火力発電のCO2排出量。データで見る現状と中小企業が迫られる脱炭素への転換

火力発電のCO2排出量は、世界中で「脱炭素(カーボンニュートラル)」への動きが加速する中で、今最も注目されているテーマの一つです。私たちの生活や経済活動を支える「電力」のあり方が問われる中、日本の電力を長年支えてきた火力発電は、大きな転換期を迎えています。
しかし、火力発電を一概に「悪」と決めつけることはできません。エネルギー資源の乏しい日本において、電力の安定供給を担ってきた歴史や、世界屈指の発電効率を誇る技術力があるからです。
本記事では、火力発電のCO2排出量に関する客観的なデータを紐解き、2026年現在の最新動向を踏まえ、なぜ今、中小企業を含めたあらゆる組織に脱炭素への転換が求められているのかを解説します。ビジネスの持続可能性を高めるためのヒントとして、ぜひお役立てください。
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- 燃料別のCO2排出実態を比較。最新データに基づき、火力発電の現状と日本の技術力を紐解きます。
- サプライチェーンの要請やコスト増など、中小企業が直面する課題を「生存戦略」の視点で整理します。
- 再エネへの切り替えやSBT認定の取得など、企業の価値を高めるための具体的な一歩を提示します。
データで比較!火力発電のCO2排出量
脱炭素を考える際、まず押さえておきたいのが、最新の統計に基づいた客観的なデータです。資源エネルギー庁が公表した最新の速報値(2024年度分)によると、日本のエネルギー起源CO2排出量は9.1億トンとなっており、前年度比で1.4%減少しています。これは2013年度比で見ると26.5%の減少であり、日本の脱炭素化は着実に進んでいると言えます。
次に、排出量の内訳をエネルギー源別に見てみましょう。
■2024年度エネルギー源別CO2排出量について~2013年度比と前年度比~

上記グラフからは、日本の脱炭素化が進んでいるとはいえ石炭や石油といった化石燃料が依然として大きな割合を占めていることがわかります。
(参考:資源エネルギー庁『集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)』)
エネルギー源別の消費とCO2排出の関係
私たちが日々使うエネルギー(最終エネルギー消費)の構成を見ると、石油、電力、ガス、石炭など多岐にわたります。資源エネルギー庁の資料によれば、これらのエネルギー源はその性質によって排出強度が大きく異なります。
一般的に「火力発電はCO2が多い」と言われる理由は、発電の過程で排出強度の高い化石燃料を大量に使用するためです。燃料ごとの環境負荷の違いを整理すると、以下の傾向が明確に示されています。
- 石炭: 安定供給性に優れていますが、エネルギー源の中ではCO2排出強度が最も高く、低炭素なLNG(液化天然ガス)と比較すると約2倍の排出量となります。
- 石油: かつての日本の主要エネルギーであり、今なお運輸部門などで広く使われていますが、石炭に次いで排出強度が高い燃料です。
- LNG(液化天然ガス): 化石燃料の中では最も低炭素であり、火力発電の燃料や都市ガスの主原料として、日本のエネルギー転換における「低炭素な調整電源」として重要な役割を担っています。
一方で、再生可能エネルギー(太陽光、風力など)は、発電プロセスにおける排出がゼロであり、最終的なCO2排出量を削減するための最も強力な手段となります。
火力発電がCO2を多く排出する理由
火力発電の仕組みは、石炭やLNGなどの化石燃料を燃焼させ、その熱で高温・高圧の蒸気を作り、タービンを回して電気を得るというものです。この「燃焼」のプロセスにおいて、燃料に含まれる炭素が空気中の酸素と結びつくため、物理的にCO2の発生を避けることができません。
しかし、日本の火力発電技術は世界トップレベルにあります。例えば、最新の「石炭ガス化複合発電(IGCC)」などの技術では、従来の石炭火力よりも少ない燃料で効率よく発電することが可能です。これにより、同じ量の電気を作る際に出るCO2を大幅に抑制しています。
日本の高効率な技術は、エネルギー資源を輸入に頼らざるを得ない国情の中で磨かれてきました。現在は、このプロセスにCCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)などの技術を組み合わせ、排出を実質ゼロに近づける研究が進んでいます。
CCUSをはじめとしたカーボンリサイクルについては、以下の記事で解説しています。
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世界のCO2排出量ランキングと推移
CO2排出の問題は、一国だけで解決できるものではありません。各国の産業構造や資源の有無によって、脱炭素へのアプローチは大きく異なります。
主要国のエネルギー事情と脱炭素の動き
