初めての
脱炭素経営を
サポート!

【中小企業向け】CO2排出量の「見える化」はなぜ必要?重要ポイントを解説

目次
記事の要点
  • CO2排出量の「見える化」とは製品や事業によって排出されているCO2の量を計算し、可視化すること。
  • CO2排出削減に向けた「見える化」は、取引先からの要請などによって中小企業でも必要性が高まっています。
  • 計算の効率化にはツール活用が必須です。計算に不安がある場合は外部委託という手段もあります。

CO2排出量の「見える化」とは、CO2をどのくらい排出しているかを計算し、可視化することです。近年、中小企業においても排出されるCO2の量を「見える化」し、具体的な対策を講じることの重要性が高まっています。

今回の記事では、中小企業にとってCO2排出量の「見える化」がなぜ重要なのかについて解説します。実際に、中小企業が「見える化」に取り組む際のポイントや課題についても説明していますので、ぜひ参考にしてください。

CO2排出量の「見える化」とは

CO2排出量の「見える化」とは、温室効果ガス(CO2含む)をどのくらい排出しているかを計算して、可視化することです。

工場での電気の使用やトラックによる製品の輸送など、企業活動ではさまざまな場面でCO2を排出しています。CO2排出量を「見える化」することで、どの部分でCO2の排出が多いのか、排出源となっているプロセスや部門を特定し、削減につなげることが目的です。

なぜCO2の「見える化」が必要?

製品の広告で「CO2排出量◯%削減」と記載されているのを、よく見かけませんか。これも、CO2の「見える化」の一例です。

CO2排出量の「見える化」や削減に取り組む企業が増えた背景には、地球温暖化対策に向けた世界的な動向も関係しています。2016年、地球温暖化を抑えるための国際的な枠組みである「パリ協定」が採択され、世界各国でCO2削減の取り組みが加速。日本でも法規制の強化が進んでいます

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの、主な排出源の一つが、企業の生産活動です。日本では、省エネ法や温対法に基づいて、一部の企業などに温室効果ガス排出量の報告を義務づけています。中小企業に対しては法的な義務が課されていない場合もありますが、サプライチェーン※上の要請や取引先からの依頼により、「見える化」の必要性が増しています

※サプライチェーン=製品の原材料調達から製品の廃棄までにおける一連の流れ

CO2排出量を「見える化」するときのポイント

ポイント1.CO2排出量の情報提供先はどこか?
ポイント2.「見える化」の対象はどの部分か?

CO2排出量の「見える化」に向けて取り組む際、上の2つがポイントとなります。ひとつずつ見ていきましょう。

ポイント1.CO2排出量の情報提供先はどこか?

CO2排出量の情報提供先は、ひとつとは限りません。「取引先」でしょうか。それとも「消費者」でしょうか。取引先であれば必要なデータをスライドなどにまとめて提供する、消費者であれば製品パッケージにわかりやすく表示する、というように、情報提供先によって情報の伝達方法や表示形式が異なってきます。提供先を明確にしておきましょう。

ポイント2.「見える化」の対象はどの部分か?

なにを「見える化」するのかを洗い出しておくことも重要です。対象が企業全体のCO2排出量であれば、事業活動を網羅したデータが必要になります。一方、ひとつの製品に紐づくCO2排出量の場合、製造から流通、廃棄に至るまでのライフサイクル全体を考慮することが大事です。情報提供先もイメージしながら検討しておきましょう。

CO2排出量の「見える化」が企業にもたらす効果とは?

CO2排出量の「見える化」によって期待できる、2つのメリットについて紹介します。

企業にとってのメリット
・企業イメージの向上が期待できる
・的確な環境施策へとつなげられる

CO2排出量の「見える化」に取り組み、積極的に環境対策を推進していくことによって、企業イメージの向上が期待できます。ホームページなどで公表すれば、新規顧客の獲得投資家へのPRにも効果的でしょう。近年では、企業の業績だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への取り組みを評価して投資を判断する「ESG投資」も注目されています。

また、CO2排出量を「見える化」することで、企業は自社のどの活動が大きな排出源となっているかを把握できます。その結果、優先的に対応すべき課題が明確になり、排出削減に向けた施策が立てやすくなることもメリットのひとつです。さらに、施策実施前後のデータを比較することで削減効果を定量的に検証できるため、取り組みの有効性を確認する手段としても役立つでしょう。

CO2排出量を「見える化」する際の課題

中小企業がCO2排出量の「見える化」に取り組む際、使えるリソースや手段が限られている点が大きな課題になるでしょう。「手間がかかる」「担当できる人材がいない」といった問題から、事業に関する業務の方が優先されてしまうことも考えられます。

自社がどの部分に注力すべきか、将来を見据えてリソース配分を見直すのもよいかもしれません。また、作業を効率化するため、次のようなツールやサービスの活用も検討するとよいでしょう。

CO2排出量の「見える化」に役立つツールやサービス

ツールやサービスを利用すれば、計算の効率化のほか、CO2排出量削減に向けたアドバイスを得ることも可能です。CO2排出量の「見える化」に役立つツールやサービスについて紹介します。

方法1.無料ツールを使う

Excelなど、表計算ソフトを使って算定するのも方法のひとつです。業務で使用しているツールを活用すれば、操作方法などを把握しているのでスムーズに進められます。ただし、計算式を組み込む作業など、一定の工数もかかることも覚えておきましょう。

