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【入門編】カーボンニュートラルに向けた企業の取り組み。メリットや事例を紹介

目次
記事の要点
  • カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めることで、企業は「エネルギーコストの削減」「企業イメージの向上」「資金調達の容易化」といったメリットを得られます。
  • 具体的な取り組みとしては、「温室効果ガス排出量の見える化」「再生可能エネルギーの活用」「サプライチェーン全体での温室効果ガス削減推進」などがあります。
  • 多くの企業がカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを推進中。企業事例を参考に、自社としてすべきことを検討・実施しましょう。

地球温暖化への対策が急務であることを受け、企業にはカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが求められています。取り組みに先立ち、メリットや他社の事例を知りたい企業も多いでしょう。

この記事では、カーボンニュートラルの概要やメリット、企業事例などを解説します。これを読めば、カーボンニュートラル実現に向けて企業として何をすべきかのヒントが得られるでしょう。自社の取り組みを決める際の参考として、ご活用ください。

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させることを意味する言葉。排出量・吸収量ともに人為的なものを指します。つまり、温室効果ガスの作為による排出量から、人間の手による植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質ゼロにすることですね。

カーボンニュートラルのイメージ
参考:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは』を加工して作成

なお、実現に向けては、温室効果ガスの排出量・吸収量の「合計を実質ゼロにする≒両者のバランスをとる」だけでなく、「排出量の削減」と「吸収作用の保全および強化」を図ることも重要です。

参考:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは

日本政府は2050年カーボンニュートラルを宣言

日本政府は、2020年10月26日の所信表明演説において、菅内閣総理大臣(当時)が以下のことを宣言しました。

我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
引用:首相官邸『令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説

この宣言は、「2050年カーボンニュートラル宣」と呼ばれています。

宣言の背景には、「パリ協定」と「IPCC1.5℃特別報告書」があります。

パリ協定とは、2015年12月にCOP21で採択された気候変動問題に関する国際的な枠組みのこと。「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に保持し、また1.5℃に抑えること」や「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」が合意されました。

「IPCC1.5℃特別報告書」とは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2018年10月に発表した報告書です。パリ協定の合意内容に関する科学的根拠として、「世界の人為的なGHG排出量を、2030年までに2010年比で約45%減少させ、2050年までには実質ゼロにする必要がある」ことが示されました。

これらを受け、日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」を出したのです。「2050年までのカーボンニュートラル実現」を達成できるよう、日本社会全体で温室効果ガス排出削減に取り組んでいく必要があります。

なお、パリ協定については、以下の記事で詳しく解説しています。理解を深めるためにお役立てください。

カーボンニュートラルはなぜ企業に求められるのか

なぜ、各企業にもカーボンニュートラル実現が求められているのでしょうか。カーボンニュートラルへの取り組みが企業に求められる理由としては、地球温暖化への対応が急務であることが挙げられます。

近年、世界の平均気温は上昇傾向が続いており、地球温暖化が進行しています。その影響により、世界中で猛暑や豪雨といった気象災害が頻発。地球温暖化がより深刻化すると、水資源や自然生態系、人々の健康への悪影響だけでなく、「工場の操業停止」「物流の遅延・断絶」などによる産業・経済活動への悪影響も懸念されます。

周知の事実ではありますが、地球温暖化の要因は「温室効果ガス」といわれています。私たちの暮らす地球を守り、持続可能な社会をつくっていくために、世界全体でカーボンニュートラルに取り組むことが大切なのです。

大企業も中小企業も、製造業のようにCO2排出量が多い傾向にある業種もそうでない業種も、カーボンニュートラルに積極的に取り組んでいきましょう

カーボンニュートラルに取り組んでいる日本企業一覧

カーボンニュートラルに取り組んでいる日本企業は、何社くらいあるのでしょうか。ここでは、「SBT」や「RE100」に参加している日本企業を紹介します。

SBTの認定取得/コミットしている日本企業

SBTとは、5年~10年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと。2024年3月末時点での日本企業のSBT参加企業数は988社で、うち、認定企業は904社、コミット中の企業(取得を約束している企業)は84社あります。認定企業に限ると、世界1位の数です。企業規模や業種を問わず、多くの日本企業が参加していることがわかりますね。

SBT認定の詳細について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

参考:環境省『SBT(Science Based Targets)について

RE100に参加している日本企業

RE100とは、事業を100%再生エネルギーの電力で賄うことを目標とした企業連合のこと。2024年3月時点で、86社の日本企業がRE100に参加しています。

RE100に参加している日本企業一覧
参考:環境省『RE100について』を加工して作成

RE100に参加している日本企業の多くが、知名度の高い大企業であることが伺えます。

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

カーボンニュートラルへの取り組みは、「企業としての責任」であるだけでなく、企業に「メリット」ももたらします。企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットは、以下の通りです。

