グリーン水素とは?作り方やメリット・デメリット、社会実装事例などを解説

グリーン水素とは、再エネを利用して製造される、CO2を排出しないクリーンエネルギーのことです。脱炭素経営を目指す中で、その基本や自社への影響が分からずお悩みではありませんか。グリーン水素の導入は、企業の脱炭素化を強力に推進し、持続可能な競争力を築く鍵となります。本記事では、グリーン水素の仕組みや導入メリット、社会実装に向けた課題をわかりやすく解説します。
これを読めば、グリーン水素への理解が深まり、社内での取り組みが進めやすくなるでしょう。基礎知識や最新動向を押さえることで、自社の競争力を高める具体的な活用法が見えてきます。
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- グリーン水素は、再生可能エネルギーで製造するCO2排出ゼロの水素で、脱炭素や企業価値向上への貢献が期待される。
- 製造コストやインフラ整備の課題がある一方で、国内外で社会実装に向けた取り組みが加速している。
- 水素エネルギーの本格普及を待つだけでなく、足元のCO2排出量を算定・削減することが重要である。
グリーン水素とは?定義や何をもとに作られるか簡単に解説
グリーン水素とは、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを使って発電した電力を用い、水を電気分解(電解)して作られる水素のことです。製造時にCO2をほとんど排出しないことから、究極のクリーンエネルギーとも呼ばれ、脱炭素社会の実現に向けて大きな期待が寄せられています。
これまでの水素製造では、石炭や天然ガスといった化石燃料をベースとしたものが主流でした。しかし、この方法では水素を作る過程でCO2が排出され、地球温暖化の原因のひとつとなってしまうという課題がありました。
グリーン水素は、化石燃料に頼らず、水と再生可能エネルギーという持続可能な資源をもとに作られるため、気候変動対策の切り札として位置づけられているのです。
そもそも水素とは?次世代エネルギー「水素」の基本
水素は地球上で最も軽く、宇宙で最も多く存在する元素です。酸素と結びついて発電したり、燃やして熱エネルギーを出したりする際にCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガス(GHG)を一切排出せず、排出されるのは「水だけ」という特徴を持っています。
このため、水素は環境負荷の少ない次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。特に、電化が難しい鉄鋼業や化学工業などの産業分野や、大型トラック・船舶・航空機などの輸送分野では、化石燃料に代わるエネルギーとして期待されています。
水素が注目される背景
水素がここまで注目される背景には、世界中で急務となっている「カーボンニュートラル(脱炭素社会)」の実現に向けた動きがあります。地球温暖化を防ぐため、世界各国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標を掲げています。
この目標を達成するためには、産業・運輸・家庭などあらゆる分野で化石燃料への依存から脱却する必要があります。一方で、高温の熱を必要とする産業プロセスや長距離輸送など、電気だけでは代替が難しい分野も少なくありません。
そこで、電気に代わる、あるいは電気を補完する強力なエネルギー源として、高密度な熱エネルギーを生み出し、かつCO2を出さない「水素エネルギー」が、化石燃料に代わる切り札として大きな期待を集めているのです。
水素の作り方と種類(グレー・ブルー・グリーン)
水素は利用時にはCO2を出しませんが、製造プロセスによって環境への負荷が大きく異なります。そのため、製造時に発生するCO2の排出量や処理方法に応じて、主に以下の3つの種類(カラーコード)に分類されています。
グレー水素は、石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃焼させてガスにし、そこから水素を取り出す「改質」という方法で作られます。現在最も普及している安価な製造方法ですが、製造過程で大量のCO2を大気中に排出してしまうため、環境負荷が高いという課題があります。
ブルー水素は化石燃料を原料としますが、製造時に出るCO2を回収して地中に閉じ込めたり、利用したりする、CCSやCCUS技術を活用することで、CO2排出量を抑えた水素です。
グリーン水素は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を使い、水を電気分解(電解)して作られます。製造過程でもCO2を一切排出しないため、真の意味でのクリーンな水素と呼ばれています。

グリーン水素は、その作り方からグリーンエネルギーとして扱われることもあります。
ブルー水素で活用されるCCSやCCUS技術については、以下の記事が参考になります。
グリーン水素のメリット
グリーン水素の導入には、環境保全だけでなく、国のエネルギー安全保障や企業の競争力強化など、多岐にわたるメリットがあります。ここでは主な3つのメリットを解説します。
1.CO2排出ゼロ│製造から利用までの温室効果ガス排出ゼロ