環境省の『実務者向けガイド』など、計算に活用できるExcelファイルを無料ダウンロードできるものもあります。ほかにも無料で使用できるCO2排出量の計算ツールがあるので、調べてみてはいかがでしょうか。

方法2.「見える化」を支援するツールを導入する

CO2排出量の「見える化」に役立つ有料ツールには、次のような機能が搭載されたものもあります。

主なツールの機能
・データ入力の自動化
・自動算定
・排出源別に排出量の内訳を表示
・CO2排出量の可視化
・レポート作成
・目標設定と進捗管理
・法規制への対応

データ入力の自動化などは、手入力によって起こる可能性がある人的ミスを防ぐメリットもあります。ツール料金は「月額〇〇円」といったサブスクリプション制のものもあり、大きな初期投資が難しい中小企業にとっても使いやすいでしょう。

方法3.「見える化」を支援するサービスを利用する

「外部に算定や報告書作成を任せたい」「計算が合っているか不安」といったケースもあるかもしれません。 そのような際におすすめなのが、自社のCO2排出量を専門の会社に計算してもらえるサービスです。算定に加えて、「SBT認定」など認証制度への申請代行や排出削減に向けた伴走サービスもあるため、自社の目的に応じて選びましょう。

SBT認定とは?

温室効果ガス削減に向けた目標が、パリ協定に基づく科学的根拠に沿っていることを認証する国際的な制度。SBTi(SBTイニシアチブ)が定める認定基準をクリアすることが認定取得の条件で、「中小企業版SBT」もあります。

「見える化」に活用できる補助金

「見える化」に向けてツールの導入などを検討する場合は、補助金を活用するのも一案です。以下は、デジタル化や省CO2に向けた設備入れ替えなどを対象とする2024年度の補助金です。

■CO2排出量の「見える化」に関する補助金

IT導入補助金(通常枠)事業のデジタル化を目的としたシステム導入などを支援
SHIFT事業工場などにおけるCO2削減目標・計画の策定や、省CO2型設備の更新などを支援

補助金のなかには、複数回に募集を分けているケースや、次年度も制度が継続する場合があります。応募期日が過ぎていても、次回の募集がないかチェックしておきましょう。

以下の記事では、具体的な条件や補助金額などについて紹介しています。

CO2排出量の「見える化」を実践するためのステップ

CO2排出量の「見える化」を進める流れを紹介します。参考として、カーボンフットプリント※の実践ステップを見てみましょう。

※カーボンフットプリント=製品を作るための原材料調達、生産、販売、廃棄といった、製品のライフサイクルでのCO2排出量を計算する。企業で使用されているCO2排出量算定におけるアプローチ法の一つ

CO2排出量の「見える化」を実践するためのステップ

CO2排出量の「見える化」では、実際に計算の実務を始める前に、算定方針を明確にしておくことが重要です。どのように進めたらよいか迷っている場合は、まず情報提供先を明らかにし、それに合わせたルールの選定や対象範囲を決めるとよいでしょう。

参考:経済産業省、環境省『カーボンフットプリントガイドライン

【企業事例】CO2排出量の「見える化」と活用例

実際に、CO2排出量の「見える化」に取り組む企業の事例を紹介します。

企業事例1|株式会社パブリック

・CO2排出量を算定し、主なCO2排出源が「電気」と「軽油」であることを特定
・14の削減施策を考案し、優先度順にロードマップを作成し実行

廃棄物処理業を手掛ける株式会社パブリックでは、自社の事業所13カ所、および子会社4社でのCO2排出量を算定。削減に向け、経済産業省「省エネお助け隊」による外部診断も活用し、14の削減施策を考案しました。投資金額をひとつの判断軸とし、「優先して実行するもの」「中長期的に検討するもの」などと分類して取り組んでいます。

企業事例2|甲子化学工業株式会社

・防災ヘルメット「HOTAMET」のライフサイクルにおけるCO2排出量を算定
・従来品と比べたときの排出削減量を製品PRに活用

プラスチック製品の塗装や組み立てなどを行っている甲子化学工業株式会社では、廃棄されていたホタテの貝殻を使用した、防災ヘルメットを製品化。この製品のライフサイクル全体でのCO2排出量を「見える化」しています。自社ホームページ内の製品ページでCO2の排出削減量を訴求するなど、顧客へのPRに有効活用しています。

企業事例3|ミニストップ株式会社

サプライヤーと協力してソフトクリームに「食べるスプーン」を添えて提供
・プラスチック製スプーンよりもCO2排出量が削減できることを消費者にPR

コンビニエンスストアと店内加工のファストフードなどを手掛ける、ミニストップ株式会社。ソフトクリームに添えていたプラスチック製スプーンの代わりに、食べられるコーンのスプーンを導入しました。カーボンフットプリントの算定結果を、商品や店頭に表示し、消費者の行動変容へとつなげることを目指しています。

参考:環境省『中小規模事業者向けの脱炭素経営導入事例集』『令和5年度モデル事業参加企業・対象製品・成果

自社に合った方法でCO2排出量の「見える化」を実現しよう!

CO2排出量の削減には、まずCO2排出量の「見える化」が必要です。世界各国の動向から考えると、早期に対策を検討しておくことが中小企業にとっても重要でしょう。革新的なCO2削減対策をPRとして活用している企業も見られます。CO2排出量の「見える化」で得た情報をどのように活用するのかについてもイメージしながら、取り組みを進めていきましょう。