中、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入において「追加性(Additionality)」という概念が注目を集めています。脱炭素化の取り組みを対外的にアピールする上で、今や欠かせないキーワードとなりつつあります。
現在、追加性について国際的に統一された明確な定義は存在していません。しかし、環境省の資料によると、以下のように解説されています。
| 「追加性」があるとは、新たな再生可能エネルギー設備の増加を促す効果があるということであり、社会全体の再エネ導入量を増やすことにつながるため、企業が脱炭素社会の実現に貢献していく上でのキーワードとなります。 |
追加性が重要視される前は、再エネを導入すれば手法を問わず評価される傾向にありました。現在は世界的な潮流として、投資家や取引先などのステークホルダーから「企業が行う再エネ調達が、本当に社会全体の新規再エネ設備の増加に貢献しているか」が厳しく問われるフェーズに入っています。サプライチェーンのグローバル化が進む中、企業が追加性のある再エネを調達することは、消費者への訴求効果も期待できるため非常に重要です。
なぜ「追加性」が問われるのか?RE100の技術要件改定が与える影響
企業の再エネ調達において、近年追加性が急速に重要視されるようになった大きな契機の一つに、世界的な環境イニシアチブである「RE100」の2022年10月に改定された技術要件が挙げられます。RE100は、2014年に結成された事業活動で消費する電力を100%再エネで賄うことを目指す企業連合です。
(参考:グリーン・バリューチェーン プラットフォーム『脱炭素経営に向けた取組の広がり』)
RE100の技術要件改定の背景
なぜRE100は技術要件を改定し、追加性を強く求めるようになったのでしょうか。その背景には、社会全体の電力需要が増大しているという現状があります。限られた既存の再エネを企業間で取り合うだけでは本質的な脱炭素化は進まないため、「新たに供給される電源をいかに増やすか」が重要視されるようになったのです。
実際にRE100の技術要件改定によって環境価値を示す証書にも追加性が求められるようになったことで、今後は条件を満たす証書の需給が逼迫する可能性が指摘されています。経済産業省や環境省の議論でもこの懸念は共有されており、特にデータセンターなどの電力多消費事業者が、自ら追加性のある再エネを確保する動きも求められている状況です。
このように、RE100の技術要件改定をきっかけとして、達成を目指す大企業が追加性のある再エネを積極的に求めるようになってきています。大企業がサプライチェーン全体での脱炭素化を推し進める中、この流れはいずれ中小企業にも及ぶことでしょう。
(参考:環境省『データセンターのゼロエミッション化・地域共生加速化事業』)
RE100の求める再エネ調達手法
RE100では、再エネの調達方法について、下図の5種類・8手法の基準を設けています。
■RE100の再エネ調達手法

RE100の求める再エネは、物理的な直接調達である自家発電のほか、PPAや再エネ電力メニュー、再エネ電力証書(EAC)なども認められています。EACに関しては、日本では一般的に非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットが利用されています。
さらに、調達手法の指定にとどまらず、技術要件(Ver.5.0)からは「石炭混焼の禁止」など、環境負荷を低減するための細かなルールも随時設けられています。RE100に参加する企業は、同イニシアチブが定める一連の基準に適合する形で再エネを調達しなければなりません。つまり「再エネであればよい」という段階から一歩踏み込み、指定された厳格な要件を満たす環境価値が求められていることが分かります。
調達する再エネ電力の15年要件
RE100の2022年10月に改定された技術要件で特に注目すべきなのが「15年要件」です。これは、調達する再エネ電力は、運転開始もしくはリパワリング(古い設備を更新して出力を増強すること)から15年以内の発電設備からのものでなければならないというルールです。
自家発電やオンサイトPPA、オフサイトでの自営線供給など、特定の条件を満たす場合は例外とされますが、基本的には「新しい設備から生み出された再エネ」を評価する仕組みになっています。この15年要件こそが、新規の発電設備投資を促し、まさに追加性を担保するための強力なルールとして機能しているのです。
さらに近年では、発電と消費のタイミングを合わせる同時性の概念も議論され始めており、再エネ調達において、より細かく厳しい条件が求められるようになっています。
【注目】追加性のある再エネ導入はSBT取得&目標達成にも有効
追加性を重視する動きは、国際的な排出削減目標である「SBT(Science Based Targets)」とも深く合致します。SBTも「実質的な排出削減」を求めており、社会全体の再エネ設備を増やす追加性の理念と共通しているためです。
SBTの目標達成に向けた施策として「追加性のある再エネ」を活用すれば、自社の環境貢献度をより強力にアピールでき、企業価値のさらなる向上につながるでしょう。
SBT認定取得後の流れについては、下記記事をぜひご覧ください。
追加性を確保できる再エネ調達手法
具体的にどのような方法で追加性のある再エネを調達すればよいのでしょうか。環境省の資料によると、主に下図の4つのアプローチが挙げられています。
■日本の再エネ電力の調達手法