グリーン水素の最も大きな特徴かつメリットは、製造から使用までトータルでCO2を排出しない「カーボンフリー」なエネルギーであることです。化石燃料由来の電気を使わず、自然の力(太陽光や風力など)で発電した電気のみを使って水を分解するため、ライフサイクル全体を通じて環境への負荷がかかりません。
水素を燃料電池車(FCV)の動力源として使ったり、工場での熱源として利用したりする際にも、排出されるのは水だけです。気候変動対策が待ったなしの状況において、CO2排出ゼロを実現できるグリーン水素は、持続可能な社会を築くための最も理想的なエネルギーといえます。
2.エネルギーの地産地消│海外資源に依存しない国内での電力創出
日本の一次エネルギー供給は、現在その90%以上を海外から輸入する化石燃料に頼っています。特定の地域への依存度が高いため、国際情勢の変動によって価格が高騰したり、供給が不安定になったりするリスク(エネルギー安全保障上の課題)を常に抱えています。
しかし、グリーン水素は水と再生可能エネルギーがあればどこでも作ることができます。太陽光、風力、地熱などの未利用・余剰の再生可能エネルギーを活用してグリーン水素を製造できれば、エネルギーの「地産地消」が実現します。これにより、エネルギー自給率が飛躍的に向上し、海外資源への過度な依存から脱却できるという大きなメリットがあります。
3.企業価値向上│脱炭素への取り組み評価による競争力の強化
昨今のビジネス環境において、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮したESG投資が主流となっています。企業がグリーン水素の導入を含めた積極的な脱炭素への取り組みを行うことは、単なる社会貢献にとどまらず、自社の企業価値を直接的に向上させる重要な経営戦略となります。
環境問題に真摯に取り組む企業は、投資家からの資金調達がしやすくなるだけでなく、環境意識の高い消費者からの支持を獲得し、取引先からの信頼も厚くなります。結果として、企業のブランド力が高まり、持続的な競争力の強化につながるのです。
以下の記事では脱炭素と企業価値の関係について、さらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
グリーン水素のデメリットと今後の課題
理想的なエネルギーに見えるグリーン水素ですが、本格的な普及に向けてはコストやインフラ整備、そして技術革新の面でまだ多くのハードルが存在します。ここでは、現状抱えている3つの主要な課題を詳しく解説します。
1.経済的負担│製造プロセスや専用設備への多大な資金投入
グリーン水素の普及における最大の障壁は、その高い製造コストです。グリーン水素を作るためには大量の電力が必要ですが、日本国内では再生可能エネルギーの発電コストがまだ比較的高い状態にあります。加えて、水を電気分解するための「水電解装置」の設備費用自体も非常に高額です。
これらの要因が重なり、現時点では化石燃料から作られるグレー水素や従来の化石燃料に比べて、グリーン水素の価格は非常に割高になっています。企業が自社のエネルギーをグリーン水素に転換するためには、初期設備や燃料代に多大な資金投入が必要となり、事業の採算性を合わせることが難しいのが実情です。
2.供給網の未発達│安全な貯蔵・運搬インフラの整備不足
水素は常温・常圧では気体で体積が大きいため、そのままでは効率的に貯蔵・運搬できません。そのため、約マイナス253℃で液化したり、高圧で圧縮したり、水素を運搬しやすい物質に変換したりする技術が必要になります。
さらに、水素を全国へ安定供給するには、専用のパイプラインや運搬船、水素ステーションなどのインフラ整備も欠かせません。安全性を担保した大規模なインフラ整備には、莫大な時間と初期費用がかかるという大きな課題が横たわっています。
3.大量生産の難しさ│産業規模の高効率化に向けた技術革新の必要性
社会全体で水素エネルギーを普及させるためには、一度に大量のグリーン水素を安定的かつ高効率に製造できる体制が必要です。しかし現状の水電解装置は、一部で大型化の兆しはあるものの、工場や発電所といった産業レベルの莫大なエネルギー需要を単独で賄うほどの規模には達していません。
再生可能エネルギーは天候によって発電量が変動することが多いため、それに合わせて水電解装置を柔軟かつ効率的に稼働させるエネルギーマネジメントの技術もさらなる高度化が求められます。大量生産と高効率化を実現するためには、耐久性の高い部材の開発を含め、まだ多くの技術革新が必要とされています。
グリーン水素を巡る国内外の動向と社会実装事例
グリーン水素の社会実装に向けた国内外の動向として、国を挙げた技術開発プロジェクトや、次世代エネルギーパークでの活用事例を紹介します。
(参考:経済産業省『第29回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ』、資源エネルギー庁『次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?』)
1.国内外の技術開発│国家プロジェクト主導による製造コストの削減
