【わかりやすく】RE100とは?参加のメリットや日本企業の取り組み状況

- RE100は、事業で使うエネルギーを100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業が集まった世界的な連合です。
- 参加企業は2050年までに100%再エネの目標を達成することが求められます。
- 中小企業を対象とした「再エネ100宣言 RE Action」も、RE100と同じ目標を掲げています。
RE100とは、事業で使うエネルギーを、100%再生可能エネルギー(再エネ)による電力で賄うことを目指している企業連合です。
今回の記事は、RE100への参加を検討している方に向けて、RE100の対象やメリット、日本企業の参加状況をわかりやすく解説します。中小企業を対象とした「再エネ100宣言 RE Action」についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
RE100とは?
RE100は、気候変動に対する対策に取り組む国際的な組織の一つです。RE100の概要を紹介します。
目標は再エネ100%で事業活動をすること
RE100とはどのようなものかについて紹介します。

■RE100の概要
意味 | 事業で使うエネルギーを100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業連合 |
名前の由来 | 「RE」は、Renewable Energy(意味:再生可能エネルギー)の頭文字から。「100」は100%に由来 |
結成 | 2014年 |
運営機関 | The Climate Group(日本窓口:JCLP) |
RE100の読み方は「アール・イー・ひゃく」。再エネ電力への切り替えに積極的な企業が結集した世界的な連合です。目標として、事業で使うエネルギーを再エネ電力へと移行し、100%再エネ電力で賄うことを掲げています。
多くの企業が結集する背景には、政府や投資家に対してエネルギー移行を促進するように働きかけたい、といった意図もあります。
RE100の対象となる企業
RE100の対象となる企業は、以下のいずれか1つ以上に該当する「影響力のある」企業です。
RE100の対象企業
・グローバルまたは国内で認知度、信頼度が高い
・主要な多国籍企業に位置づけられる(フォーチュン1000※に該当、またはそれに相当)
・消費電力量が50GWh以上ある(日本企業の場合)
・RE100の目的に寄与する、何らかの特徴と影響力を有する
※フォーチュン1000=米ビジネス誌Fortuneによる、収益によってランク付けされた企業リスト
RE100は、基本的には親会社、子会社を含めたグループ全体で参加することが条件です。消費電力量については、世界基準では100GWh以上を対象としていますが、日本企業は特例として緩和されています。
上記の対象とならない場合は、同じく再エネ100%の利用を目指す「再エネ100宣言 RE Action」という日本独自の取り組みに参加することが可能です。詳しくは後で紹介します。
なお、発電事業者などは対象外となっており、再エネ設備メーカーは別途条件が規定されています。
RE100の参加条件
RE100には、以下のような参加条件もあります。
RE100の参加条件
・「日本の再エネ普及目標の向上」と「企業が直接再エネを利用できる透明性ある市場の整備」に関する、責任ある政策関与と公的な要請を積極的に行うことへの合意
・再エネ100%化の目標を達成期限付きで設定し、公表すること(2050年が最終期限)
・所定のフォーマットで、毎年、指定項目について進捗状況を報告すること
RE100に参加するには、目標達成の期限を2050年までに設定することが求められます。また、中間目標を設けることを推奨しており、2030年で60%、2040年で90%達成する目標設定が参考として示されています。
目標未達成の場合、ペナルティはありませんが、企業イメージへの悪影響は避けられないでしょう。事前にロードマップを策定し、期限内に再エネ100%への切り替えが実現できるかどうかを検討しておくことが重要です。
企業がRE100に参加するメリット
企業にとって、RE100に参加するメリットは主に2つあります。
メリット
・企業のイメージアップ
・投資家からの評価
環境に関する代表的なイニシアティブの一つであるRE100に参加すれば、環境問題に積極的に取り組む企業であることを周囲にPRできます。企業のイメージアップにつながるほか、「ESG投資」を呼び込むことにもつながるでしょう。RE100は、世界の投資家が注目しているイニシアティブでもあります。
「ESG投資」とは?
