オフサイトPPAとは?屋根なし再エネ導入の仕組みとメリットや課題など

「自社で再生可能エネルギーを導入したいけれど、設置面積の制約から十分な導入量を確保できない」と悩んでいませんか。そんな課題を解決する手段として注目されているのが「オフサイトPPA」です。これは自社の敷地外に専用の発電所を設置し、そこから電力を調達する仕組みです。
この記事では、オフサイトPPAの仕組みから導入のメリット、他手法との違いまで詳しく解説します。最後まで読めば、自社に最適な再エネ調達方法が判断できるようになるはずです。
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- オフサイトPPAは敷地外の発電所から電力を調達する仕組みで、屋根の面積にかかわらず大規模な導入が可能です。
- フィジカルPPAとバーチャルPPAの2形態があり、企業のニーズや契約の柔軟性に合わせて選択できます。
- 初期投資不要で再エネを導入できる一方で、託送料金などの上乗せコストが発生する点には注意が必要です。
オフサイトPPAとは?仕組みをわかりやすく
オフサイトPPAとは、需要家の敷地から離れた場所に太陽光発電所などの再生可能エネルギー(再エネ)設備を設置し、その電力を長期間購入する契約のことです。
「オフサイト(Off-site)」は「敷地外」を意味し、離れた発電所の電気を送配電網経由で調達する形態です。また、PPA(Power Purchase Agreement)は「電力購入契約」または「電力販売契約」の意味です。
通常、太陽光発電といえば自社の屋根や空き地にパネルを設置する「自家消費型」が一般的です。しかし、敷地内のスペースには限りがあり、十分な電力を確保できない場合もあります。
■「オフサイトPPA」による再エネ調達

オフサイトPPAであれば、遠隔地に設置された発電所から一般の送配電網(電力会社の電線)を通じて電気が届けられます。つまり、屋根の広さや建物の構造に関係なく、必要な分だけ再エネを調達できるのです。
この仕組みは、PPA事業者(発電事業者)が設備の設置費用を負担し、その代わりに使った分の電気代をサービス利用料として支払う仕組みとなっています。
オフサイトPPAの2つの形態
オフサイトPPAには、大きく分けて「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2つの形態があります。
1.フィジカルPPA丨実際の電気と環境価値をセットで受け取る
フィジカルPPAは、遠隔地の発電所で作られた「実際の電気」と、再エネであることを証明する「環境価値」をセットで購入する形態です。
■フィジカルPPAのスキームイメージ

日本でこの契約を行う場合、一般的には小売電気事業者が仲介に入ります。発電所で作られた電気は送配電網を通って自社の拠点へ届けられ、日常の業務でそのまま使われます。
この形態の大きな特徴は、実際に再エネが供給されるため、実質的な温室効果ガスの削減効果が高い点です。ただし、発電所から電気を送るための「託送料金」などのコストが電気代に加算されるため、料金体系は慎重に確認する必要があります。
2.バーチャルPPA丨環境価値だけを取引する柔軟なモデル
バーチャルPPAは、発電設備から生まれる「環境価値」のみを、実際の電気の流れとは切り離して取引する形態です。送電を伴わない「仮想的」な契約であることが最大の特徴といえます。
■バーチャルPPAのスキームイメージ

近年の制度改善により導入のハードルは下がっています。具体的には、固定価格と市場価格の差額を精算する「差金決済」の手法が用いられます。現在の電力契約を維持したまま環境価値を調達できるため、テナントビル入居企業などでも導入しやすい点がメリットです。ただし、市場価格の変動がコストに直結するリスクもあるため、将来の価格予測を含めた慎重な検討が求められます。
フィジカルPPAとバーチャルPPA、2つの形態の違いを表にまとめました。
■フィジカルPPAとバーチャルPPAの形態比較
| フィジカルPPA | バーチャルPPA | |
|---|---|---|
| 電力の取扱い | 電力系統を介して購入者へ供給 | 購入者へ供給せず (市場や他の事業者へ売電) |
