CO2削減目標の設定方法|信頼される目標を設定する5つのステップ

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CO2削減の目標設定は、今や企業にとって避けては通れない経営課題です。かつての節目であった2030年は目前の通過点となり、現在は2035年・2040年を見据えた、より高度な温室効果ガス削減目標の策定が求められています。しかし、LED化や再エネ導入など、できることから着手はしているものの「このペースで本当に十分なのか」「経営層に納得感のある説明ができない」いう不安を感じることもあるでしょう。
本記事では、CO2削減への取り組みを単なるコストで終わらせず、将来の成長に向けた投資へと変えるための目標設定方法を解説します。社会から信頼され、社内の合意形成もスムーズにする5つのステップを通じて、実効性のあるCO2削減目標を構築していきましょう。
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- 数値目標を持つことで投資対効果が可視化され、厳しいビジネス環境を勝ち抜くための生存戦略として、自社の優位性を築く大きな武器となります。
- 明確な目標を設けることで、削減の取り組み効果を客観的に評価でき、根拠のある数字を示すことで社内や取引先、金融機関からの信頼が向上します。
- 現状把握から始まる5つのステップに沿って、SBTなどの国際基準を目標設定に取り入れることで、社会の潮流に即した説得力のある目標を策定できます。
CO2削減に「目標」が必要な理由
多くの企業が温室効果ガス(GHG)、主に二酸化炭素(CO2)の排出削減に取り組み始めていますが、具体的な基準がない状態では、施策がどの程度削減に寄与したのかを正しく評価することが困難です。評価が曖昧なままでは、現場の努力が空回りしたり、社内で取り組みへの温度差が生じたりといった課題も生じやすくなります。
こうした課題を解決し、取り組みを実効性のあるものにするためには、まず「評価の軸」を明確に定めることが欠かせません。具体的な数値目標を掲げることで、初めて投資対効果が目に見える形になり、無駄なエネルギーコストの削減や、本当に効果の高い設備投資を戦略的に選べるようになります。
また、現在のビジネス環境では、温室効果ガスの削減状況を問われる場面が増えており、具体的な数値目標を持つことは「生存戦略」に直結します。明確な目標を定めることは、単なるリスク回避に留まりません。それは、新たな事業機会の創出や企業イメージの向上、そして地球規模の社会課題への対応を同時に実現するプロセスです。曖昧な言葉を具体的な数値へと置き換える姿勢こそが、取引先や金融機関、そして社会から選ばれ続けるための不可欠な経営基盤となるでしょう。
日本が進めるCO2削減の指針と現状
企業が目標を立てる上で前提となる、日本政府の削減目標と、最新の達成状況について整理します。
日本の削減目標
日本政府は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これを受け、中間目標として2021年4月には「2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減し、さらに50%の高みを目指す」という野心的な目標を掲げています。
さらに、日本は2025年2月18日に、新たな日本のNDCをUNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局へ提出しました。この計画は、世界全体での「1.5℃目標」の水準に沿った内容であり、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、2035年度に60%削減、2040年度には73%削減(いずれも2013年度比)を目指すことが明記されています。
| NDCとは NDC(Nationally Determined Contribution)(「国が決定する貢献」)とは、パリ協定※に基づき各国が5年ごとに提出・更新する温室効果ガスの排出削減目標です。日本をはじめとする世界各国がUNFCCC事務局にNDCを提出しています。 なお、我が国において、NDCとしてUNFCCC事務局に提出される削減目標は、地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画である地球温暖化対策計画において掲げられている削減目標と同様です。 ※パリ協定:2015年のCOP21で採択された、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際的な枠組み。気候変動に関する初の法的拘束力のある国際的な条約であり、2020年以降も世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より低く、1.5度に抑えるよう努力することが決められた |
