初めての
脱炭素経営を
サポート!

【中小製造業向け】CO2排出量の算定方法と計算時の注意点をわかりやすく解説

HELLO!GREEN の「中小企業版SBT認定申請サービス」資料を無料ダウンロードする

今や製造業にとって、CO2排出量の把握と削減は避けて通れない課題です。電気やガスなどの使用や資材調達など、事業活動のあらゆる場面でCO2が排出されており、取引先からの開示要請や将来的な法規制を見据えた対応が必要でしょう。今回は、CO2排出量の算定が必要な背景や基本的な手順、製造業特有の注意点などを、わかりやすく解説します。

HELLO!GREENでは「中小企業版SBT認定を取得したいが、ノウハウが不足している」「対応できる人材がいない」とお困りの企業さまを支援しています。環境省認定「脱炭素アドバイザー」が認定取得まで一気通貫でサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
→詳しいサービス資料をダウンロードする

記事の要点
  • CO2排出量が多い製造業では、サプライヤーである中小企業も把握・削減が求められます。
  • 算定するためには、GHG(温室効果ガス)排出源の分類と排出係数が重要です。
  • 算定結果を形にする施策として、国際認証の取得も検討しましょう。
目次

CO2排出量の算定が求められる背景

地球温暖化対策が喫緊の課題となっている現代において、企業が事業活動に伴うCO2排出量を把握することは、もはや避けて通れない潮流となっています。特に、サプライチェーン全体での排出量削減を目指す動きが加速する中で、特に排出量が多い製造業はその影響を強く受けるようになっています。

では、なぜ今、中小製造業においてもCO2排出量の算定がこれほどまでに求められているのでしょうか。その背景には、企業経営を取り巻く重要な変化があります。

企業経営にとって「排出量の見える化」が当たり前に

環境対策が一部の先進的な企業の取り組みに過ぎなかった時代から一変し、現在ではCO2排出量の把握、すなわち「見える化」が、企業が持続的に成長するための基礎条件となりつつあります。投資家や金融機関は、企業の環境への取り組みを評価する際の重要な指標としてCO2排出量データを注視しており、排出量の少ない企業を選好する傾向が強まっています。

消費者においても、環境意識の高まりから、製品の製造過程における環境負荷に関心を持つ人が増えています。このような状況下でCO2排出量を把握し、情報開示することは、企業の信頼性向上や競争力強化に直結する重要な要素となっているのです。

サプライチェーン全体での対応が中小製造業にも波及

大企業を中心に進む脱炭素化の取り組みは、そのサプライチェーン全体へと波及し、中小製造業も無関係ではいられません。多くの大企業が、自社の排出量削減目標達成のために、取引先である中小企業に対してもCO2排出量の算定や削減努力を求めるようになっています。これは、製品のライフサイクル全体での環境負荷低減を目指す上で、サプライヤーの協力が不可欠であるためです。もし、取引先からの要請に応えられない場合、ビジネスチャンスを失う可能性も否定できません。中小製造業にとって、CO2排出量の算定は単なる環境対策ではなく、事業継続のための重要課題となっているのです。

ただしCO2排出量の算定は手段であって、目的ではありません。算定結果を活用する方法の1つとして、「中小企業版SBT」の認定取得も検討してみてください。

基本的なCO2排出量算定方法

CO2排出量は、「活動量」(燃料・電気・熱などの使用量)や部材・原料の取引金額などに排出係数(排出原単位)を乗じて算定します。これにより、エネルギー使用で発生するCO2排出量を数値として把握することが可能です。

製造業は事業所や設備の規模が大きく、空調や生産設備の稼働によって、オフィス業務を中心とする業種よりも電力消費が多くなるのが一般的です。さらに、燃料燃焼や化学反応による発生、洗浄剤・溶剤からの排出、冷媒の使用や漏れなど、さまざまなプロセスからGHGが排出されます。そのためCO2以外のGHGについては、「地球温暖化係数(GWP)」を用いて、CO2に換算した上で算定します。

CO2に換算するGHGは以下の6種類です。

  • メタン(CH4)
  • 一酸化二窒素(N2O)
  • ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)
  • パーフルオロカーボン類(PFCs)
  • 六ふっ化硫黄(SF6)
  • 三ふっ化窒素(NF3)

地球温暖化係数はGHGの種類によって異なるため、種類ごとに分けて計算する必要があります。

■CO2に換算する計算式

CO2換算排出量=各GHGの排出量×地球温暖化係数

【例】メタンをCO2に換算する場合メタンのCO2換算排出量=メタンの排出量(トン)×28(メタンのGWP)

地球温暖化係数は、環境省の「算定方法・排出係数一覧」に掲載されています。GHG排出量の計算については、下記の記事をご参照ください。

CO2排出量の種類:Scope 1・2・3の基本

CO2排出量の算定においては、「Scope(スコープ)」という考え方が重要です。排出源の種類によって、Scope1、Scope2、Scope3に分類します。

Scope1・2・3のイメージ
参考:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』を加工して作成

製造業では、燃料の燃焼による直接排出(Scope1)や、購入した電力の使用による間接排出(Scope2)が主な対象です。​中小製造業においては、まずScope1とScope 2の算定から始めるのが一般的で、取引先からの要請や、排出量削減を強化する段階でScope3の算定を検討することになります。

