コージェネレーションシステムの種類と仕組みをわかりやすく解説。事例紹介も

近年、地球温暖化対策やエネルギーの安定供給への関心の高まりとともに、「コージェネレーションシステム」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。このシステムは、エネルギー利用効率を高めることで、企業の省エネ・コスト削減に貢献し、さらには脱炭素経営の強力な推進力になるとして注目を集めています。
しかし、「仕組みが複雑そう」「種類がたくさんあってよくわからない」「導入にどんなメリットがあるの?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
本記事では、コージェネレーションシステムの基本から、ガスエンジンや燃料電池などの種類、具体的な導入事例、メリットやデメリットまでをわかりやすく解説します。コージェネレーションシステムへの理解を深め、脱炭素経営やBCP対策への取り組みにお役立てください。
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- コージェネレーションシステムとは、一つの燃料で電気と熱を同時に作るシステムです。
- コージェネレーションシステムには、ガスエンジンなどの内燃機関式や、高効率な燃料電池式などがあります。
- 排熱利用によりエネルギーコストを削減。また、災害時の停電下でも独立して電気と熱を供給でき、BCP対策にもつながります。
コージェネレーションシステムとは
コージェネレーションシステム(コージェネ・コジェネ)とは、一つの燃料から「電気」と「熱」の二つのエネルギーを同時に作り出すシステムのこと。熱と電気を同時に生成するということから、「熱電併給システム」とも呼ばれます。
通常の発電所では、発電の際に発生する排熱(熱エネルギー)の多くは利用されずに大気中に放出されます。これに対し、コージェネレーションシステムは、発電時に発生する熱エネルギー(排熱)を有効活用します。これにより、エネルギーの利用効率を大幅に向上させることが可能です。
コージェネレーションシステムの仕組みを簡単に
従来のエネルギー供給方法と、コージェネレーションシステムのエネルギー利用方法を比較しながら、その仕組みを簡単に見ていきましょう。

従来のエネルギー供給方法は、例えば、火力発電所で発電された電気は送電線を経由して工場やビル、家庭といった需要地に送られます。この過程で、発電時に生じる膨大な排熱の大部分は活用されずにそのまま捨てられてしまい、燃料が持つ総合的なエネルギー効率は40%程度にとどまるのが現状です。
さらに、送電中に電力の一部が失われる「送電ロス」も発生します。また、給湯や暖房に必要な熱エネルギーは、電力とは別に利用場所でボイラーなどの熱源設備で賄う必要があり、電気と熱を別々に供給する構造となっています。
一方コージェネレーションシステムでは、工場やビル、病院、商業施設、家庭といったエネルギーを使用する場所に機器を設置して発電を行います。この発電の過程で発生する排熱を、給湯や空調(冷暖房)、蒸気として利用します。つまり、電気と熱を同時に供給できるシステムなのです。
この排熱の有効活用により、エネルギーの総合的なエネルギー効率は約75~80%にまで向上するとされています。これは、従来のエネルギー供給方法と比較して、同じ燃料からより多くのエネルギーを取り出せることを意味します。
(参考:環境省SHIFT事業ウェブサイト『用語集』、資源エネルギー庁『コジェネについて』)
コージェネレーションシステムの種類
コージェネレーションシステムは用いられる発電方式や燃料によって、いくつかの種類に分けられます。主な種類は次の三つです。
内燃機関を活用
この方式は、内燃機関(エンジン)を利用するコージェネレーションです。燃料(都市ガス、LPG、バイオガスなど)を燃焼させて動力を得て発電機を回す方式で、主に「ガスエンジン」や「ディーゼルエンジン」などが用いられます。家庭、業務建物、産業用など幅広い分野で利用できるのが特徴です。
ボイラー&蒸気タービンを活用
これは、ボイラーで燃料を燃やし、発生させた蒸気で蒸気タービンを回して発電するシステムです。タービンを回した後の蒸気を熱として再利用することで、熱電併給を実現します。大規模な産業用プラントなど、大量の蒸気をプロセス熱として利用する施設で採用されるシステムです。
燃料電池を活用
燃料電池を利用する方法もあります。内燃機関など原動機を用いるシステムより騒音や振動が少ないのが特長となっています。燃料(都市ガス、LPG)の化学エネルギーを直接電気に変換するため、発電効率が高いです。家庭用や自動車向けの固体高分子形(PEFC)と、工場・業務用や家庭用に適している個体酸化物形(SOFC)の2種類があります。