カーボンニュートラルに取り組むメリット

  • エネルギーコストの削減
  • 企業イメージの向上
  • 資金調達の容易化
  • 新規事業の創出

それぞれについて、見ていきましょう。

メリット1.エネルギーコストの削減

カーボンニュートラルに取り組むことで、エネルギーコストの削減が期待できます。取り組みの一環として、CO2排出量が少なくエネルギー効率の高い設備を導入することにより、短期的には導入コストがかかるものの、年単位で考えるとエネルギーコストを抑えられるためです。エネルギーコストが浮いた分を、既存事業の拡充や新規事業の展開などに回すこともできるでしょう。

メリット2.企業イメージの向上

近年、カーボンニュートラルへの関心が社会全体で高まっています。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを社外にアピールすることで、「環境に配慮している会社」という印象を与えることができます。それにより、企業イメージが向上し、新規取引の受注や人材採用への好影響なども期待できるでしょう。

なお、先ほど紹介したSBT認定企業になれば、SBTi(SBTの認定などを行う国際的なイニシアチブ)のホームページなどに企業名が公開されるため、自社の認知度がより高まります。

メリット3.資金調達の容易化

カーボンニュートラルに取り組むことで、資金調の容易化も期待できます。その背景にあるのが、世界中の投資家の間で急速に広まっている「ESG投資」です。ESG投資とは、企業の「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」への取り組みをもとに投資先を決める投資方法のこと。カーボンニュートラルは環境問題解決に直結するため、カーボンニュートラルに向けた取り組みをすることで、投資先として選ばれやすくなると考えられます。

また、カーボンニュートラルの取り組みは企業のアピールポイントとなり、企業の社会的信用も高まるため、金融機関からの融資が受けやすくなる可能性もあるでしょう。

メリット4.新規事業の創出

カーボンニュートラルに取り組んでいく中で、これまでにない新しい商品・サービスやビジネスモデルを思いつくこともあります。浮かんだアイデアをもとに議論・検討を進めていくことにより、新規事業の創出につながるでしょう。特に、競争相手がほとんどいない「ブルー・オーシャン」の市場で新規事業を展開できれば、膨大な利益がもたらされると期待できます。

このようなメリットもあるので、企業として積極的に取り組みを進めていけるとよいですね。

カーボンニュートラル実現に向けた企業の取り組み例

カーボンニュートラルの実現に向け、企業としてどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。企業の取り組みの具体例としては、以下のようなことが挙げられます。

企業の取り組み例

  • 温室効果ガス排出量を見える化する
  • 再生可能エネルギーを活用する
  • サプライチェーン全体で温室効果ガスを削減する
  • 植樹・植林活動を実施する
  • 補助的にカーボン・オフセットを活用する
  • ネガティブエミッション技術(NETs)を活用する

それぞれについて、簡単に紹介します。

温室効果ガス排出量を見える化する

まずすべきなのが、温室効果ガス排出量の見える化です。見える化することで、自社の現状・課題を明確化でき、「いつまでに、何%削減するのか」という削減目標を設定しやすくなります。削減目標を定めたら、「いつまでに何を実施するのか」を考え、ロードマップに落とし込みましょう。あわせて、目標達成に向けた施策を円滑に進められるよう、社内体制も整備していくことも重要です。

とはいえ、温室効果ガス排出量の計算はとても複雑で、人力で算定しようとすると多くの労力を要します。作業効率化のため、外部企業が提供している温室効果ガス排出量計算サービスの活用を検討するとよいでしょう。

再生可能エネルギーを活用する

再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギー源のこと。具体的には、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電などが該当します。再生可能エネルギーは、発電時に温室効果ガスを排出しないのが特徴です。そのため、オフィスや工場などで使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えることで、温室効果ガスを大幅に削減できます。

あわせて、使用する電力量自体を減らせるよう、省エネも徹底することをおすすめします。

参考:資源エネルギー庁『 なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|総論

サプライチェーン全体で温室効果ガスを削減する

サプライチェーン全体で温室効果ガスを削減していくことも、重要な取り組みの一つです。サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、物流、販売、廃棄に至るまでの一連の流れのこと。自社のみで温室効果ガスの削減に取り組むよりも、サプライチェーン全体で取り組んだ方が、成果が期待できます。例えば、製造業の場合には、原材料の製造元や物流会社などに削減を呼びかけつつ、製品が使用されたり廃棄されたりする際の削減も考慮するとよいでしょう。