CO2排出量算定のための基本ステップ

CO2排出量の算定は、以下のステップで進めます。​

CO2排出量の算定フロー

ステップ1.GHG排出源を特定する
自社の事業活動におけるエネルギー使用や原材料の消費など、GHGの排出源を洗い出します。

ステップ2.データを収集する
特定した各排出源ごとに、活動量データ(燃料・電力の使用量など)を収集します。

ステップ3.GHG排出量を算出する
収集したデータに対して、GHGの種類ごとに排出係数をかけて、各GHGの排出量を求めます。​

ステップ4.算出したGHG排出量をCO2に換算する
各GHGに適切な地球温暖化係数を適用して、CO2換算値を算出します。

ステップ5.数値を集計する
CO2に換算した排出量の合計が、全体のCO2排出量です。​

「エネルギー由来の温室効果ガス排出量(Scope1・Scope2)」は、使った燃料・電気・熱の量に、あらかじめ決められた排出係数をかけて計算します。

■基本の算定式

CO2排出量=活動量(使用量)×排出係数

(参考:経済産業省リーフレット『中小企業のみなさん!!自社のCO2排出量を算定してみませんか?』)

これらのステップを踏むことで、CO2排出量を算定できます。

製造業に特有のCO2排出源

製造業では、一般的なオフィスワークとは異なる、特有のCO2排出源があります。​例えば以下のようなものが挙げられます。

製造業にみられるCO2排出例

製造プロセスにおけるエネルギー使用原材料の製造・輸送廃棄物の処理
・工作機械、プレス機、溶接機など機械の使用による電力消費

・ボイラー燃焼による排出 など
・金属、樹脂、塗料など、原材料の製造過程におけるCO2排出

・原材料の輸送による排出 など
不良品や端材などの焼却処理による排出 など

これらの排出源を正確に把握し、適切な対策を講じることが、製造業におけるCO2排出量削減の鍵となります。

CO2排出量を計算する際の注意点

CO2排出量の算定は、正確な現状把握と効果的な削減策を講じるための重要な第一歩です。しかし、計算方法を誤ったり、不適切なデータを使用したりすると、算定結果の信頼性が損なわれてしまいます。ここでは、CO2排出量を計算する際に特に注意すべき2つの注意点について解説します。

Scopeは正確に分類する

CO2排出量を算定する際には、Scope1・2・3の分類を正確に行うことが重要です。​誤った分類は、排出量の過小評価や過大評価につながり、正確な現状把握や効果的な削減対策の策定を妨げる恐れがあります。

正しい排出係数を使う

CO2排出量の計算に使用する排出係数は、電力会社や燃料の種類などで異なります。また、排出係数は定期的に更新されます。最新かつ適切な排出係数を使用することが重要なため、最新情報を確認して、正しい排出係数を使用しましょう。

(参考:環境省『温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度』)

効率的に計算するためのツール・支援サービス

CO2排出量の算定には、専用のツールや支援サービスを活用することで、効率的かつ正確に計算することが可能となります。​例えば、クラウドベースの算定ツールや、専門家によるコンサルティングサービスなどです。商工会議所や自治体で、中小企業向けにツールを提供していることがあるため、探してみるとよいでしょう。ツールや外部の支援サービスを活用することで、算定する業務負荷を軽減しながら、排出量データを得ることができます。

CO2削減の取り組みを形にするなら、「中小企業版SBT」の取得も選択肢に

中小企業がCO2削減の取り組みを進める中で、「中小企業版SBT(Science Based Targets)」の取得は、目標設定とその達成に向けた道筋を明確にする手段となります。​SBTとは、科学的根拠に基づいた削減目標を設定し、持続可能な経営を推進するための枠組みです。中小企業版SBTでは​申請要件が簡素化されており、初めて取り組む企業でも参加しやすい設計となっています。

SBTは、申請するために自社のCO2排出量(Scope1・2・3)を正確に算定し、基準に沿った目標値を設定します。国際的な認証制度で、取引先や海外顧客などの信頼性向上にもつながるため、排出量を算定した次のステップとしてSBT認定を検討してみてください。

→詳しいサービス資料をダウンロードしてみる

まずはCO2排出量の「見える化」から始めよう

CO2排出量の削減に向けた取り組みは、「算定」から始まります。自社の事業活動に伴うCO2排出量を詳細に把握して、対策を検討することが可能です。効果的な削減策の立案のほか、取引先からの開示要請や、今後厳格化が予想される規制への対応にもつながるでしょう。

算定そのものをゴールとせず、継続的な取り組みに発展させる選択肢として、科学的根拠に基づいた削減目標を掲げる「中小企業版SBT」の取得を視野に入れることも有効です。製造業においても、今後、環境への配慮はますます求められると考えられるため、まずは自社の排出量を算定してみてはいかがでしょうか。

脱炭素経営にご興味のある方、
お気軽にお問い合わせください