表にまとめると以下のようになります。
| 種類 | ガスエンジン | ガスタービン | 燃料電池 |
|---|---|---|---|
| 特徴 | ・電力需要の割合が高い業務用に適用 ・一日の需要変化に合わせた起動停止(DSS)運転 ・排熱は温水・蒸気として回収 | ・比較的大きな熱需要を伴うため、発電容量が多い(MWクラス)場合に適用 ・排熱は排ガスボイラーにより蒸気として回収 | ・原動機を用いるシステムより騒音・振動が少ない ・固体高分子形(PEFC)は作動温度が約90℃と低い ・個体酸化物形(SOFC)は作動温度が700~1000℃と高い |
| 燃料 | 都市ガス、LPG、バイオガス | 都市ガス、LPG,灯油、軽油 | 都市ガス、LPG |
| 発電効率(%) | 200kW級:35% 10MW級:49%(低位発熱量) | 20~35% | PEFC:30~37% SOFC:40~50% |
| 総合効率(%) | 200kW級:76% 10MW級:84% | 50~60% | 87~94% |
| 対象分野 | 家庭、業務建物、産業用 | 産業用プラント、地域熱供給 | PEFC:家庭用、自動車 SOFC:工場・業務用、家庭用 |
コージェネレーションシステムのメリット
コージェネレーションシステムを導入することで、企業や施設はエネルギー利用の効率化だけでなく、環境面やBCP対策(事業継続計画)の面でも大きなメリットを得ることができます。主なメリットをみてみましょう。
エネルギーコストが削減できる
最大のメリットの一つは、エネルギーコストの削減です。
コージェネレーションシステムは総合効率が高く、少ない燃料でより多くの電力と熱を生み出すことができます。これにより、外部からの電力供給や燃料購入の量を減らすことができ、結果的にエネルギーコストの削減につながります。
また、燃料として比較的安価な天然ガスや都市ガスを利用する場合が多く、燃料選択の自由度が高いこともコスト面でのメリットとなります。特に、電気料金が高騰する昨今、自家発電できる体制は大きな強みとなります。
BCP対策の備えとなる
コージェネレーションシステムは、BCP対策の面でも重要な役割を果たします。
地震や台風などの自然災害によって広域な停電が発生した場合でも、施設内に発電設備を持つコージェネレーションシステムは、燃料(特に都市ガスや天然ガス)の供給が継続されていれば、独立して発電(常用発電)を続けることが可能です。
これにより、災害時でも、病院、データセンター、商業施設、避難所となる施設などで、必要最低限の電力供給と熱供給(暖房、給湯など)を継続でき、事業の早期復旧や人命の安全確保に大きく貢献します。
CO2排出量を削減できる
環境問題への意識の高まりから、企業によるCO2排出量の削減は喫緊の課題となっています。コージェネレーションシステムは、この課題解決に大きく貢献します。
高い総合効率により従来方式よりも少ない燃料で同じ量のエネルギーを生み出すため、CO2排出量を削減できます。
また、燃料として天然ガスや都市ガス(主成分がメタン)を用いるシステムは、石炭や石油といった他の化石燃料と比較して、CO2の排出量が少ないという特徴があります。これにより、脱炭素経営やESG経営を推進する企業にとって、重要な技術的手段となります。
コージェネレーションシステムのデメリット
コージェネレーションシステムは多くのメリットを持つ一方で、その導入と運用にはいくつかの課題やデメリットが伴います。これらの課題を事前に把握し、適切な解決策を講じることが、コージェネレーションシステムを最大限に活用し、脱炭素経営を成功させる鍵となるでしょう。
初期導入コストやメンテナンスコストがかかる
コージェネレーションシステムは、発電機や熱回収装置といった高度な設備を一式導入するため、初期導入コストが高額になりがちです。また、発電を担う機械システムであることから、安定稼働のために定期的なメンテナンスや部品交換が必要となり、メンテナンスコストも運用上の課題となります。
初期費用の負担を軽減する方法のひとつとしては、企業が国や自治体の補助金・助成金制度を活用することがあげられます。また、投資判断においては、初期コストだけでなく、エネルギー効率の向上による長期的なコスト削減効果を総合的に評価することが重要です。
熱の利用先を確保する必要がある