世界のエネルギー起源CO2排出量を見ると、上位には中国、アメリカ、インド、そしてロシアや日本といった経済規模の大きな国々が並びます。
| 順位 | 国名 | 世界全体に占める割合 | 特徴と動向 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 約32.1% | 石炭火力への依存が高い一方、再エネ導入量も世界最大。 |
| 2位 | アメリカ | 約12.7% | 石炭からLNGへのシフトが進み、排出量は減少傾向。 |
| 3位 | インド | 約8.0% | 経済成長に伴い排出が増加中。2070年のネットゼロを目標。 |
| 4位 | ロシア | 約4.9% | 豊富な天然ガス資源を持つが、排出削減のペースは緩やか。 |
| 5位 | 日本 | 約2.7% | 震災後の火力依存から脱却し、2013年度比で大幅な削減を継続。 |
このように、資源が豊富にある国は自国の資源を優先し、地続きの国はネットワークを活用するなど、国情に合わせた戦略が取られています。
日本の火力発電依存度と年間CO2排出量の推移
日本の状況に目を向けると、2011年の東日本大震災による原子力発電所の停止に伴い、電力供給の空白を埋めるために火力発電がフル稼働してきました。一時期は電源構成の9割近くを火力が占め、日本のエネルギーセキュリティーを支えた功績は非常に大きいと言えます 。
しかし、現在は「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた移行フェーズにあります。
■エネルギー起源温室効果ガス排出量
- 2013年度(ピーク時): 約14億800万トン(温室効果ガス全体)
- 2022年度(確定値): 約11億3,500万トン
- 2023年度(確定値): 約10億7,100万トン(前年度比4.0%(4,490 万トン)減少)
日本のエネルギー起源温室効果ガス排出量は、2023度年において、1990年度の12億7,200万トンに比べて約15.8%減少しており、近年も着実な減少傾向にあります 。これは、再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ技術の進展、そして火力発電の効率化によるものです。今後は、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の「3E」に、安全性(Safety)を加えた「S+3E」のバランスを取りながら、火力の比率を下げていくことが国の基本方針となっています 。

また、日本を含めた主な国別の温室効果ガス排出量は、以下のグラフのように推移しています。

今後の排出量についても注視していきましょう。
(参考:環境省『2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について』)
【2026年最新】脱炭素を巡るホットトピックスと今後の予測
脱炭素の動きは、単なる環境運動から「国際的なビジネスルール」へと完全に移行しました。2026年現在、世界の合意形成が企業の規制やサプライチェーンのあり方にダイレクトに影響を与えています。
COPの最新動向
COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)では、近年「化石燃料からの脱却」に向けた加速が合意されています。特に、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の段階的削減は、もはや避けて通れない世界の総意となっています。
これにより、日本国内においても石炭火力から低炭素な電源へのシフト、あるいは水素やアンモニアを混ぜて燃焼させる「混焼」技術の導入が急ピッチで進められています。これらの国際会議での決定事項は、数年遅れで日本の法規制や税制に反映されるため、経営者は常にその動向を注視しておく必要があります。
(参考:環境省『地球環境・国際環境協力』)
カーボンプライシングの本格導入
2025年から2030年にかけて、日本でも「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」が本格化します。これは、CO2排出量に対して企業が費用を支払う仕組みです。
- 排出量取引制度: 企業ごとに排出枠を決め、超過分や削減分を売買する制度です。日本では「GXリーグ」を中心に、本格的な取引が始まっています。
- 炭素税: 将来的に、化石燃料の輸入時などに課される税率が引き上げられる可能性があります。
これまでは「環境に配慮するとコストがかかる」と考えられてきましたが、今後は「環境に配慮しないと、炭素価格の支払いでコストが膨らむ」時代へと変わります。
中小企業の経営に影響する3つの課題
「自社は大企業ではないから関係ない」という考え方は、今や通用しなくなっています。火力発電への依存度が高い日本の電力構造下では、以下の3つの課題が中小企業の経営を直撃します。
1.サプライチェーンの脱炭素要請