これにより、企業においても2030年という目前のゴールを通過点と捉え、その先の2035年、2040年に向けた中長期的な視点での排出削減計画(ロードマップ)を検討することが、持続可能な経営を実現するための新たなスタンダードとなりつつあります。
日本の排出状況
一方で、日本の排出状況はどうなっているのでしょうか。
環境省が公表した資料(2023年度分)によると、日本の温室効果ガス排出・吸収量は約10億1,700万トン(CO2換算)となっています。これは、基準年である2013年度(13億9,500万トン)と比較すると、27.1%(3億7,810万トン)の減少です。

一定の減少傾向にはあるものの、2030年度の46%削減、さらにその先の60%〜70%台という高い目標を達成するためには、現在の削減ペースを一段と速める必要があります。政府による率先した取り組みと並行して、産業部門やオフィスなどの事業者の主体的な省エネや再生可能エネルギーへの転換をさらに加速させていくことが喫緊の課題となっています。
(参考:環境省『日本のNDC(国が決定する貢献)』『2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について』、経済産業省 資源エネルギー庁『第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組』)
企業がCO2削減目標を策定するメリット
削減目標を立てることは、単に環境への配慮を示すだけではありません。経営戦略としての側面も強く、企業の持続可能性を高めるための「投資」としての意義があります。
目標があると施策を具体化しやすい
「いつまでに」「どの程度」削減するかを数値化することで、現在行っている取り組みが目標達成に対してどの程度寄与しているかを客観的に評価できるようになります。
例えば、自社の電力使用量や化石燃料の消費量を正確に把握し、削減目標と照らし合わせることで、まずは「LED照明への交換から着手」するのか、それとも「再生可能エネルギーの導入を優先すべき」かといった判断が明確になります。数値という共通言語があることで、部門間での協力も得やすくなり、全社一丸となった実効性のある活動へと展開しやすくなります。
社内外の信頼性が高まる
現在、多くの大企業がサプライチェーン全体の排出量削減に注力しています。これに伴い、取引先である中小企業に対しても、排出量の算定結果や具体的な削減目標の提示を求めるケースが急増しています。
明確な削減目標を持ち、それを公表している企業は、取引先から「気候変動リスクを適切に管理できている信頼できるパートナー」と評価されます。特に、パリ協定が求める水準に整合した、科学的根拠のある目標である「SBT(Science Based Targets)」を取り入れることで、自社の目標に客観的な裏付けが加わり、対外的な説得力はより強固なものになります。
こうした姿勢は、新規案件の獲得や既存取引の維持において大きなアドバンテージとなるだけでなく、環境意識の高い若年層を中心とした人材採用においても「企業の誠実な姿勢」として大きな魅力に映ります。明確な数値目標を掲げることは、ビジネスチャンスの拡大と優秀な人材の確保という、多方面での社会的価値の向上に直結します。
CO2削減目標設定の5ステップ
信頼される削減目標を具体化する際、検討の土台となるステップの一例を紹介します。各プロセスを順に整理することで、社内での合意形成や、社外への根拠のある説明がしやすくなります。
1.基準年の排出量を算定
まずは、目標の起点となる「基準年」を定め、その年度のCO2排出量を把握することから始めます。実務上は、データの精度が確保しやすい直近の年度(例:前年度)を基準に据えるのがスムーズです。 算定にあたっては、まず自社が直接排出する「Scope1」「Scope2」の把握を優先し、その次に原材料調達などのサプライチェーンに関連する「Scope3」へと、段階を追って範囲を広げていくことで、無理なく現状を可視化できます。
2.目標年を決定
かつての主要目標だった2030年度は、今や目の前の通過点です。実効性のある次の中期目標として「2035年度」や「2040年度」を主軸に設定することが、長期的なロードマップを描く上で重要となります。2050年のカーボンニュートラルから逆算し、整合性の取れた節目を設定しましょう。
3.削減率・目標排出量を計算
過去の実績に基づいた予測だけでなく、2050年の「排出ゼロ」というゴールから逆算して、今必要な削減量を検討することが重要です。
国の目標値(2013年度比で2035年60%減)などを参考にしつつ、自社の基準年から目標年までの期間において、国際基準(SBTなど)が求める削減ペース(例:年率4.2%以上の削減)に整合しているかを確認しながら数値を定めます。
4.社内の体制整備
目標を形骸化させないためには、経営層による発信と実行体制の構築が不可欠です。これを単なる環境対策ではなく、将来のエネルギーコスト高騰や炭素規制を回避するための「経営投資」と位置づけることで、社内の協力が得やすくなります。
5.定期的な見直し・改善
