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地域脱炭素ロードマップとは?中小企業が果たす役割とSBT取得の意義

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「脱炭素化」は、国や大企業のみならず、中小企業を含むすべての組織にとって避けて通れないテーマです。日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け、その具体的な工程表として推進されているのが「地域脱炭素ロードマップ」です。

本記事は、地域脱炭素ロードマップについて、国の目標や「脱炭素ドミノ」といった全体像から施策例までわかりやすく解説します。さらに、地域の脱炭素化において中小企業が果たすべき重要な役割を明確にし、自社のCO2排出量の見える化と中小企業版SBTの取得を含む具体的な施策例を紹介します。

これを読めば、ロードマップの全貌と、自社が取るべき経営戦略としての取り組みが明確になり、社内での脱炭素推進が大きく前進するでしょう。

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記事の要点
  • 地域脱炭素ロードマップは、国全体のCO2削減目標を達成するため、地域の力で脱炭素化を進め、成功事例を全国に広げる(脱炭素ドミノ)ための計画です。
  • 地域のCO2削減には、事業活動を行う中小企業の協力が不可欠であり、大企業のサプライチェーン対応としても重要になります。
  • 中小企業は、まず排出量を「見える化」し、信頼と競争力を高める中小企業版SBTを取得し、省エネ・再エネ導入を着実に進めましょう。
目次

地域脱炭素ロードマップとは|国の目標と全体像

2021年10月、日本政府は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた「地球温暖化対策計画」を5年ぶりに改定。2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すこと、さらに50%の高みに向け挑戦を続けることを表明しました。

この目標達成の鍵を握るのが、地域の脱炭素化です。「地域脱炭素ロードマップは、国全体の目標成に向け、地域主導で脱炭素化を加速させるための具体的な工程表として策定されました。

地域脱炭素ロードマップ
参考:環境省『地域脱炭素ロードマップ【概要】』を加工して作成

このロードマップの最終的な目標は、2030年度までに、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を創出することです。さらにその成功事例を全国へと展開させ、「脱炭素ドミノ」を生み出すことで、2050年のカーボンニュートラル実現を目指します。

脱炭素先行地域づくりと脱炭素ドミノ

脱炭素先行地域とは、2030年までに民生部門とよばれる家庭部門および業務・その他部門の電力消費に伴うCO2​排出量を実質ゼロにし、運輸部門や熱利用なども含めて、その地域特性に応じCO2削減対策を行う地域のことです。

地方公共団体や企業・金融機関が中心となりながら、国が重点的に資金や技術支援を行います。この先行地域での成功体験やノウハウを全国に広げ、普及・展開していく流れを「脱炭素ドミノ」と呼んでいます。

つまり、「地域脱炭素ロードマップ」は意欲と実現可能性がある地域でモデルケースを確立し、それを全国展開することで、国全体の脱炭素化をしようとする戦略です。以下の記事では脱炭素社会にフォーカスしてさらに詳しく解説しています。

2025年度までの5年間で集中的に実施している重点対策

「地域脱炭素ロードマップ」では、2025年度までの5年間を「集中期間」と位置づけ、全国各地で以下のような重点対策を実施しています。

1.屋根置きなど自家消費型の太陽光発:電建物の屋根などに設置、屋内の電力や電動車で自家消費する太陽光発電の導入。蓄エネ設備と組み合わせることで、災害時や悪天候時の非常用電源の確保も目指す。

2.建築物の省エネ化・脱炭素化:業務ビルでの徹底した省エネと電化。CO2排出係数の低い電力会社との契約や、共同入札などで再生可能エネルギー(再エネ)設備・電気を効率的かつ安価な調達を行う。また建物改修の際は、再エネや蓄エネ設備を導入してZEB化を推進する。

3.モビリティの電化・脱炭素化:EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などの普及、充電インフラの整備。また、災害時には非常用電源としても機能し、地域のエネルギーレジリエンスを強化する。

