エネルギーコストの削減方法。企業が今すぐにでもできること6選を紹介

自社における電気代をはじめとするインフラコストである、エネルギーコスト。企業の経費の一つであることから、「エネルギーコストを削減したい」と考えている企業も多いでしょう。
この記事では、エネルギーコストの概要や中小企業における削減方法6選などを紹介します。これを読めば、エネルギーコストの削減に向けて明日からどのようなことに取り組んでいくべきかのヒントが得られるでしょう。
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- エネルギーコストとは、企業内で使用する電気代をはじめとするインフラコストです。「調達コスト」「使用コスト」「管理コスト」「環境コスト」からなります。
- エネルギーコストの削減により、「経営状態の改善」「脱炭素経営の実現」「企業イメージの向上」というメリットが期待できます。
- エネルギーコストを削減したい中小企業は、「省エネ効果の高い設備・機器への切り替え」「電力契約の見直し」「再生可能エネルギー発電設備の設置」などに取り組むとよいでしょう。
エネルギーコストとは?
エネルギーコストとは、企業内で使用する電気代に代表されるインフラコストのこと。「オフィスコスト(賃料、通信費、印刷代など)」や「オペレーションコスト(物流費や人件費など)」とならぶ企業の経費の一つです。
エネルギーコストは4つのコストからなる
エネルギーコストは、「調達コスト」「使用コスト」「管理コスト」「環境コスト」の4つからなります。
分類 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
調達コスト | エネルギー資源を入手する際に生じるコスト | ・電力会社からの電力購入費 ・外国からの石油調達費 |
使用コスト | エネルギーを実際に利用する際に生じるコスト | ・オフィスでの電力使用にかかる電気代 ・社用車を使うために必要なガソリン代 |
管理コスト | エネルギーの管理・運営で生じるコスト | ・エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入費やランニングコスト ・外部専門家に改善提案やサポートなどを依頼する際にかかる費用 |
環境コスト | エネルギーの使用・生産に伴って発生する環境負荷に関連したコスト | ・環境保護を目的とした設備などの導入費 ・二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量に応じて生じる税負担など |
エネルギーコストを削減するメリット
エネルギーコストを削減することにより、以下のようなメリットが期待できます。
■エネルギーコスト削減のメリット
- 経営状態の改善を図れる
- 脱炭素経営の実現につながる
- 企業イメージの向上が期待できる
それぞれについて、見ていきましょう。
経営状態の改善を図れる
先述の通り、「オフィスコスト」や「オペレーションコスト」とならぶ企業の経費の一つです。そのため、エネルギーコスト低減は、企業の経費削減を意味します。エネルギーコストを削減できれば、企業にとっての利益を増やしたり、エネルギーコストの削減分を別事業に投資したりすることが可能になるため、経営状態の改善を図れるでしょう。
脱炭素経営の実現につながる
エネルギーコスト削減に向けて省エネなどを進めることで、自社の温室効果ガス排出量が自ずと減少します。その結果、脱炭素経営(脱炭素をはじめとする気候変動対策の視点を織り込んだ企業経営)の実現につながるでしょう。それにより、「地球温暖化の抑制」や「持続可能な社会の実現」にも寄与すると考えられます。
企業イメージの向上が期待できる
地球温暖化が深刻化していることもあり、環境問題への関心が高い企業・消費者・投資家は少なくありません。そのため、エネルギーコスト削減施策の一環として省エネや脱炭素経営を推進していることを外部にアピールできれば、企業イメージの向上が期待できます。また、ESG投資(企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みを投資先選定の基準とする投資手法)も受けやすくなるでしょう。
エネルギーコストの現状と推移
日本をはじめとする世界各国におけるエネルギーコストは、どのような状況にあるのでしょうか。ここでは、資源エネルギー庁の『エネルギー白書2023』を参考に、「エネルギー市場価格」と「消費者物価指数」という2つの指標に着目し、エネルギーコストの現状・推移を紹介します。
参考:資源エネルギー庁『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』
エネルギー市場価格
エネルギー市場価格とは、エネルギー市場におけるガスや原油、石炭の取引価格のこと。世界の主要なエネルギー市場では、以下のグラフの通りに推移しています。

