SBT認定後に必要な実務とは?目標の公表と年次報告の進め方を解説

HELLO!GREEN の「中小企業版SBT認定申請サービス」資料を無料ダウンロードする
近年、脱炭素経営への関心が高まる中、中小企業が「SBT(Science Based Targets)」の認定を取得するケースが急増しています。しかし、認定取得はゴールではなく、真のスタートです。認定後に求められる「毎年の報告」や「目標の見直し」を怠ると、せっかく取得した認定が取り消されるリスクもあります。
本記事では、中小企業版SBT認定を取得した直後に着手すべき具体的なアクションから、毎年の進捗公開、さらには補助金や融資につなげる活用術まで、実務に即して詳しく解説します。
これを読めば、SBT認定後の運用ルールを正しく理解し、国際基準の信頼を維持する方法がわかります。さらに、その信頼を活かして戦略的な「攻めの脱炭素」を実践できるようになるでしょう。
HELLO!GREENでは「中小企業版SBT認定を取得したいが、ノウハウが不足している」「対応できる人材がいない」とお困りの企業さまを支援しています。環境省認定「脱炭素アドバイザー」が認定取得まで一気通貫でサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
→詳しいサービス資料をダウンロードする
- SBT認定は取得がゴールではなく、脱炭素経営のスタートラインです。認定後は国際基準に沿った継続的な情報開示と改善が求められ、企業姿勢そのものが評価対象となります。
- SBT認定後は6カ月以内の目標公表、毎年の排出量算定・進捗開示、5年ごとの目標更新が不可欠です。これらを怠ると認定失効のリスクがあり、継続的な報告と改善が企業価値を左右します。
- 省エネや再エネ導入によるScope1・2削減を軸に、Scope3の把握への姿勢も求められています。SBTは金融評価や取引継続、採用力強化につながり、脱炭素を経営戦略に活かしましょう。
中小企業版SBTとは
中小企業版SBT(中小企業向けSBT)とは、SBTiが定める特定基準(従業員数や売上高など)を満たす企業を対象とした、温室効果ガス排出削減目標の策定・認定プロセスを簡素化した制度です。
中小企業版SBTの短期目標においてはScope3(サプライチェーン排出量)の数値目標の設定が免除されていますが、「排出量の測定と削減に取り組むことへのコミットメント」は要件とされています(※ネットゼロ目標を設定する場合はScope3の目標設定も必須)。これにより、リソースの限られた中小企業でも、パリ協定(1.5℃目標)に整合した国際基準の脱炭素経営を公表できるのが特徴です。
2024年以降、大手企業によるサプライヤーへの排出量削減要求が強まる中、SBT認定を取得することは、取引先や求職者に対する「信頼の証」として非常に重要な意味を持ちます。
以下の記事では、中小企業版SBTについてもっと詳しく知りたいという方向けに解説しています。
中小企業版SBT認定の取得に向けて
中小企業版SBT認定の取得を自社で目指す場合、多くの企業は取得に関して以下のようなハードルを感じているようです。
- ノウハウがない
- リソースが限られており対応できる人材がいない
- 海外とのコミュニケーションが不安
HELLO!GREENでは、環境省認定「脱炭素アドバイザー」が面倒な作業を代行。認定取得まで一気通貫で支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
詳しいサービス資料をダウンロードする>>
SBT認定取得直後に実施すべき、3つのアクション
SBT認定の取得はゴールではなく、脱炭素経営のスタートラインです。SBTは、一度取得すれば永続的に維持できるライセンスではなく、継続的な「報告」と「改善」を前提としたものです。
認定取得後に求められるルールを正しく理解し、速やかに実行に移さなければ、せっかく獲得した「環境先進企業」としての信頼を失いかねません。最悪の場合、認定の失効やリストからの除外といった事態を招くリスクもあります。
認定通知を受け取った企業が、国際基準の信頼性を維持し、その価値を最大限に経営に活かすために、まず優先して取り組むべき「3つのアクション」について詳しく見ていきましょう。
1.【まずは目標公表】期限は6カ月以内。認定ロゴを使用するのがベスト
SBTiから目標が承認された場合、企業は承認日から6カ月以内にその目標を公表しなければなりません。6カ月以内に公表されない場合、再度承認プロセスを経る必要があるため注意が必要です。
認定取得時には、SBTiから「コミュニケーション・ウェルカムパック」が付与され、自社サイトやサステナビリティレポートでのSBTiロゴの使用許可が得られます。認定された削減目標をSBTのロゴとともに自社サイトで公表すれば、脱炭素に積極的に取り組んでいることを対外的にアピールできます。
なお、公表する削減目標は、企業が自由に記述できるわけではありません。SBTiの規定に従って生成された公式な文言を使用しなければなりません。これにより、SBTiの公式サイトであるターゲット・ダッシュボード内に掲載された文言との整合性を確保します。内容に齟齬がないようにしましょう。目標公表の際はガイドラインを確認し、期限内に速やかに掲載しましょう。