4.地域共生型の取り組み:一次産業や地元企業と連携し、土地を有効活用して地域に利益をもたらす再エネ開発を費用効率よく進める。

これらの対策は、先行地域づくりを具体的に後押しし、脱炭素ドミノの基盤を作るための重要な柱となります。

【環境省が公表】ロードマップ見直しと検討会の動き

環境省はロードマップの推進を通じて生じた課題について議論するため、「地域脱炭素ロードマップ検討会」などを開催しています。

検討会では、先行地域の成功事例の共有や、制度上の課題、資金支援のあり方などが議論されており、この議論を経て、ロードマップの改定や関連施策の強化が進められています。この検討会のエッセンスが取り入れられ、2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画において、2026年度から2030年度までの5年間が「実行集中期間」として位置付けられました

中小企業においてもこれらの動向を注視することは、自社の事業戦略や取り組みの方向性を定める上で非常に重要となります。

脱炭素先行地域の選定状況

脱炭素先行地域は全国の地域脱炭素の模範となり「脱炭素ドミノ」の起点となることが期待されています。国は定期的に公募と選定を行っており、先行地域として選定されるためには、地域特性を踏まえた以下の要素が評価されます。

1.脱炭素と地域課題の同時解決:地域の資源を最大限に生かし、脱炭素化と地方創生(防災、快適性、経済、雇用、循環経済など)を同時に実現する具体的なビジョンが示されていること。

2.地域経済循環への貢献:再エネを最大限に導入し、地域エネルギー会社などを通じて、地域外へ流出していたエネルギーの対価を地域内に還流させ、地域内の投資と所得の向上に貢献していること。

3.先進性・モデル性の打ち出し:選定地域が増えるにつれ、新たに選ばれる地域には、既存の事例を超える、これまで以上の新たな先進性・モデル性の打ち出し(地域課題解決の手法や、需要家・エリア設定などに関して、既選定地域での取り組みと差別化され、優れている点を示す必要がある)。

第6回までに選定された地域では、それぞれの地域特性に応じた先進性・モデル性のある取り組みを実施しています。

取り組み事例の紹介

全国各地に広がる地域脱炭素の取り組みについて、3つの事例を紹介します。

【事例1】東京都葛飾区/既存校舎の断熱改修とZEB化

東京都葛飾区では、既存校舎の断熱改修とZEB化を試験的に推進し、省エネ効果やコスト、学校運営への影響を把握しました。この取り組みにより、光熱費削減や良好な学習環境の確保につながっています。また区と区内の設計事務所や工務店などが連携しながら、技術者のスキルアップや経験の蓄積を目指しています。

【事例2】山形県庄内町/風力発電所の設置

山形県庄内町では、地元の事業者が風力発電所を作りました。売電収入の一部は林道整備や農林業発展に活用しています。さらに地元の会社が工事や点検を担当することで、地域経済の循環促進と活性化につながっています。

【事例3】長崎県対馬市/バイオマス熱の利用

長崎県対馬市では、地域で出た木材の燃焼熱(バイオマス)を燃やして、その熱を温浴施設で使うエネルギーに変えていま。地元の会社がエネルギー供給を担い、燃料費の削減とCO2排出量削減を実現しながら、地域外へ流れていた経済の流れを抑え安定化させました。地域の資源と企業を循環させることで、災害時の備えや地域経済の活性化にも貢献する持続可能な仕組みです。

実は中小企業にとって重要な地域脱炭素ロードマップ。その理由とは

地域脱炭素ロードマップは、自治体や大企業だけの問題ではありません。地域経済を支える中小企業こそ、その実現の鍵を握っています。このロードマップへの対応は、事業の継続性と競争力を左右する、重要な経営課題となりつつあるのです。その理由を詳しくみていきましょう。

自治体だけでは実現が難しい

脱炭素化の取り組みは、自治体や大規模なインフラ事業だけでは完結しません。地域のエネルギー消費の多くを占めるのは、中小企業の事業活動や建物、そして従業員の移動や消費活動です。自治体が枠組みを作っても、その中で活動する中小企業が主体的に取り組まなければ、地域のCO2排出量実質ゼロは実現しません

サプライチェーン全体で取り組む必要がある

上場企業や大企業は、投資家や金融機関から脱炭素への取り組みを強く求められており、自社の排出量(Scope1,Scope2)だけでなく、サプライチェーン全体での排出量(Scope3)の削減目標を設定し始めています。

