【法人】テレマティクス保険とは?仕組みやメリット・脱炭素への活用法

テレマティクス保険を自社に導入すべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか?本記事では、通信端末で運転データを取得して保険料を算出する仕組みや導入メリット、注意点を詳しく解説します。これを読めば、社用車の事故削減や車両管理の効率化に向けた社内での取り組みが進めやすくなるでしょう。さらに、取得した運転データを脱炭素経営に活かす実践的な方法も紹介していますので、ぜひご一読ください。
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- テレマティクス保険は通信端末から運転データを取得し、安全運転スコアなどに基づいて保険料を算出する仕組みです。
- 法人が導入することで、保険料の適正化や迅速な事故対応、管理システムによる車両管理の効率化が実現できます。
- 取得した車両ごとの詳細な走行データを活用することで、企業のCO2排出量の算定と削減にも役立ちます。
テレマティクス保険とは?
テレマティクス保険は、自動車と通信技術を組み合わせ、実際の運転状況に基づいて保険料を算出する仕組みの自動車保険です。ドライバーの安全運転意識を向上させる効果が期待されており、多くの企業で導入が進んでいます。
近年では単なる保険商品にとどまらず、社用車の安全運転管理や業務効率化のツールとしても注目を集めるようになりました。
(参考:国土交通省『第9回 自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン検討会(テーマ1 第2回)の開催について』)
通信端末(ドライブレコーダーなど)から運転データを取得する仕組み
テレマティクス保険の仕組みを知る前に、まずはテレマティクスそのものについて解説します。
テレマティクスとは、自動車などの移動体に通信システムを組み合わせ、リアルタイムに情報サービスを提供する「自動車のICT化」とも評される仕組みのことです。主に通信機能を持ったドライブレコーダーやカーナビゲーション、スマートフォンなどが通信端末として利用されています。
これらの通信端末を通じて取得されるデータには、走行距離や走行時間、走行速度、急ブレーキや急発進の回数などが挙げられます。このデータを活用することで、ナビゲーションや盗難時の自動通報といったサービスを利用できるようになるのが特徴です。さらに日々の車両管理においては、エンジンやタイヤにかかる重量などの詳細な情報を通信で取得し、車両故障の早期発見や予防整備に役立てることも可能です。
テレマティクス保険は、このテレマティクスの仕組みを活用しています。収集されたデータはクラウドシステムに送信され、保険会社によって分析・スコア化される仕組みです。運転者の年齢や過去の事故歴といった統計情報から算出される従来の自動車保険とは異なり、この客観的なデータ分析が新たな保険料算出の基盤となっています。
保険料を算出する2つの方式(PAYD・PHYD)
テレマティクス保険料の算出方法には、大きく分けて「走行距離連動型(PAYD)」と「運転行動連動型(PHYD)」の2つが存在します。
■走行距離連動型と運転行動連動型の違い

PAYDは走行距離の長さによって保険料が変動し、PHYDは運転速度や急ブレーキなどの運転特性から運転が安全か危険かを判断して保険料が決まります。
テレマティクス保険を導入する3つのメリット
法人がテレマティクス保険を導入することで得られる、具体的な3つのメリットについて詳しく解説していきます。
(参考:国土交通省『事業用自動車の安全対策』)
1.保険料の適正化|安全運転スコアで保険料割引の可能性
メリットの一つは、安全運転の取り組みが保険料の割引につながる可能性がある点です。PHYDを導入した場合、毎月の運転スコアに基づいて「安全運転割引」が適用される場合があります。
企業全体で安全運転の教育を推進すれば、スコア割引によるコスト削減が見込まれるほか、事故が減少することで車両の修理費用や、事故対応に伴う業務のダウンタイム(稼働停止時間)といった「見えないコスト」の削減にもつながるでしょう。日々の運転姿勢が客観的な数値として評価されるため、結果だけでなくプロセスも評価されるのが特徴です。
2.迅速な事故対応|衝撃検知による自動通報機能
テレマティクス保険の通信端末の多くは、一定以上の強い衝撃を検知した際に、自動で損害保険会社の提携するサポートセンターへ通信をつなぐ機能が備わっています。これにより、万が一の自動車事故発生時にも、迅速かつ適切な事故対応サービスを受けられるのが特徴です。ドライバーが負傷して自ら連絡できないような場合でも、必要に応じて救急車やレッカー車の手配などを進めてくれます。また、ドライブレコーダー連動型であれば、事故前後の映像データが自動送信されるものもあり、事故状況の正確な把握と示談交渉の円滑化にも役立ちます。
3.車両管理の効率化|専用システムで稼働状況を可視化
テレマティクス保険を導入すると、保険会社が提供する専用の管理システムを利用できるケースが多く見られます。このシステムを通じて、全社用車の現在位置や稼働状況をリアルタイムで把握しやすくなります。
管理者は、収集した詳細な走行データを活用することで、一歩踏み込んだ車両管理が可能になるでしょう。例えば、急ブレーキや急発進といった危険挙動のデータを基にした客観的な安全指導をはじめ、現在地に基づく最適な配車指示や配送ルートの見直しによる業務効率化が図れます。さらに、アイドリング時間や燃費の分析を通じてエコドライブを推進するなど、単なる事故防止にとどまらず、コスト削減や環境負荷の低減にも役立てることも可能です。
テレマティクス保険の導入前に把握しておきたいデメリット・注意点
メリットの多いテレマティクス保険ですが、導入にあたっていくつか気をつけるべき点が存在します。事前の準備や社員への説明が不足していると、思わぬトラブルを招く可能性があります。
ここでは、導入前に必ず把握しておくべき3つの注意点を解説していきます。
1.運転スコアが低いと割引適用外|コスト削減には継続的な安全運転指導が必要
運転行動連動型(PHYD)において運転スコアが低く判定された場合、「ペナルティとして保険料が割増になる」と誤解されがちですが、基本的には「安全運転割引が適用されない(基本の保険料のまま)」という仕組みです。
しかし、テレマティクス保険の多くは、通信端末のレンタル代や情報サービスの特約保険料などが上乗せされるケースが一般的です。そのため、急ブレーキなどの危険運転が多くて安全運転スコアが基準を下回ると、割引が適用されないばかりか、結果として従来型の自動車保険に加入するよりもトータルの費用が割高になってしまうリスクがあります。
つまり、テレマティクス保険は単に導入するだけで自動的にコストが下がるわけではなく、運転スコアが低いと余分な費用と管理の手間がかかる結果となってしまいます。したがって、管理者はスコアに応じた適切な指導を行い、会社全体で安全運転の意識を高める継続的な取り組みが不可欠です。
2.導入コストと手間|通信端末の設置費用や管理工数の発生
テレマティクス保険を利用するには、通信端末を社用車に取り付ける必要があります。保険会社から専用の通信端末が貸与される場合でも、車両への取付費用(工賃)が生じるほか、通信端末と専用アプリの接続といった初期設定や、ドライバーへの操作説明を行わなければなりません。特に保有台数が多い企業の場合、全車両への展開にはまとまった時間と労力がかかる点に注意が必要です。
さらに導入後は、管理画面で運転スコアやアラートを確認し、ドライバーにフィードバックを行う管理者の業務が新たに発生します。これらの工数をあらかじめ想定し、運用体制を整えておくことが重要です。
3.プライバシーへの懸念|データ取得によるドライバーの心理的負担
通信端末によって走行ルートや運転行動などの個人情報が常に監視されることになるため、ドライバーがプライバシーの侵害だと感じたり、心理的な負担を抱えたりする懸念が生じます。「監視されている」という意識が強すぎると、過度なストレスから逆に業務効率が低下するリスクも考えられます。
この問題を回避するためには、導入の目的が「社員を監視すること」ではなく、「事故を防いで社員の安全を守ること」であることを明確に伝えることが大切です。十分な説明と合意形成を図ることが導入成功の鍵といえるでしょう。
【おすすめ】可視化された運転データを脱炭素経営に活かす3ステップ
テレマティクスで取得したデータは、単なる安全管理にとどまらず、環境対策にも応用可能です。車両ごとの詳細な走行データを活用することで、企業のCO2排出量の算定と削減に役立てることができます。