| 環境価値の取扱い | 電力とセットで購入者へ移転 | 電力と切り離して購入者へ移転 |
| 同時同量の担保 | 30分や1時間ごとの同時同量を担保する必要がある | 30分や1時間ごとの同時同量を担保する必要はない |
| 取引価格 | 固定価格(一定期間ごとの見直し条項が含まれる場合もある) | 契約価格と市場価格に基づく差金決済 |
| 託送料金の取扱い | 取引価格に追加的な託送料金の支払いが必要 | 取引価格に追加的な託送料の支払いが不要(現行契約の電気料金に含まれる) |
日本の現在の制度では、どちらを選択するかで契約形態や管理の手間が大きく異なります。また、同時同量の管理は一般的に小売電気事業者や発電事業者が担います。
オフサイトPPAのメリット・デメリット
オフサイトPPAは、これまでの自家消費型太陽光発電では解決できなかった課題を突破できる一方で、特有の注意点も存在します。導入を検討する際は、以下の両面を正しく理解しておくことが重要です。
【メリット】屋根の面積にかかわらず大規模な導入ができる
オフサイトPPAの最大のメリットは、発電設備を設置するスペースの有無にかかわらず再エネを導入できる点です。工場の屋根が狭い、あるいはテナントビルに入居しているといった制約がある場合でも、遠隔地の広大な土地を活用することで、大規模なエリアの電力を一気に再エネ化することが可能になります。
また、PPAモデルの共通利点として、発電設備を自社で保有する必要がないことも大きな魅力です。資産として抱えるリスクやメンテナンスの手間を負わずに再エネを導入できる点は、経営上のメリットといえます。
ただし、土地があればどこでも無制限に導入できるわけではありません。系統接続の空き状況や採算性など、実現には数々の条件をクリアする必要があります。導入にあたっては、専門業者と綿密なシミュレーションを行い、慎重に検討を進めることが不可欠です。
【デメリット】上乗せコストの負担・停電時に電気が使えない
オフサイトPPAは、通常の電気料金に比べ単価が割高になる傾向があります。その背景には、発電コストに加え、一般の送配電網を利用するための託送料金、さらに発電量と消費量の過不足を調整するバランシングコストが積み上がる「追加的なコスト構造」があるためです。
また、5〜20年程度という中・長期契約が基本となる点も大きな課題です。長期的な支払能力や事業の継続性が厳しく問われるため、資金的な余力や高い信頼性を持つ大企業でないと、契約を締結しにくいという実情があります。
さらに、敷地外の発電所から送電を受ける仕組み上、停電時に非常用電源として利用することはできません。オンサイト型と異なり、災害時の自立運転機能がなく、BCP対策としての効果が期待できない点は十分な注意が必要です。
オフサイトPPA導入で利用できる補助金
オフサイトPPAは、長期的な電気代の負担を抑えるために補助金の活用が効果的です。国は脱炭素経営を加速させるため、例年「需要家主導型太陽光発電導入促進事業」を継続的に実施しており、強力な支援を行っています。
この事業は、企業が発電事業者と連携して新設する「非FIT・非FIP」の太陽光発電設備に対し、設置費用の一部を補助するものです。売電を目的とせず、自社の再エネ調達のために新しく発電所を作る「追加性」のある取り組みが対象となります。
補助金を活用できれば、PPA事業者が提示する料金プランを低く抑えられる可能性が高まります。公募時期や詳細な要件は年度ごとに更新されるため、検討の際は必ずその時点での最新の公募要領を確認しましょう。
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【参考】オンサイトPPAとオフサイトPPAの違い
オンサイトPPAとは、需要家(企業など)が施設の屋根や屋上などをPPA事業者に貸し出し、そこで発電された電気を需要家が利用するビジネスモデルです。
自社にとってどちらが最適かを見極めるために、2つの手法の違いを比較表でまとめました。
| オンサイトPPA | オフサイトPPA | |
|---|---|---|
| 設置場所 | 自社の屋根・敷地内 | 遠隔地(遊休地など) |
