非FIT電気とは?再生可能エネルギーの新しい選択肢

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「再生可能エネルギーの取り組みをを進めたいけれど、FITや非FIT、FIPの違いがよく分からない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。これまでの日本の再エネは、国の「FIT制度」によって急速に普及してきました。しかし現在は、制度に頼らない自立的な再エネ活用へとシフトが加速しています。本記事では、非FIT電気の定義や成り立ち、導入にあたって企業が直面する課題までを詳しく解説します。
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- 非FIT電気とは、国の固定価格買取制度(FIT)を利用せずに取引される再生可能エネルギーのことです。
- 環境基準への対応や脱炭素ニーズの高まりを受け、非FITや卒FIT電気の活用が広がっています。
- FITとは異なり、売電先確保や設備設計など、戦略に合わせた高度な運用判断が不可欠です。
非FIT電気とは?FIT制度に頼らない新しい再エネ
「非FIT電気」とは、国の「FIT制度(固定価格買取制度)」の枠組みを利用せずに、発電・取引される再生可能エネルギーのこと。「Non-FIT」と表記される場合もあります。
非FIT電気は、国民が負担する再エネ賦課金などの公的支援に依存しません。発電事業者と需要家(企業など)との間の直接的な契約などを通じて流通します。制度の制約を受けないため、より自由な価格設定や契約形態が可能になるという特徴があります。
そもそも「FIT制度」とは?成り立ちと仕組み
非FIT電気の立ち位置を正確に理解するためには、比較対象である「FIT制度」について知っておく必要があります。
FIT制度(Feed-in Tariff)は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間(住宅用なら10年間、事業用なら20年間など)買い取ることを国が約束する制度です。
(参考:資源エネルギー庁『資料・パンフレット FIT・FIP制度関連』、『エネルギー基本計画について 第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)』『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』)
【2012年開始】FIT制度が日本の再エネ普及を加速
FIT制度は発電コストが高かった太陽光や風力などの再生可能エネルギーを普及させることを目的として、2012年7月に開始されました。
国が長期間の買い取りを保証した結果、発電事業者は投資回収の見通しが立てやすくなり、日本中で太陽光発電設備などが急増。FIT制度開始前の2010年度にはわずか9%だった再生可能エネルギーの割合は、2023年度(速報値)には22.9%にまで拡大しています。
特に太陽光発電は、2023年度時点で電源全体の9.8%を占めるなど、日本の主要な電源の一つとして大きな成長を遂げました。

【再エネ賦課金】電気代とFITの関係
再エネ普及の立役者となったFIT制度は、発電事業者にとって非常にメリットが大きい仕組みです。一見すると、再エネを増やすための理想的な制度に思えるかもしれません。しかし、その買い取り費用を誰が負担しているのかという点に注目すると、別の側面が見えてきます。
実は、FIT制度による電気の買い取り費用は、発電事業者が負担しているわけではありません。私たち消費者が毎月支払っている電気料金に含まれる「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」によって賄われています。

■再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)

つまり、日本中の全世帯や企業が少しずつ費用を出し合うことで、再エネの普及を支えているという仕組みです。しかし、再エネの導入量が増えるにつれてこの賦課金の総額も増大しており、電気料金の上昇を抑えるために「制度に頼りすぎない再エネへの移行」が求められるようになっています。
【参考】FIP制度
FIT制度から完全に自立した「非FIT」へ移行するまでの中間ステップとして、2022年4月から「FIP制度(Feed-in Premium)」が導入されました。
FIP制度は、市場価格で売電した価格に対し、一定のプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みです。