『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』

『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』

『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』
いずれのエネルギー市場でも、2020年から2022年にかけて市場価格が高騰しました。背景としては、「ロシアによるウクライナ侵攻」やそれを受けての「主要国によるロシアへの制裁措置の実施」などが考えられます。
2023年に入ってからは、2021年頃の水準に下がっているようです。しかしながら、今後も世界情勢によっては市場価格が大きく変動する可能性があるため、世界の動向を注視しましょう。
消費者物価指数
消費者物価指数とは、総務省統計局が毎月作成・公表している「消費者が購入する財(モノ)・サービスを対象とした価格」を集計した指数のこと。2020年1月の数値を基準(100)とした場合の主要国・地域における「電気料金」「ガス料金」「ガソリン等料金」の消費者物価指数の現状・推移は、以下のグラフの通りです。

『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』

『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』

『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)|第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰』
いずれの消費者物価指数も、2019年から2021年にかけてはほぼ横ばいでしたが、2022年には微増~増加傾向に転じています。エネルギー市場価格の推移と比べると変動幅が緩やかな理由としては、エネルギー市場価格の高騰を受けて各国政府がさまざまな対策を講じていることが考えられます。
エネルギー市場価格や消費者物価指数の推移から、「エネルギーコストは世界情勢や各国の施策などに左右されるため、安定性はさほど高くない」といえますね。
中小企業におけるエネルギーコストの削減方法6選
「リソースに余裕がある大企業でないと、エネルギーコスト削減に取り組むのは難しいのではないか」と考える方もいるかもしれませんが、中小企業であってもエネルギーコストの削減は可能です。削減方法としては、以下のようなものがあります。
■中小企業におけるエネルギーコストの削減方法
- 空調や照明の無駄使いをなくす
- 省エネ効果の高い設備・機器に切り替える
- 電力契約を見直す
- 再生可能エネルギー発電設備を設置する
- エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入する
- 外部の専門家の助言を受ける
具体的にどのようにすればよいのかを紹介します。
削減方法1.空調や照明の無駄使いをなくす
どの企業でも真っ先に取り組めるのが、空調や照明の無駄使いをなくすことです。
空調については、「室温が夏場は28℃、冬場は20℃くらいになるように、エアコンの設定温度を調整する」というように、無理のない範囲で設定温度を適切に調整しましょう。従業員の理解・協力を得られやすくするため、「クールビズ」や「ウォームビズ」を推奨することも大切です。
照明については、必要以上に長い時間使わないようにしましょう。具体的には、「部屋を使用していないときは、必ず照明をオフにする」「昼休憩時には、通常時よりも照明を暗めにする」「日当たりのよい場所では、照明の使用を最低限とする」などの方法があります。
削減方法2.省エネ効果の高い設備・機器に切り替える
これまで使ってきた設備・機器を省エネ効果の高いものに切り替えることも有効です。自ずと電力使用量が減るため、エネルギーコスト削減に直結します。
業種を問わず取り入れやすいのが、エネルギー効率のよい空調・照明機器です。エアコンの買い替えや、蛍光灯からLED照明への切り替えなどを行いましょう。
製造業の場合には、空調・照明機器に加えて、生産設備も省エネ効果の高いものに切り替えることをおすすめします。生産設備の稼働数・稼働時間が多ければ多いほど、エネルギーコスト低減効果を実感しやすいでしょう。
削減方法3.電力契約を見直す
電力契約の見直しも、エネルギーコストの削減に有効です。具体的には、「発電事業者(電力会社)との契約電力量を減らす」「電気料金が安い電力会社との契約に切り替える」などの方法があります。
電気料金は契約電力量や電力使用量に応じて毎月必ず発生するため、一月あたりのエネルギーコスト削減効果はあまり高くなかったとしても、年単位で見ると大きな効果が期待できるでしょう。