ここでは、運転データを脱炭素経営に直結させるための具体的なステップを紹介していきます。
ステップ1.現状把握|走行データからCO2排出量を算定
脱炭素経営の第一歩は、自社がどれだけのCO2を排出しているのかを把握することから始まります。テレマティクスのデータを活用すれば、車両ごとの走行距離や燃費情報を取得しやすくなります。これらのデータを用いることで、ガソリンや軽油などの消費量を算出し、CO2排出量(Scope1・2)の計算をサポートすることが可能です。
従来のように、給油レシートや請求書などを集計・計算する手間が省ける場合があるため、脱炭素推進の担当者の業務負担を軽減しながら、スムーズに現状把握を進めやすくなるでしょう。
以下の記事では、中小企業が取り組むべき算定の基本ステップと具体的な計算方法を詳しく解説しています。
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ステップ2.目標設定と削減|データに基づくエコドライブ推進と計画策定
現状の排出量が把握できたら、次はそのデータを基に車両1台あたりの燃料消費量削減といった具体的な目標を設定します。
この目標達成に向けた具体的な削減アクションを進めるうえで、通信端末から得られる運転スコアは、エコドライブの指標としてそのまま活用できるのが強みです。
急発進や過度なアイドリングを減らす指導を行うことで燃費が向上し、結果としてCO2排出量を直接的に削減できるでしょう。安全運転の推進が、環境負荷の低減に直結する仕組みとなります。
また、各車両の稼働状況を分析することで、不要な車両の減車や走行ルートの最適化といった、より根本的な業務効率化の計画を立てることも可能になります。
ステップ3.外部評価の獲得|SBT認定の取得で企業価値を向上
社用車の削減目標やアクションだけでなく、企業全体の削減目標も立ててみましょう。その際にぜひ目指したいのが「SBT(Science Based Targets)認定」の取得です。
SBT認定とは、パリ協定が求める水準に整合した「科学的根拠のあるGHG(温室効果ガス)削減目標」を掲げている企業として、国際機関から公式に認められる仕組みのことです。SBT認定の取得は、投資家や取引先からの信頼向上につながり、サステナビリティを重視する現代のビジネス環境において企業価値を高める大きな武器となります。
テレマティクス保険を足掛かりに、安全と脱炭素経営の両立へ
テレマティクス保険が企業にもたらす価値は、万が一の事故に備える補償や、保険料のコスト削減だけにとどまりません。客観的な運転データを活用して「事故を未然に防ぐ体制」を構築し、自社の安全管理を根本から強化できる大きな利点があります。
安全運転の推進による事故削減と保険料の適正化は、短期的に目に見える大きなメリットとして実感できるでしょう。さらに中長期的には、取得した走行データをCO2排出量の算定や削減目標の達成に活用することで、脱炭素経営に向けた取り組みの後押しとなります。
車両管理のデジタル化は、企業のサステナビリティ活動を支える基盤の一つとなります。自社の安全管理体制を見直しつつ、テレマティクス保険の導入を足掛かりとして、環境とビジネスの両立を目指してみてはいかがでしょうか。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。