コージェネレーションシステムの最大の特長である高い総合効率は、発電と同時に生じる熱(排熱)をどれだけ有効に利用できるかに依存します。もし熱需要が少ない、あるいは季節によって変動が大きい場合、回収した熱を廃熱として捨てざるを得ず、システムの効率が低下してしまいます。
この課題に対応するためには、熱需要と電力需要のパターンを詳細に分析し、熱の利用を最大限にできる規模のコージェネレーションシステムを選定することが基本です。さらに、吸収式冷凍機による冷房利用や、蓄熱設備の導入によって、熱の利用先を多様化・平準化することで、廃熱を減らし、高い総合効率を維持できます。
コージェネレーションシステムの導入事例
コージェネレーションシステムは、そのメリットからさまざまな産業用途や施設で導入が進んでいます。ここでは、具体的な導入事例を三つ紹介します。
IKEUCHI GATE
北海道のIKEUCHI GROUPでは、複合商業施設「IKEUCHI GATE」の改修プロジェクトにおいてガスエンジンコージェネレーションシステムを導入しました。寒冷地域における「ZEB ready(ZEBの達成に向け、高効率な省エネ技術で基準から50%以上エネルギー消費量を削減した建物)」化およびレジリエンスの強化の両立を目指したものです。
コージェネレーションシステムによる発電電力の使用や、排熱を空調や吸収式冷凍機・冷温水機で活用することで省エネを図っています。また、コージェネレーションシステムは非常時に活用できるため、BCP対策にもつながりました。
むつざわウェルネスタウン
千葉県睦沢町のCHIBAむつざわエナジー株式会社は、むつざわウェルネスタウン(道の駅・各住宅)に天然ガスコージェネレーションシステムによる電力を電力系統や太陽光と組み合わせて供給しています。
2019年9月の台風15号によって発生した大規模停電時も、再エネとコージェネレーションシステムにより電力を供給することができました。
【貢献例】寒波による電力逼迫時、工場発電で地域をサポート
2021年1月、寒波に伴う暖房需要の急増で電力不足が懸念されました。そこで、アサヒグループホールディングス株式会社は、東京電力パワーグリッド株式会社からの要請に応じ、電力提供を実施しました。
その電力提供で利用されたのが、同グループのアサヒビール茨城工場、アサヒ飲料群馬工場、アサヒグループ食品栃木さくら工場の製造拠点に設置されているコージェネレーションシステムです。これらのコージェネレーションシステムの操業を上げ、発電量を増加させることで、工場での電力受電量を最大限低減したほか、一部の電力を電力会社に供給しました。商品の製造量が少ない時間帯にもコージェネレーションシステムを稼働させることで発電量を増やすことも計画しています。
この取り組みは、コージェネレーションシステムが持つエネルギー効率の高さと分散型電源としての能力により、企業の省エネルギーとCO2削減だけでなく、社会的な電力需給逼迫時にも貢献できることを示す具体例となりました。
(参考:環境省『改修ZEB事例の技術情報』、経済産業省『第6回 グリーンイノベーション戦略推進会議』)
【注目】コージェネレーションシステムの導入は、SBT達成の第一歩になりうる!
コージェネレーションシステムの導入は、企業の脱炭素経営の国際基準であるSBT(科学的根拠に基づく削減目標)の達成に大きく貢献します。
コージェネレーションシステムは、発電と排熱利用を同時に行うことで、エネルギーの総合効率を向上させ、必要な燃料の総量を減らすため、CO2排出量を削減することができます。また、自家発電により電力会社からの電力購入量が減るため、SBTの目標であるScope2排出量を直接的に削減できるでしょう。
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コージェネレーションシステムは、電気と熱の同時供給による高いエネルギー効率により、企業のエネルギーコスト削減とCO2排出量削減を両立させる技術です。BCP対策としても有効で、災害時の電力・熱供給を担う分散型電源としての役割も期待されています。
初期コストや熱需要の確保といった課題はありますが、国や自治体の補助金の活用や、熱の面的利用を検討することで解決可能です。
脱炭素経営と事業継続のための重要な戦略として、コージェネレーションシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
HELLO!GREENでは、これから脱炭素経営に取り組む中小企業の皆さまに向けて、有益な情報を発信しています。環境省認定制度「脱炭素アドバイザー アドバンスト」にも認定されている 「炭素会計アドバイザー」資格を持つ専門スタッフの知見を活かし、わかりやすく信頼できる記事づくりに努めています。