削減方法4.再生可能エネルギー発電設備を設置する
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーのこと。主な種類として、太陽光発電や風力発電、水力発電などがあります。
再生可能エネルギー発電設備を設置する際には導入コストがかかりますが、中長期的に見るとエネルギーコストを削減できます。自家発電した電力を社内で使用することで、電力会社から購入する電力量が少なくなり、電力会社に支払う電力量料金を減らせるためです。
まずは、再生可能エネルギーの中でも、設置場所やコスト面から多くの企業にとって導入しやすいとされている太陽光発電設備の設置を検討しましょう。具体的には、オフィスや工場の屋上、会社の敷地内、カーポートの屋根などに太陽光発電パネルを設置する形となります。
削減方法5.エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入する
エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、企業や施設がエネルギーの使用状況を効率的に管理・最適化するためのシステムのこと。EMSを活用し、エネルギー使用量をリアルタイムで監視することで、無駄なエネルギー使用の洗い出し・削減がしやすくなります。そのため、エネルギーコストの削減に大きく寄与するでしょう。
EMSの主な活用例としては、以下のようなものがあります。
■EMSの主な活用例
- 季節や時間帯による消費量の変動を分析し、空調など設備の運転を最適化する
- 人感センサーと連動して照明を自動点灯・消灯する
- 工場の生産ラインの稼働状況を監視し、異常を早期に感知する
削減方法6.外部の専門家の助言を受ける
エネルギーコンサルタントや脱炭素会計アドバイザーといった外部の専門家の助言を受けることも有効です。社内の人材だけでは思いつかなかったエネルギーコスト削減方法を提案してもらえるので、エネルギーコスト削減を推進しやすくなるでしょう。
政府主導のもと、省エネルギー診断をはじめとする中小企業の省エネ推進を目的とした事業(中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費)も行われていますので、あわせて検討することをおすすめします。2025年1月現在、以下の表で示す3つの事業があります。
■中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費の3事業
事業名 | 概要 | どういう場合におすすめか |
---|---|---|
省エネクイック診断 | ・工場やビルの設備1つから、安価かつ短時間で診断を実施 ・効果的な省エネのアドバイスを低コストで受けられる | 迅速な診断を希望する場合 |
省エネ最適化診断 | ・約1日の診断で、工場やビルなど全体のエネルギーのムダを確認 ・希望があれば、「IoT診断」というデータに基づく詳細な診断も受けられる | 工場やビル全体の包括的な診断を希望する場合 |
省エネお助け隊 | ・省エネ診断に加え、診断後の設備導入、金融機関の紹介、自治体支援策の紹介などを一貫して支援 ・経営の専門家も所属しているため、さまざまな相談に対応可能 | 診断に加え、省エネに向けた取り組みまでのサポートを希望する場合 |
企業が活用したい補助金・助成金
「エネルギーコスト削減に取り組みたいものの、施策実施にかかる予算の確保が難しい」という場合におすすめしたいのが、補助金の活用です。例えば、エネルギーコスト削減のために設備の入れ替えを検討している場合は、「ものづくり補助金 成長分野進出類型(DX・GX)」「省エネ・非化石転換補助金」「脱炭素ビルリノベ事業」「ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業」が活用できる可能性があります。
公募を行っている補助金の情報は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
エネルギーコスト削減に向けた取り組みを進めよう
エネルギーコストは、オフィスコストやオペレーションコストとならぶ企業の経費の一つです。削減することで、「経営状態の改善」「脱炭素経営の実現」「企業イメージの向上」が期待できます。
エネルギーコスト削減に向けた取り組みとしては、「空調や照明の無駄のない使用」「省エネ効果の高い設備・機器への切り替え」「電力契約の見直し」「再生可能エネルギー発電設備の設置」などがあります。自社の状況を踏まえた上で、無理なくできることから対策を進めていきましょう。