サプライチェーン排出量のうち、原材料調達や製造、物流などを担う取引先(多くは中小企業)からの排出量が大きな割合を占めることが多く、大企業は取引先に対し、排出量の報告や削減を要請する動きが加速しています。

トヨタ自動車は、数百社の仕入先に対して、一定のレベルを満たすCO2削減目標を立てることを要請しています。大企業との取引継続や新規取引の獲得において、脱炭素への取り組み、特に再エネ利用などは、今後ますます必須条件となっていくでしょう。

地域の中小企業が脱炭素化に取り組むことは、その地域の経済循環にも寄与します自社の工場や店舗に屋根置き型の太陽光発電を導入したり、地域の新電力会社から再エネ電力を購入したりすることは、地域の脱炭素化に貢献するだけでなく、地域経済の活性化にも直結するのです。地元の再エネを最大限活用することで、お金の流れを地域の中に戻し、新たな投資や地元の人たちの所得向上に貢献することが「ロードマップ」が目指す大きな目標の一つです。

中小企業が脱炭素に取り組むことで、省エネによるコスト削減や、地域の再エネビジネスへの参加、そして地域内での経済循環の促進といったメリットを得ることができ、地方創生の大きな力となります。

地域脱炭素に向け、中小企業が取り組む施策例

地域脱炭素ロードマップの目標達成に不可欠な存在である中小企業は、具体的にどのような施策に取り組むべきでしょうか。

ここでは、「まずはここから始めるべき」というステップと、その後の具体的な削減策を紹介します。

自社排出を見える化し、目標を設定する|中小企業版SBTの取得

まずは自社の電力・燃料使用量などからCO2排出量を算定し、現状を把握しましょう。排出量を把握するだけでなく、国際的な科学的根拠に基づいた目標である「中小企業版SBT」を取得することは、大企業が求めるCO2削減に「公式に対応している証」となり、取引継続や新規参入における競争力アップにつながります。中小企業版SBTの申請方法については以下で詳しく解説しています。

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省エネ・再エネを導入して排出量を削減する

目標設定後、省エネを徹底し、再エネを導入します。具体的には、照明をLEDに、ボイラーや空調を高効率ヒートポンプ式へ更新し、消費量を削減します。これらの取り組みは、電気代を大幅に削減するだけでなく、太陽光や蓄電池などの活用により、災害時の電力確保(レジリエンス強化)につながります。

省エネ・再エネ導入は、排出削減という責任を果たすと共に、コスト削減と災害に強い企業体制を築く、「攻め」と「守り」を両立させる戦略です。以下の記事では、国内の中小企業の具体的な省エネへの取り組みを紹介しています。

地域プロジェクトや脱炭素連携への参画

中小企業が脱炭素を進める際の資金や技術的な課題を乗り越えるには、地域やサプライチェーンとの「連携」が不可欠です。

中小企業の脱炭素は、地域やサプライチェーンとの「共創」で実現します。 自治体がコンソーシアムを組み、排出量算定ツールや補助金で中小企業を技術面・資金面から支援する事例があります。こうした連携の輪に加わり、課題を解決しながら共に成長しましょう。

地域脱炭素の実現には企業の力が不可欠。身近な取り組みから着実に前進を

国が地域脱炭素ロードマップで目指す「脱炭素ドミノ」の実現には、地域のエネルギー消費を担う中小企業の力が不可欠です。地域の脱炭素化への取り組みは、取引先である大企業の要請への対応だけでなく、エネルギーコストの削減、地域のレジリエンス(災害対応力)強化、そして地域経済の活性化に直結します。

何から始めるか迷う場合は、まずは排出量を算定してみましょう。その上でSBTのような国際的な基準に基づいた目標を設定し、省エネや再エネ導入といった身近な対策を講じるというように、一歩ずつ着実に前進することが重要です。地域脱炭素ロードマップの目標達成は、私たち一人ひとりの意識と、地域社会を支える中小企業の取り組みが結びつくことで初めて実現します。ぜひ本記事を参考に、自社の持続可能な成長と、豊かな地域社会の未来のために、脱炭素への取り組みを加速させましょう。

HELLO!GREEN

執筆:HELLO!GREEN編集部

HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。

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