2.【認定からがスタート!】毎年の排出量算定と進捗公開の具体的プロセス
SBTiの基準では、認定企業に対し、全社的な温室効果ガス排出量インベントリと、目標に対する進捗状況を毎年公表することを義務付けています。
具体的な公開媒体として以下の4つをあげています。
- アニュアルレポート
- サステナビリティレポート
- 自社ホームページ
- CDPの年次質問書を通じた開示
特に中小企業であっても、Scope1およびScope2の排出量と進捗の報告は必須です。1年目の算定で特定できたホットスポット(排出量の多い活動)に対し、優先順位をつけて削減策を実行しましょう。取り組みを継続的に進めることでSBT目標の達成だけでなく、経営改善にもつなげることができます。
3.【認定失効を防ぐために】5年ごとの目標更新と「再計算」が必要なケース
SBTの認定を長期的に維持するためには、気候科学の進歩に合わせた「目標のアップデート」が必要です。世界的な平均気温の上昇を「1.5℃」に抑えるというパリ協定の目標と自社の削減ロードマップが乖離(かいり)していないか、定期的な照合が求められます。以下の2つのルールを守ることで、認定の失効を防ぎ、企業のサステナビリティを対外的に証明することができます。
ケース1.5年ごとの目標見直し(必須)
企業は、たとえ事業内容に変化がない場合でも、最新の気候科学やSBTi基準との整合性を確保するため、少なくとも5年ごとに目標を見直し、必要に応じて再検証を受ける義務があります。
ケース2.目標の再計算(トリガー発生時)
認定された目標に影響を与える重大な変更が発生した場合には、5年を待たずに目標を再計算・再検証しなければなりません。具体的には、合併・買収(M&A)、分社化、など事業規模への大きな変化です。
また、計算方法やデータの変更などにより、基準年の排出量または目標境界内の排出量が5%以上変動する場合もこれに該当します。また見落としがちな点として、SBTiが定める中小企業の定義(従業員数、売上高など)から外れるような成長を遂げた場合も、通常版SBT(企業版)への移行を含めた再検証が必要になることがあります。この場合、審査プロセスや費用が変わる点にも注意しなければなりません。
SBT目標の達成に向けた具体的な「削減施策」の実行とPDCA
目標を公表し、報告体制を整えたら、次は最も重要な「どうやって排出量を減らすか」という実行をしていきます。SBTは科学的根拠に基づいた目標であるため、場当たり的な取り組みではなく、計画的なPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すことが不可欠です。
以下では特に、中小企業にとってコストパフォーマンスが高く、早期に効果が出やすい施策を中心に解説します。
Scope1・2の削減:省エネと再エネ導入
自社でコントロール可能なScope1とScope2の排出削減は、SBT達成の第一歩です。これらは「光熱費の削減」にも直結する場合が多いため、投資対効果が見えやすいというメリットがあります。削減方法についてより細かく見ていきましょう。
1.徹底した省エネ(エネルギー効率の向上)
照明のLED化は、投資回収期間が短く即効性に優れているため、未実施の拠点があれば最優先の投資項目となります。さらに、一歩踏み込んだ対策として、空調やボイラーなどの老朽化した設備を高効率な最新型へと更新することが挙げられます。これにより、多くのケースで20〜30%もの大幅なエネルギー削減が見込まれるだけでなく、長期的なランニングコストの圧縮という経営面でのメリットも享受できます。
また、こうした大規模な設備投資だけでなく、現場レベルの運用改善によるロス削減も極めて重要です。例えば、コンプレッサーのエア漏れ対策や待機電力の徹底したカットなどは、大きな費用をかけずに実行可能です。こうした日々の地道な改善を積み重ね、省エネ意識を社内文化として定着させることが、SBT目標達成に向けた強固な基盤となります。
2.再生可能エネルギーへの転換(再エネ調達)
省エネ施策によってエネルギー使用量そのものを最小化した後は、どうしても減らしきれない電力の「質」を転換することで、大幅な排出量削減を目指します。
まず、最も即効性があり強力な手段となるのが、再生可能エネルギー由来の電力プランへの切り替えや、再エネ属性を持つ証書(REC)の購入です。これにより、自社で使用する電力に伴うScope2の排出量を、マーケット基準においてゼロとして扱うことが可能になります。
また、中長期的な視点では、自社ビルや工場の屋根を活用した「産業用太陽光発電」の導入も極めて有効です。設置形態は複数あるので、自社に合ったタイプを選ぶとよいでしょう。

これはCO2排出量の削減に直接寄与するだけでなく、昨今の不安定な電力価格高騰に対する強力なリスクヘッジとなり、企業の固定費削減に貢献する戦略的な資産としての側面も持ち合わせています。
Scope3への対応:排出量の「把握」と削減に向けたコミットメント
中小企業版SBTの短期目標において、Scope3(サプライチェーン排出量)の数値目標設定は必須ではありませんが、「Scope3排出量を測定し、削減することへのコミットメント(約束)」が要件とされています。