| 送電方法 | 直接配線(送配電網を通らない) | 一般の送配電網を通る |
| 託送料金 | かからない | かかる |
| 導入規模 | 屋根の面積に依存する | 自由に設定可能 |
| 停電時の利用 | 自立運転機能があれば可能 | 自立運転による非常用電源としては活用できない |
| 向いている企業 | 屋根が広く、自社消費がメイン | 屋根が狭い、または大量の再エネが必要 |
導入コストを抑えるには、託送料不要なオンサイトPPAを優先し、不足分をオフサイトで補うのが効率的です。この併用案は、経済性と脱炭素効果の両立を図る上で、多くの企業が検討する現実的な手法の一つといえます。
オフサイトPPA導入事例
実際の導入事例を見ることで、活用する際の具体的なイメージが湧きやすくなります。ここでは、異なる形態で導入した3つの事例を紹介します。
【屋根置きの太陽光発電と併用】セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングスでは、2050年のCO2排出量実質ゼロを目指し、8,800以上の店舗で屋根置き太陽光パネルによる「創エネ」を推進しています。しかし、屋根の面積だけでは全電力を賄えない課題がありました。
そこで同社は、国内初となるオフサイトPPAを導入。遠隔地の専用発電所から送電することで、一部店舗での「再エネ100%」を実現しました。さらに、地域電力と連携した「再エネの地産地消」にも取り組んでいます。オンサイト発電を優先しつつ、不足分をオフサイトで補うことで、効率的な脱炭素化を加速させている先進的な事例といえます。
(参考:環境省『持続可能な地域社会でありつづけるために、セブン&アイグループが挑戦する「再エネの地産地消」。』)
【フィジカルPPA】マツダ株式会社・株式会社東洋シート
マツダ株式会社は、2035年の自社工場および2050年のサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を掲げています。2021年のオンサイト型導入に続き、さらなる再エネ拡大のため「フィジカルPPA」を採用しました。
本事業では、長州産業が発電事業者となり、マツダなどが所有する未活用地へ太陽光設備を設置。発電した電力を中国電力を経由して、マツダと主要サプライヤーの東洋シートへ供給します。単独企業に留まらず、ステークホルダーと連携し地域一体で脱炭素化を推進するこの仕組みは、地産地消と産業界の連携を両立するオフサイトPPAの先進的な共同調達モデルといえます。
(参考:環境省『太陽光発電の導入支援サイト』)
【バーチャルPPA】リコーリース株式会社
リコーリースはサッポロ不動産開発と2025年6月にバーチャルPPAを締結しました。固定価格スキームを採用し、電気と切り離した環境価値のみを取引する仕組みです。
具体的には、リコーリースが物流施設の屋根に「福岡久山太陽光発電所」を開発・保有。そこで創出される環境価値を、サッポロ不動産開発が20年間にわたり調達します。パートナー企業との協業により、自社拠点にパネル設置が難しい企業でも投資リスクを分担しながら大規模な再エネ導入を実現できる、バーチャルPPAの先進的なモデルケースといえます。
(参考:環境省『令和7年度受賞者紹介』)
オフサイトPPAを理解し、自社に最適な再エネ調達を選ぼう
オフサイトPPAは、これまで「場所がない」という理由で再エネ導入を諦めていた企業にとって、非常に有力な選択肢です。
初期投資をかけずに、かつ大規模に環境貢献ができるこの仕組みは、今後SBT(Science Based Targets)などの国際的な環境目標を目指す中小企業にとっても欠かせない存在になるでしょう。実際の検討にあたっては、まずオンサイト導入の可否を含めた自社の屋根の状況を確認し、必要な電力規模を算出します。その上で不足分をオフサイトで補うようにし、利用できる補助金や契約形態の違いを比較することが大切です。
脱炭素経営は、今やコストではなく「未来への投資」です。自社の状況に合わせた最適なプランを選び、持続可能な企業経営の一歩を踏み出しましょう。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。