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日本にとって一番良い発電方法とは?環境と発電効率の視点から検証

目次
記事の要点
  • 日本にとって一番良い発電方法を考える際の視点として、「環境への優しさ」と「発電効率の良さ」をピックアップ。
  • 「環境への優しさ」で考えると、日本にとって良いのは、太陽光発電や水力発電、風力発電といった再生可能エネルギー発電です。「発電効率」は、水力発電が良いといえます。
  • 各発電方法に利点も課題もあるため、「どれが一番良い発電方法である」と一概にはいえません。さまざまな発電方法を組み合わせることが大切です。

企業としてエネルギー問題の解決に取り組む中で、「日本にとって一番良い発電方法はどれなのかを知りたい」という方もいるでしょう。それを知るためにも、まずは主な発電方法の種類を理解することが大切です。

この記事では、「環境への優しさ」と「発電効率の良さ」という2つの視点から、日本にとって一番望ましい発電方法は何かを検証します。これを読めば、「どの発電方法が環境に優しいか/発電効率が良いか」を理解できるとともに、さまざまな発電方法を組み合わせることの重要性を認識できるでしょう。自社のエネルギー戦略の参考にご覧ください。

【一覧表】主な発電方法の種類と発電割合

「日本にとって一番良い発電方法はどれなのか」を考える前に、まずは主な発電方法の種類を理解しましょう。

発電方法は、「火力発電」「原子力」「再生可能エネルギー発電」に大別されます。再生可能エネルギー発電の主なものとしては、「太陽光発電」「水力発電」「風力発電」「バイオマス発電」「地熱発電」があります。

主な発電方法の種類と発電の仕組みを、表にまとめました。

発電方法発電の仕組み
火力発電化石燃料(石炭・石油・天然ガスの総称)を燃やすことで生じる熱エネルギーを使って水を沸かし、蒸気の力でタービンを回転させることで発電する
原子力発電ウランの核分裂によって生じる熱エネルギーを使って水を沸かし、蒸気の力でタービンを回転させることで発電する
太陽光発電シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池により直接電気に変換する
水力発電高い所に貯めた水を低い所に落とすことによる位置エネルギーを利用して水車を廻し、水車につながっている発電機を回転させることで発電する
風力発電風のエネルギーを電気エネルギーに変えることで発電する
バイオマス発電動植物などから生まれた生物資源の総称である「バイオマス」を直接燃やしたり、ガス化したりして発電する
地熱発電地中深くから取り出した蒸気でタービンを直接回して発電する

発電方法によって、発電の仕方が大きく異なることがわかりますね。

各発電方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

日本の発電割合

以下のグラフは、2022年度時点における日本の発電割合を示したものです。

2022年度日本の発電割合
参考:資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』を加工して作成

2022年度時点における日本の発電量の約7割が火力発電です。一方、再生可能エネルギーの発電割合は、約2割にとどまっています。

原子力発電は、2010年時点では全体の約25%を占めていましたが、2011年の東日本大震災で東京電力・福島第一原子力発電所で水素爆発事故が発生したことを受け、発電割合は激減。事故の影響で、国内の原子力発電所が稼働停止になったためです。その後、再稼働が徐々に進んだ結果、2022年時点の発電割合は5.5となっています。

参考:資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)

日本にとって一番良い発電方法を考える際の2つの視点

日本にとって一番良い発電方法を考える際には、さまざまな視点からその良さを評価することができます。今回は、「環境への優しさ」と「発電効率の良さ」の2つの視点で考えてみましょう。

まずは、なぜこの視点で考えることが大切なのか、その理由を簡単に紹介します。

視点1.環境への優しさ

「環境への優しさ」という視点が大切な理由としては、近年、世界中で環境問題が深刻化していることが挙げられます。主な環境問題は「気候変動」「環境汚染」「産業廃棄物問題」「生物多様性の喪失」「資源の枯渇」の5つですが、中でも発電方法と関わりが深いのが、「気候変動」と「資源の枯渇」です。具体的には、以下のように関わっています。

環境問題の種類発電方法との関わり
気候変動気候変動の一つである「地球温暖化」の主たる要因は、温室効果ガスの大量排出といわれている。
日本の発電割合の約7割を占める火力発電では、燃料の燃焼時に温室効果ガスの筆頭である二酸化炭素(CO2)が発生している。
資源の枯渇資源という観点から懸念されているのが、石油・石炭・天然ガスなどの「化石燃料の枯渇」である。
化石燃料は火力発電で用いられるため、資源が枯渇すると、発電割合の多い火力発電を行えなくなってしまう。

このように、環境問題と発電方法には密接な関わりがあるため、「環境への優しさ」という視点で日本にとって一番良い発電方法を考えることが大切なのです。

視点2.発電効率の良さ

「発電効率の良さ」という視点が大切な理由としては、日本の資源の乏しさが挙げられます。資源エネルギー庁のホームページでも、日本は石油や天然ガスといった資源に乏しい国である旨が言及されています。