中小企業であっても、Scope3の排出量を把握し、サプライヤーや顧客と協力して削減に取り組む姿勢を示すことが求められます。ただし、将来的にネットゼロ目標(長期目標)を設定する場合は、Scope3も含めた90%以上の削減が必要となります。
SBT認定を中小企業経営に最大限活かす具体策
SBT認定は、単なる環境活動にとどまらず、企業の競争力を高める強力な「経営戦略」にもなります。国際的な科学的根拠に基づいた目標を持つことは、さまざまなシーンで信頼を得るための強力な「パスポート」になり、以下のような場面で役立ちます。
サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)などの活用
SBT認定取得は、金融機関からの評価向上につながります。多くの地方銀行や大手銀行が、SBT認定企業向けの金利優遇商品(サステナビリティ・リンク・ローンなど)を提供しています。脱炭素経営への取り組みは、資金調達の面でも有利に働きます。
サステナビリティ・リンク・ローンを含む「グリーンファイナンス」は、脱炭素経営において重要な資金調達手法です。
大手取引先との取引継続・新規獲得への優位性
大手企業がサプライヤーに対して排出量削減を求める動きは年々加速しています。SBT認定は、サプライチェーン選定における「信頼の証」となり、既存取引の維持や新規顧客の開拓における強力な武器となります。
認定の有無がサプライヤー選定の決定打となり得るため、既存取引の維持はもちろん、脱炭素を重視する新規顧客の開拓において、競合他社に対する強力な武器となります。
採用力の強化
脱炭素経営は、人材確保にも効果を発揮します。最近の新卒学生や若手人材は、就職先を選ぶ際に企業のサステナビリティへの取り組みを重視する傾向があります。
自社のホームページやサステナビリティレポート内にSBTiロゴとともに削減目標を掲載し、SBT認定企業であることをアピールすれば、「将来性のある企業」「社会的責任を果たす企業」としてのブランドイメージが高まり、採用競争力の強化につながります。
【参考】SBT認定取得までの流れ
中小企業版SBTは、専門部署がなく予算の限られた企業でも取り組みやすいよう、通常版と比較してハードルが下げられています。中小企業向けSBTを取得する際の主な流れは以下のようになっています。
| フロー | 内容 |
|---|---|
| 1.適格性の確認 | 従業員数、売上高、資産などの基準を満たしていることに加えて、金融などの特定のセクターに該当しないことを確認します。 |
| 2.オンライン登録・申請 | 専用のポータルサイトからアカウントを作成し、会社情報を登録します。 |
| 3.目標の選択 | 基準年のGHG排出量を算定し、用意された選択肢から目標を設定します。 |
| 4.申請費用の支払い | 売上高や国によって異なります。2026年1月時点では、売上高に応じたTier制が導入されており、有料(売上高500万ユーロ未満のTier1企業でUSD1,250、それ以上のTier2企業でUSD2,000)になります。 |
| 5.審査 | SBT検証機関による審査(デューデリジェンス)が行われます。 |
さらに詳しく知りたい方のために、以下の記事では認定取得についてより詳しく解説しています。
脱炭素経営の次なる一手!「CDP」への回答で評価を盤石に
SBTで目標を定めた後は、その進捗を世界的なプラットフォームであるCDPで開示することで、さらなる評価を得ることができます。
SBTとの違いと相乗効果
SBTは「科学的根拠に基づいた目標」を設定・認定する制度です。一方、CDPは「企業の環境情報を開示し、スコアリング(格付け)」をする国際NGOです。SBTiは、毎年の進捗報告の手段として「CDPの年次質問書を通じた開示」を推奨しています。SBT認定企業がCDPを通じて情報を開示することで、目標の透明性が担保され、投資家や取引先からの信頼がより盤石なものになります。
中小企業向け質問書(SME版 CDP質問書)への挑戦
CDPには、大企業向けのフルバージョンのほかに、中小企業向けの簡略化された質問書(SME版CDP質問書)も存在します。SBT認定を取得した中小企業であれば、すでに排出量の算定データが揃っているため、そのデータを活用してスムーズに回答することが可能です。これにより、グローバルな環境評価基準であるCDPスコアを取得し、対外的な競争力を高めることができます。
SBT認定後からが本番!毎年の着実な報告と削減努力が、企業価値を確実なものに
SBT認定はゴールではなく、脱炭素経営のスタートです。認定取得直後から「6カ月以内の公表」や「毎年の進捗報告」といったルールを確実に実行し、実際の削減活動(省エネ・再エネ・サプライチェーン連携)を推進していくことが重要です。これらの地道な努力が、金融機関や取引先からの信頼獲得、そして採用力の強化へとつながり、貴社の持続的な企業価値向上を実現します。脱炭素を「コスト」ではなく「成長のチャンス」へと変えて、選ばれる企業を目指しましょう。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。