目標は一度立てて終わりではなく、社会情勢や技術革新に合わせて柔軟にアップデートしていく姿勢が重要です。
実際、NDCはパリ協定に基づき「5年ごと」の更新が義務付けられており、国際的な基準であるSBTにおいても、最新の気候科学の知見と乖離(かいり)がないよう「少なくとも5年以内」の目標の見直しが求められています。
このように、公的な枠組みにおいても定期的な見直しは「必須のプロセス」として組み込まれています。企業においても、毎年排出量を算定して進捗をチェックする仕組みを持つことで、実施している施策の有効性を検証し、変化の激しいビジネス環境においてステークホルダーからの信頼をより確かなものにできます。
参考:よく見られる削減方法の例
目標を立てた後は、それをどう達成するかという具体的な施策の検討に入ります。多くの企業で導入されている代表的な削減方法を、Scope(排出の区分)ごとに整理しました。自社の事業特性に合わせて、効果の高いものから検討を進めるのがスムーズです。
| 区分 | 削減方法の具体例 |
|---|---|
| Scope1 (直接排出) | ・社用車のEV・ハイブリッド化・ボイラーなどの燃料転換 |
| Scope2 (間接排出) | ・LED照明・高効率空調への更新・太陽光発電設備の設置(自家消費)・非化石証書の購入、再エネプランへの切替 |
| Scope3 (その他の排出) | ・物流の効率化(モーダルシフトなど)・低炭素原材料の調達・廃棄物の削減・リサイクル推進 |
| モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。現在では、環境負荷の低減は多くの企業で社会的責任(CSR)と位置付けて、商品の生産から廃棄にいたる全ての場面で取り組まれていますが、その中で輸送(物流)における環境負荷の低減にはモーダルシフトや輸配送の共同化、輸送網の集約等の物流効率化が有効です。その中でも、特にモーダルシフトは環境負荷の低減効果が大きい取り組みです。 |
信頼される目標を設定するには?
自社で掲げた数値目標を、外部から「信頼されるもの」にするためには、自社独自の判断だけでなく、社外の誰もが納得できる「客観的なものさし」を用いることが近道です。
「なぜその数値なのか」という問いに対し、根拠を持って答えられることは、取引先や金融機関からの評価に直結します。そこで、多くの企業が共通の基準として活用しているのが、国際的なイニシアチブである「SBT」の考え方です。
SBTに沿って目標を立てることは、自社の削減計画が「世界の気候科学が求める水準」と一致していることを証明する手続きとなります。この客観性こそが、対外的な信頼を勝ち取り、新しい取引や商機を広げるための強力な大きな後押しとなります。
中小企業版SBTの特徴
「国際基準」と聞くと準備が大変そうに思えますが、特定の要件を満たす企業には、手続きを簡略化した「中小企業版SBT」という専用の枠組みが用意されています。
通常、SBT認定にはサプライチェーン全体(Scope3)の厳密な算定が必要ですが、中小企業版ではScope1・2の削減目標のみで申請が可能です。算出に工数がかかるScope3については、目標設定が「必須ではない(任意で設定も可)」とされているため、リソースが限られた企業でも着実に「信頼される目標」を公表できる仕組みになっています。
SBT認定を取得するメリット
SBT認定を取得することで、以下のようなメリットが得られます。
- 科学的根拠に基づいた脱炭素経営に取り組みやすくなる
- ESG投資への好影響が期待できる
- 新規取引の獲得につながる
- 中長期的にコストを削減できる
- イノベーションの創出につながる
SBT認定を取得するメリットについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
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事業継続のために信頼される目標を設定しよう
CO2削減への取り組みは、もはや単なる社会貢献ではなく、変化する市場環境において確かな信頼を築き、企業が生き残るための「経営戦略」へとシフトしつつあります。現在、私たちはかつての目標であった2030年を通過点とし、2035年や2040年を重要な節目と捉える2050年のカーボンニュートラル実現に向けた新たなフェーズへと進みました。
最終的なゴールである2050年を見据えて逆算し、SBTなどの客観的な基準に基づいた「信頼される目標」を掲げることは、取引先や金融機関との連携を強めるだけでなく、無駄のない効率的な投資判断を可能にします。目標設定を一度きりの作業で終わらせず、社会の動きに合わせて見直し続ける誠実な姿勢こそが、数年後の自社の競争力を創り出す確かな基盤となるはずです。まずは現状の把握から、持続可能な成長に向けた確かな一歩を踏み出してみましょう。
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