ESG投資とは、投資先の企業を選ぶ際に、環境や社会に対して配慮し、透明性の高い経営を行っていることを重視するものです。長い目で見たときに、「環境問題などに積極的に取り組み、改善していく企業こそが成長していく」という考えに基づいており、近年の投資のトレンドとなりつつあります。
ESG投資の「ESG」は、キーワードとなるEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字からとられています。
【一覧】RE100参加企業(2024年3月時点)
「加盟企業はどのくらい?」と気になっている方もいるかもしれません。RE100には世界で428社の企業が参加しており、このうち日本企業は86社です(2024年3月時点)。
■RE100参加企業(業種内五十音順)
建設業 | 旭化成ホームズ 安藤・間 インフロニア・ホールディングス 熊谷組 住友林業 積水ハウス 大和ハウス工業 東急建設 戸田建設 西松建設 プライムライフテクノロジーズ LIXILグループ |
食料品 | アサヒグループホールディングス 味の素 キリンホールディングス 日清食品ホールディングス 明治ホールディングス |
化学 | 花王 資生堂 積水化学工業 富士フイルムホールディングス ユニ・チャーム |
医薬品 | エーザイ 大塚ホールディングス 小野薬品工業 第一三共 |
ゴム製品 | 住友ゴム工業 |
ガラス・土石製品 | TOTO 日本ガイシ |
非鉄金属 | フジクラ |
金属製品 | ノーリツ |
電気機器 | アドバンテスト アルプスアルパイン カシオ計算機 コニカミノルタ セイコーエプソン ソニー ダイヤモンドエレクトリックホールディングス TDK 日本電気 パナソニック 浜松ホトニクス 富士通 村田製作所 リコー ローム |
精密機器 | 島津製作所 ニコン HOYA |
機械 | アマダ |
その他製品 | アシックス オカムラ |
陸運業 | 東急 |
情報・通信業 | KDDI ソフトバンク 電通グループ 野村総合研究所 BIPROGY LINEヤフー |
小売業 | アスクル イオン Jフロントリテイリング 生活協同組合コープさっぽろ セブン&アイ・ホールディングス 髙島屋 丸井グループ ワタミ |
銀行業 | 城南信用金庫 |
金融・保険業 | 第一生命保険 T&Dホールディングス |
その他金融 | アセットマネジメントOne 芙蓉総合リース |
不動産業 | いちご ジャパンリアルエステイト投資法人 大東建託 ダイビル 東急不動産 東京建物 野村不動産ホールディングス ヒューリック 三井不動産 三菱地所 森ビル |
サービス業 | エンビプロ・ホールディングス セコム 楽天 |
※名称、業種は環境省『RE100について』を参照
RE100に参加している日本企業を業界別に見ると、電気機器、建設業の企業が多いことがわかります。そのほか、金融、IT、通信などのサービス業も参加しており、取り組みが幅広い業界に広がっているといえるでしょう。
再エネの調達方法は?証書の使用も可
RE100における再エネ電力とは、以下の電源によって発電されるものを指します。
- 太陽光(熱)
- 風力
- 持続可能な水力
- 持続可能なバイオマス(バイオガスも含む)
- 地熱
RE100で認められている、再エネ電力の調達方法は主に以下のようなものがあります。
自家発電 | ・企業が保有する発電設備による発電 |
購入 | ・再エネ発電事業者から直接購入する(PPAなど) ・電力小売業者から購入する(再エネ電力メニューなど) ・グリーン電力証書、非化石証書※、再エネ電力由来J-クレジットを購入する ※非化石証書の場合、トラッキング情報(発電所の位置情報など)の付与が必要 |
グリーン電力証書や非化石証書は、発電による電力と切り離して「環境価値」のみを証書化したものです。化石由来の電力を使用していても、再エネ由来の証書を購入すれば、制度上は再エネ電力を使用したと見なされます。
J-クレジットは、国が運営するカーボン・クレジットの一つ。CO2排出削減量からクレジットが創出され、企業間で売買できる制度です。自社で減らしきれなかったCO2排出分を、他者から購入したJ-クレジットなどで埋め合わせることを「カーボン・オフセット」といいます。
クレジットを使用してカーボン・オフセットしたい場合は、RE100における使用条件を確認しておきましょう。
RE100に参加している日本企業の取り組み