資源の乏しさは、エネルギー自給率の低さにも直結。資源エネルギー庁によると、2022年度の日本のエネルギー自給率は12.6%でした。これは諸外国と比べると、とても低い水準です。また、火力発電の燃料である化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っているため、国際情勢によっては燃料調達が困難となり、電力の安定供給に影響が出る可能性もあります。

こうした状況を踏まえると、「日本は限りある資源を有効活用しなければならない」「その一環として、発電時のロスを最小限にしなければならない」といえるでしょう。そのため、「発電時のロスが少ない、発電効率の良い発電方法は何か」という視点で、日本にとって一番良い発電方法を探っていくことが重要なのです。

参考:資源エネルギー庁『エネルギーに関するさまざまな動きの今がわかる!「エネルギー白書2024」』『2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)

環境に優しい発電方法「再生可能エネルギー発電」

「環境への優しさ」という視点から、日本にとって良い発電方法といえるのが、「再生可能エネルギー発電」です。

再生可能エネルギー発電の主要な5つの発電方法について、環境という視点での利点をまとめました。

発電方法共通の利点特徴的な利点
太陽光発電・CO2を排出しないため、温室効果ガス削減や地球温暖化対策として有効である

・資源が枯渇しない、または枯渇するリスクが少ない
新たに専用地を用意しなくて済むため、森林を伐採する必要がない 
水力発電川が多く、水資源が豊富な日本では安定したエネルギー供給が期待できる
風力発電陸上だけでなく洋上も活用できる
地熱発電温泉大国日本の地形に適している

バイオマス発電については、以下のようにまとめられます。

発電方法利点
バイオマス発電・燃料の燃焼時にCO2を排出するものの、食物が空気中から取り込んだ炭素に由来するものであるため、カーボンニュートラルの実現に寄与する

・未活用の廃棄物を燃料とするため、廃棄物の再利用や減少につながり、循環型社会構築に大きく寄与する

・これまでは捨てていた家畜排泄物や生ゴミなどを資源として活用することで、地域環境の改善に貢献できる など

「地球温暖化対策」や「資源の枯渇防止」といった点で、再生可能エネルギー発電は環境に優しい発電方法であることがわかりますね。

発電効率が良い発電方法ランキング

次に、「発電効率の良さ」という視点から、日本にとって一番良い発電方法を探っていきましょう。

以下の表は、「発電効率の良い発電方法」をランキング形式で示したものです。

順位発電方法発電効率(目安)
1位水力発電約80%
2位火力発電約40%
3位風力発電約30〜40%
4位原子力発電約33%
5位地熱発電、バイオマス発電、太陽光発電約20%

上の表からわかるように、発電効率が群を抜いて高いのは「水力発電」です。また、「火力発電」は、水力発電を除く再生可能エネルギー発電や原子力発電よりも発電効率が良いといえます。

各発電方法には、利点・課題がある

ここまで紹介してきた内容から、「日本にとって一番良い発電方法は水力発電である」と考える方もいるかもしれません。確かに一理ありますが、そうとは断言できません。水力発電には、課題もあるためです。

水力発電は、「環境への優しさ」「発電効率の良さ」という視点で、とても優れた発電方法であるといえます。その一方で、「発電量が上流域の水量に左右されるため、電力の安定供給に課題がある」「事業開始前の調査や周辺住民の説得に長い時間を要する」といった課題もあります。こうした課題もあってか、資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』によると、水力発電の発電割合は2022年度時点で7.6%という低い値でした。

「利点も課題もある」というのは、どの発電方法にも共通していえることです。

■発電方法の主な利点・課題

発電方法利点課題
再生可能エネルギー発電・環境に優しい
・資源が枯渇しない、または枯渇のリスクが少ない種類が多い
・水力発電を除いては、火力発電よりも発電効率が低い
・他国に比べ、発電コストがかなり高い
火力発電・発電効率が良い
・発電量を柔軟に微調整できる
・CO2を排出するため、地球温暖化につながる
・燃料の海外依存率が高い
原子力発電・燃料の安定調達が可能
・少量の燃料で、大量の電力を安定的に生成できる
・原子力発電所で事故が発生した場合のリスクが非常に大きい
・CO2を排出しないが、放射性廃棄物が出てしまう

このように、各発電には利点も課題もあるため、さまざまな発電方法を組み合わせ、「環境への優しさ」と「発電効率の良さ」のバランスをとっていくことが大切といえるでしょう。

実際、日本政府もさまざまな発電方法を組み合わせることで電力を安定供給する「エネルギーミックス」を推奨しています。

さまざまな発電方法を組み合わせることが大切

この記事では、「環境への優しさ」と「発電効率の良さ」という2つの視点から、日本にとって一番良い発電方法を探ってきました。

2つの視点のみで考えると水力発電が最も優れているようにも感じますが、水力発電には課題もあります。また、「利点も課題もある」という点は、どの発電方法でも共通です。そのため、「この発電方法が、日本にとって一番良い」と一概にはいえません。

さまざまな発電方法を組み合わせ、「環境への優しさ」と「発電効率の良さ」のバランスをとっていくことが大切であると認識しましょう。