現在、大手メーカーやグローバル企業は、自社だけでなく、サプライチェーン全体(Scope1・2・3)」での排出量削減を求めています。
- ビジネスの危機: 「CO2を何%削減できるか」という問いに答えられない企業は、発注元から取引から外されるリスクがあります。
- チャンスとしての側面: いち早く脱炭素化を進めれば、「グリーンな部品を供給できるパートナー」として選ばれる企業になり、競合他社との差別化が可能です。
もはや脱炭素は、売り上げを守り、拡大させるための「営業戦略」そのものと言えます。
2.燃料価格によるコスト変動
日本の火力発電は、石油・石炭・LNGといった燃料のほぼ100%を海外からの輸入に頼っています。そのため、国際情勢や円安の影響をダイレクトに受け、電気代が乱高下するリスクを常に抱えています。
自社で太陽光パネルを設置したり、省エネを徹底したりすることは、外部のエネルギー価格に左右されない「強靭な経営体質」を作ることにつながります。
3.外部評価(金融・採用)への影響
銀行などの金融機関は、融資判断の際に企業の環境対応(ESG)を重視するようになっています(ESG投資)。脱炭素に取り組まない企業は、融資の金利が高くなったり、審査が通りにくくなったりする可能性があります。
また、採用市場においても「環境意識の低い企業には就職したくない」と考える若年層が増えており、人材確保の観点からも無視できない課題です。
脱炭素経営への第一歩!CO2削減のために今すぐできること
課題を解決するために「何から手をつければいいのか」と悩む担当者の方も多いでしょう。まずは、即効性のある以下の3ステップから始めることをお勧めします。
再生可能エネルギー由来の電力プランへの切り替え
最も手軽で効果が大きいのが、電力会社の切り替えです。多くの新電力や既存の電力会社が「再生可能エネルギー100%プラン」を提供しています。設備投資なしで、即座に自社のCO2排出量をゼロ(または大幅削減)にカウントできるメリットがあります。
省エネ設備の導入と運用改善
「使うエネルギーそのものを減らす」ことは、コスト削減に直結します。
- LED照明への交換: 既に実施済みの企業も多いですが、工場などの大規模施設では依然として削減余地があります。
- 高効率空調・コンプレッサーの導入: 10年以上前の設備を使っている場合、最新機種への更新で電気代が20〜30%削減できるケースも珍しくありません。
- 見える化システム: どの時間帯に、どの設備が電気を浪費しているかをグラフ化することで、無駄なアイドリングを止めるなどの運用改善が可能になります。
自社の排出量の「見える化」
まずは自社が1年間にどれだけのCO2を排出しているのかを把握(算定)しましょう。電気・ガス・ガソリンの使用量から計算可能です。現状を知らなければ、実効性のある削減計画を立てることはできません。
「中小企業版SBT」を取得し、確実な削減を
脱炭素への取り組みを「言葉だけ」にしないために、現在多くの企業が取得を目指しているのが「SBT(Science Based Targets)」という国際的な認定の取得です。
なぜ「SBT」が注目されているのか
SBTとは、パリ協定が求める「世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える」という目標に基づき、科学的な根拠をもって設定された削減目標のことです。
これまでの「なんとなくエコ」という目標ではなく、「世界基準の物差しで測った正しい目標」として認められるため、国内外の取引先からの信頼が格段に高まります。
SBT取得がもたらす中小企業へのメリット
通常、SBT認定を受けるには非常に複雑な工程が必要ですが、要件を満たした企業には「中小企業版SBT」という簡略化された申請ルートが用意されています。
- 信頼の証明: 「当社はSBT認定を受けています」と言えることで、大手企業との商談がスムーズに進みます。
- 社員の意識改革: 明確な数値目標があることで、現場の省エネ意識が向上します。
- 将来のリスク回避: 段階的に排出を減らすロードマップができるため、将来の炭素税導入などにも慌てずに対応できます。
(参考:環境省『排出量削減目標の設定』)
CO2排出量削減はコストではなく投資。未来の競争力を高めるために
本記事では、火力発電のCO2排出データから、世界の現状、そして中小企業が取り組むべき具体策までを見てきました。日本の火力発電は、高い技術力で私たちの生活を支えてきました。しかし、これからは火力発電に依存するだけでなく、企業自らが「エネルギーを賢く選び、賢く使う」主体性が求められる時代です。
CO2排出量の削減にかかるコストは、単なる費用の支払いではありません。それは、サプライチェーンから選ばれ続け、エネルギー価格の変動に耐え、優秀な人材を獲得するための「未来への投資」です。まずは自社の排出量を知ることから、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。