RE100に参加している日本企業は、どのように再エネ調達や環境対策を進めているのでしょうか。3社の取り組みを紹介します。
参考:環境省『RE100について』
城南信用金庫
取り組み
再エネ由来の電力メニューへの切り替え、カーボン・オフセットなど
国内金融機関で最初にRE100への参加を果たし、日本企業として初めて100%達成したのが、城南信用金庫です。達成目標年を2050年としていましたが、2019年に達成しました。
取り組みとして、本店・支店など自社が所有している物件の電気を、再生可能エネルギー(バイオマス発電)由来の電力に切換える施策を実施。また、J-クレジットを活用して、カーボン・オフセットも行っています。
大和ハウスグループ
取り組み
太陽光発電、風力発電、水力発電の導入
住宅や商業建築などを手掛ける大和ハウスグループでは、長期ビジョンのもと、環境負荷の削減に力を入れています。太陽光、風力、水力といった再エネ電力を導入しているほか、省エネ対策の徹底、建物のZEB化など、目標達成に向けてさまざまな側面から取り組んでいます。
ワタミ株式会社
取り組み
風力発電、太陽光発電の導入
外食事業や宅食事業などを手掛けるワタミ株式会社。再生可能エネルギー事業にも取り組んでおり、風力発電設備の稼働のほか、自社工場の屋根で太陽光発電も行っています。地域における再エネ電力の活用を普及させるため、地域電力会社を2社設立し、自治体や他の企業と連携を図りながら取り組んでいます。
RE100で重要となる再エネ調達。日本企業の抱える課題とは?
再エネ調達の課題
・再エネ電力メニューの料金が割高
・多様な再エネ調達方法の確保
再エネ調達手段の中でも手軽な方法が、電力会社のメニューを再エネ由来のものに切り替える方法でしょう。ただし、日本では化石由来の電力と比べて、再エネ由来の電力は割高です。電力メニュー切り替えによるコスト増を、どう経営に組み込むかが課題といえます。
日本企業の中には、自家発電を行わずに「グリーン電力証書」「J-クレジット」などの購入によって、再エネ電力を調達している企業も見られます。しかし、今後、再エネの需要拡大が見込まれるため、社会全体で供給が追いつかずに需要とのバランスがとれなくなる可能性もあるでしょう。
再エネ調達の安定化に向けて「再生可能エネルギーによる自家発電にも取り組む」「発電者との直接契約によって購入する」など、中長期を視野に入れた計画も検討が必要です。
中小企業を対象とした「再エネ100宣言 RE Action」
RE100は主に大企業を対象にしていますが、中小企業でも参加できるのが「再エネ100宣言 RE Action」です。自治体や教育機関など388団体が参加しており、再エネ100%を目標に活動しています(2024年12月時点)。
「再エネ100宣言 RE Action」とは
「再エネ100宣言 RE Action」は、2024年3月、一般社団法人再エネ100宣言 RE Action協議会によって設立されました。日本国内の企業のほか、自治体や教育機関、医療機関などの団体が参加しています。
「再エネ100宣言 RE Action」の参加要件
「再エネ100宣言 RE Action」の参加要件は、以下になります。
参加要件
・遅くとも2050年までに使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表すること
・再エネ推進に関する政策エンゲージメントを実施すること
・消費電力量、再エネ率などの進捗を毎年報告すること
RE100と同様に、「2050年までに100%再エネに移行する」という目標を掲げています。環境配慮のPRにもつながるため、自社の取り組みを強調する手段として参加を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:一般社団法人再エネ100宣言 RE Action協議会『再エネ100宣言 RE Actionとは』
再エネの導入計画とともに、「RE100」や「再エネ100宣言 RE Action」への参加も検討しよう
再エネ電力への切り替えに取り組む企業が結集したRE100。中小企業の場合は、RE100と同じ目標達成を目指す、「再エネ100宣言 RE Action」に参加することで、自社の姿勢を対外的に示せるでしょう。再エネ電力の調達方法では、短期・中長期計画を組み合わせながら、安定的に電力を確保する手段を考えておくことも必要です。自社の再エネの導入計画とともに、RE100や「再エネ100宣言 RE Action」への参加も検討してみてはいかがでしょうか。