福島県浪江町にある「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」では、世界有数規模の水電解装置を備え、再生可能エネルギーを活用した大規模な水素製造の実証実験が行われています。国を挙げて、水電解装置の大型化や優れた部材の実装を進めることで、製造コストを現在の最大6分の1程度まで大幅に低減することを目指しており、実用化に向けた技術の開発を進めています。
2.地域社会への実装│万博や次世代エネルギーパークでのグリーン水素活用
全国の自治体や「大阪・関西万博」などの場で、一般の人が水素エネルギーに触れられる機会が増えており、社会実装が着実に始まっています。
2025年に開催された大阪・関西万博では、未来のエネルギーとしての水素の可能性を発信するパビリオンやイベントが企画されました。国内の自動車メーカーが開発した水素自動車(燃料電池車)の展示や、水素燃料電池を搭載し長時間飛行が可能なドローンなど、私たちのくらしや産業を支えるインフラとして、グリーン水素が実際に活躍する姿が披露されました。
また、地域社会のレベルでも、グリーン水素の活用は着実に進み始めています。青森県六ヶ所村には、風力発電施設や太陽光発電施設に加え、原子燃料サイクル関連施設や核融合エネルギー研究センターなど、さまざまなエネルギー関連施設があります。こうした施設を見学・体験できる「次世代エネルギーパーク」では、さまざまなエネルギーの仕組みや役割を学びながら、エネルギーの重要性への理解を深めることができます。
このように、資源エネルギー庁が推進する「次世代エネルギーパーク」構想のもと、全国各地の自治体で、再生可能エネルギーや水素エネルギーの導入を図るとともに、その仕組みを市民が楽しく学べる場の整備が進められています。私たちの暮らしや産業を支える次世代インフラとして、グリーン水素の活用を身近に感じられる機会が、地域社会の中で少しずつ広がってきています。
水素社会の到来に向けて、企業が今取り組むべきこと
グリーン水素は、脱炭素社会の実現を支える重要なエネルギーとして期待されています。しかし、製造コストや供給インフラなどの課題があり、あらゆる企業が活用できるようになるまでには、なお時間がかかる見込みです。一方で、サプライチェーン全体での脱炭素化を求める動きはすでに加速しており、企業には将来の技術普及を待つだけでなく、今できる方法で温室効果ガス排出量の削減に取り組む姿勢が求められています。
エネルギー転換までの「移行期」をどう生き抜くか
前述のデメリットと課題でも触れた通り、グリーン水素が社会インフラとして本格的に普及するまでには、まだ多くの時間がかかります。サプライチェーン全体での温室効果ガス削減が求められる現在、「水素社会の到来を待つ」という姿勢のままでは、ビジネスの取引要件から外れてしまうリスクがあります。
だからこそ、未来の理想的なインフラを待つだけでなく、「今ある技術・手法」を駆使して、自社のCO2排出量を削減する取り組みを急ぎ始めることが不可欠となっているのです。
今すぐできる確実な脱炭素アクション「SBT認定の取得」
企業が今すぐ取り組める確実な脱炭素アクションの第一歩が、「自社の温室効果ガス排出量の現状を正確に把握し、削減目標を立てること」です。そのための強力なツールとなるのが、「SBT(Science Based Targets)認定」の取得です。
SBT認定とは、パリ協定の目標(世界の気温上昇を1.5℃に抑える)に整合した、科学的根拠に基づく企業の温室効果ガス削減目標のことです。この認定を取得することで、自社が本気で気候変動対策に取り組んでいることを国内外のステークホルダーに客観的に証明でき、企業価値の向上や新規顧客の獲得に直結します。
「何から始めればいいのかわからない」「自社だけで排出量の算定や目標設定、申請まで進められるか不安」という企業は少なくありません。そのような場合は、専門家によるSBT取得支援サービスを活用することで、スムーズに取り組みを進められます。
「SBT認定とは何か」「取得までの流れ」「取得するメリット」を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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グリーン水素の動向に注目し、今すぐできる脱炭素経営を推進しよう
グリーン水素は、CO2を排出せずに、エネルギーの地産地消を実現する次世代エネルギーです。製造コストの低減やインフラ整備に向けた国家レベルの技術開発が進んでおり、私たちの社会に広く普及する未来は確実に近づいています。
しかし、その本格的な恩恵をすべての企業が受けられるようになるまでには、まだ時間がかかります。脱炭素化の波が急速に社会を覆う中、企業に求められているのは「未来の技術革新に期待しつつも、今できるアクションを先送りしないこと」です。
グリーン水素の最新動向には常にアンテナを張りつつ、まずは自社の足元を見つめ直し、SBT認定の取得や日々の省エネ活動など、今すぐできる確実な脱炭素経営を推進していきましょう。それが、激動のエネルギー移行期を生き抜き、持続的な企業価値の向上を実現するための最善の道となるはずです。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。