4つのアプローチの詳細について、それぞれ見ていきましょう。
なお、追加性がある手法であっても、各企業の状況や契約形態によっては、RE100または日本国内の中小企業向け「再エネ100宣言 RE Action」の要件に該当しないケースもあります。各イニシアチブへの参加や報告を検討している企業は、それぞれの詳細な要件を必ず確認してください。
再エネ100宣言 RE Actionについては、下記の記事でも紹介しています。
1.敷地内での太陽光発電の導入
自社の工場やオフィスの敷地内に、新たに太陽光発電設備を設置する方法です。建物の屋根への設置だけでなく、従業員用の駐車場にソーラーカーポートを導入するケースも増えています。
また、設備投資など多額の初期費用を用意しなくとも、毎月の電気料金として支払う形で手軽に導入できる「オンサイトPPA」というモデルも普及しています。これはPPA事業者が自社の敷地内に設備を設置し、そこで発電された電力を需要家である企業が購入する仕組みです。
■「オンサイトPPA」による自家消費型太陽光発電

これらは物理的に新たな設備を増やすため、追加性を満たしつつ、企業にとって取り入れやすい有効な手法と言えます。
2.敷地外での太陽光発電の導入
自社の敷地内に十分なスペースがない場合、敷地外(オフサイト)に新たな発電設備を設置し、送配電網を通じて電力を調達する方法です。
自社で設備を所有する自己託送のほか、需要家が特定の発電事業者と直接長期契約を結び、敷地外の専用発電所でつくられた再エネ電力を送配電網を介して購入する「オフサイトコーポレートPPA(オフサイトPPA)」という手法もあります。
■オフサイトコーポレートPPA

オフサイトコーポレートPPAも新たな発電所の建設を伴うため、追加性が認められます。
3.再エネ電力メニューへの切り替え
電力会社が提供している再エネ電力メニューへ切り替えることも有効な手段です。自ら設備を持つわけではないため、直接的な追加性とは見なされにくい側面もあります。
■小売電気事業者の再エネ電力メニューへの切り替え

しかし、新設の発電所から供給されるメニューを選べば追加性が確保されます。また、再エネ電力メニューへの需要が高まることで、電力会社や発電事業者が新たな再エネ発電設備を導入する動機付けとなり、結果的に間接的な追加性を生み出すことにつながります。
手軽に脱炭素経営をスタートさせたい企業にとって、現実的かつ有力な選択肢の一つとなるでしょう。
4.再エネ電力証書の購入
非化石証書やグリーン電力証書といった環境価値を購入し、通常の電力と組み合わせて使用する方法です。
証書の購入そのものが直接新たな発電所を建てるわけではありませんが、新設の発電所に由来する証書を選択して購入することで追加性が認められます。また、仮に既存設備からの証書であっても、その売却益が発電事業者の収益となり、将来の新たな再エネ設備の投資資金へと回ります。したがって、証書の需要を創出することも社会全体の再エネ増加に貢献し、追加性のある行動になりうると評価されています。
追加性のある再エネ調達で、一歩先の脱炭素経営へ
脱炭素化に向けた取り組みが進む中、企業の再エネ調達に対して追加性を求める声が国際的に大きくなっています。RE100の15年要件に見られるように、今後は「再エネであればどんなものでもよい」という段階を過ぎ、調達する再エネに対して稼働年数などの明確な条件が求められる時代になっていくでしょう。
現在は大企業を中心とした動きですが、サプライチェーン全体での排出削減が求められる中、中小企業も追加性のある再エネ調達を求められる流れへと確実にシフトしています。取引先から急な対応を求められても慌てないよう、まずは自社の状況に合った調達手法の検討を始めてみてはいかがでしょうか。
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