市場価格と連動させることで、発電事業者に「電気が足りない時間帯に積極的に発電する」といった市場意識を促す狙いがあります。
非FIT電気や卒FIT電気が増えている背景
なぜ今、あえて補助金的な仕組みであるFIT制度を使わない電気が増えているのでしょうか。そこには制度の期限切れや市場の変化が関係しています。
(参考:資源エネルギー庁『住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする?』、環境省『太陽光発電の導入支援サイト』)
固定価格買取制度の適用期間が終了(卒FIT)
要因の一つとして挙げられるのが、FIT制度の買取期間が順次終了していく「卒FIT」電源の増加です。
2009年11月に始まった前身の制度(余剰電力買取制度)を含め、10年間の買取期間を終えた住宅用太陽光発電が続々と出てきています。また、今後2032年以降には20年間の買取期間を終えた大規模な事業用太陽光発電所も続々と卒FITを迎えます。これらはFIT制度の枠外となるため、新たな売電先として市場に供給され始めています。
売電・調達の選択肢として市場に参入
もう一つの大きな要因は、企業が発電事業者から直接電気を買い取る「コーポレートPPA」などの新しい調達手法が登場したことです。
環境価値を重視する企業にとって、再エネ賦課金によって支えられているFIT電気を調達することよりも、自らの投資や契約によって市場を介さず再エネを確保する「非FIT」の方が、経営戦略上のメリットが大きいと判断されるケースが増えています。そのため、売電側も「FIT一択」だった時代から、非FIT電気として市場に参入する動きを強めています。
【事例紹介】非FIT・卒FIT電気導入企業
実際に非FITや卒FIT電気を導入し、脱炭素経営を加速させている企業の事例を見てみましょう。
なお、ここで紹介する3社はいずれも、事業運営に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的イニシアチブ「RE100」に加盟しています。
これらの事例は、RE100のような高い目標を掲げる企業が、自らの戦略に合わせて「非FIT」や「卒FIT」という新しい選択肢を使い始めている現状を示しています。
(参考:環境省『令和2年度サステナビリティ・リンク・ローン等モデル創出事業に係るモデル事例等のガイドライン適合性確認結果について』、グリーン・バリューチェーン プラットフォーム『脱炭素経営に向けた取組の広がり』、循環経済パートナーシップ『電気自動車のバッテリーや高性能太陽光パネル、「卒FIT」由来の電力を活用 “再エネ100%”の店舗運営に関する実証実験を開始』)
ヒューリック株式会社
不動産賃貸事業を営むヒューリック株式会社は、2020年から非FITによる自社保有の太陽光発電設備の開発に着手しました。2021年から2022年にかけて自社ビルへの電力供給を開始しており、FIT制度に頼らない再エネ導入の先駆けとなっています。自社で発電所を保有・運営することで、長期的に安定したクリーンエネルギーを確保しているのが特徴です。
第一生命保険株式会社
第一生命保険株式会社では、発電事業者から直接電力を調達する「オフサイトコーポレートPPA」を活用しています。国内22か所の非FIT発電所から電気を調達する契約を締結しており、発電が不足する時間帯は小売電気事業者からの供給で補完する柔軟な運用体制を構築しました。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、住宅用太陽光発電の買取期間が終了した「卒FIT」由来の電力を有効活用する取り組みを推進しています。これは、電力会社と連携して一般家庭の余剰電力を買い取り、自社グループの店舗運営に充てる仕組みです。既存の資源を無駄にせず、地域社会の中でエネルギーを循環させる「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現に向けた先進的なモデルケースと言えるでしょう。
非FIT電気の現状
期待が高まる非FIT電気ですが、現在はまだ普及の過渡期にあり、実務上の課題も少なくありません。導入や運用を検討する際は、以下のポイントを正しく理解しておく必要があります。
(参考:経済産業省『第59回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会』、環境省『近畿管内で非FIT余剰電力の買取を実施している事業者について』『PPA等の第三者所有による太陽光発電設備導入について』、資源エネルギー庁『2019年、実績が見えてきた電力分野のデジタル化②~バーチャルパワープラント編』『VPP・DRとは』)
制度・法整備が発展途上
非FIT電気の扱いについては、国の方針や法整備が完全には固まりきっていない部分があります。例えば、発電した電気がどのような「環境価値」を持つのか、それをどのように証明し、報告書(省エネ法や温対法など)に記載すべきかといったルールが現在進行形で議論されています。
制度の変更によって、当初見込んでいたコストメリットや環境価値の評価が得られなくなるリスクもゼロではないため、常に最新の動向を注視する必要があります。
補助金活用の可否
設備導入時に活用できる補助金は、企業にとって非常に心強い味方です。しかし、これまでの補助金メニューは「FIT制度の認定を受けること」を条件としているものが多くありました。
近年は、自家消費型(売電しないタイプ)や非FITを前提とした補助金も増えていますが、選ぶ設備や運用形態によっては従来の補助金が使えないケースもあります。非FITの導入を検討する際は、必ず各補助金の公募要件を確認し、自社の計画が合致しているか精査しなければなりません。
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売電ハードル
FIT制度の最大のメリットは、「国が決めた価格で電力会社が自動的に買い取る」という事業予見性の高さにありました。これに対し、非FIT電気の場合は「自分で買い手を見つける」という実務的負荷が生じます。特定の需要家や小売電気事業者と直接交渉し、価格や期間などの条件を盛り込んだ契約を締結しなければなりません。
また、コーポレートPPA(オンサイトPPAなど)を活用する場合、実務上の注意点となるのが「余剰電力の扱い」です。PPAモデルでは、施設で使いきれなかった電気を外部へ売電することは、原則として認められていません。これは送電網への逆潮流(自家発電などで余った電力を、電力会社の電線側へ戻すように流すこと)を防ぐ技術的な制約や、PPA事業者が発電設備を所有し、需要家が使った分だけの料金を支払うというビジネスモデル上の特性が関係しています。
このように、非FIT電気は「電気が余らないよう自社で使い切る」か「自力で売電先を開拓する」か、企業の置かれた状況によって判断が分かれます。FIT時代のような一律の売電モデルではなく、それぞれの脱炭素経営戦略に照らし合わせて、どちらが最適な運用となるかを選択していくことが重要です。
非FIT電気の今後の動きに注目しよう
制度やルールが完全には固まりきっていない現状だからこそ、早い段階で正確な情報を集め、自社にとって最適なエネルギー戦略を練ることが重要です。非FIT電気は単なる一時的なトレンドではなく、今後の再エネ導入や売電計画において、決して無視できない有力な選択肢となります。
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