サプライチェーン全体で温室効果ガスの削減を図る上で覚えておきたいのが、「Scope1(スコープ1)」「Scope2(スコープ2)」「Scope3(スコープ3)」という分類です。

  • Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
  • Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)15のカテゴリに分類される
サプライチェーン排出量
参考:環境省『サプライチェーン排出量算定について|サプライチェーン排出量全般』を加工して作成

各Scopeにおける温室効果ガス排出量を合計したものが、「サプライチェーン排出量」です。サプライチェーン排出量を減らすためには、現状を把握し、目標を設定することから始めましょう。

サプライチェーン排出量については、次の記事で詳しく紹介しています。参考にご覧ください。

植樹・植林活動を実施する

「温室効果ガスの吸収量を増やす」という観点から、カーボンニュートラル実現に効果的とされているのが、植樹・植林活動の実施です。会社主導で計画を立て、顧客や地域住民らとともに植樹・植林活動に取り組むとよいでしょう。

植樹・植林活動をするのが難しい場合には、「会社の庭に、苗木を植える」「オフィスの屋上を緑化する」ことから始めるのがおすすめです。

補助的にカーボン・オフセットを活用する

カーボン・オフセットの活用も、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つです。カーボン・オフセットとは、削減努力をしてもなお排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するなどして、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方のこと。

カーボン・オフセットの取り組みは、「製品・サービスオフセット」 「会議・イベントオフセット」「組織活動(自己活動)オフセット 」「クレジット付製品・サービス」「寄付型オフセット」の5つに分類されます。それぞれ、「オフセット主体」=誰が、「オフセット対象」=何のカーボン・オフセットに取り組むのかによって、分けられます。

類型オフセット主体(誰が)オフセット対象(何を)
製品・サービスオフセット製品・サービスの製造/販売/提供者、または製品・サービスの購入・利用者製品・サービスのライフサイクルからの温室効果ガス排出 
会議・イベントオフセット会議・イベント主催者会議・イベントの企画・準備、開催、 会議・イベント主催者およびび撤収に伴う温室効果ガス排出 
組織活動(自己活動)オフセット企業、自治体、NGOなどの組織事業活動に伴う温室効果ガス排出 
クレジット付製品・サービス製品の製造・販売者やサービス提供者、イベント主催者など購入者や来場者の日常生活における温室効果ガス排出
寄付型オフセット製品の製造・販売者やサービス提供者、イベント主催者などオフセット対象を限定しない
※クレジットの活用による地球温暖化防止活動への貢献・資金提供などを目的に、広く一般を対象に参加を呼びかける
参考:環境省『カーボン・オフセット ガイドライン Ver.3.0』、参考:農林水産省『カーボン・オフセット

とはいえ、カーボン・オフセットは企業がいつでも自由に活用できるものではありません。自社で温室効果ガスの削減努力をした上で、それでも削減しきれない場合にのみ検討できるものです。最初からカーボン・オフセットありきで考えるのではなく、まずは別の取り組みを優先して進めましょう。

カーボン・オフセットについては、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

ネガティブエミッション技術(NETs)を活用する

ネガティブエミッション技術(Negative Emissions Technologies、略称:NETs)とは、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで、CO2排出量を実質としてマイナスにする技術の総称。具体的には、以下のような技術があります。

技術概要
植林・再生林樹木によるCO2吸収を促進する技術
土壌炭素貯留バイオマス中の炭素を土壌に貯蔵・管理する技術
バイオ炭バイオマスを炭化し炭素を固定する技術
DAC大気中のCO2を直接捕集する技術
DACCS大気中のCO2を直接回収し、貯留する技術
BECCSバイオマスエネルギー利用時の燃焼により発生したCO2を回収・貯留する技術
風化促進玄武岩などの岩石を粉砕・散布し、風化を人工的に促進する技術
海洋肥沃・生育促進海洋への養分散布や優良生物品種などの利用により、生物学的生産を促し、CO2吸収・固定化を人工的に加速する技術
植物残渣海洋隔離海洋中で植物残渣(植物性の固形状の不要物)に含まれる炭素を半永久的に隔離する方法
海洋アルカリ化海水にアルカリ性の物質を添加し、海洋の自然な炭素吸収を促進する炭素除去方法
参考:経済産業省『ネガティブエミッション技術の検討方針について』『ネガティブエミッション技術について

現時点では研究・開発段階の技術が多いものの、今後は実用化が進む見通しです。実用化したタイミングで活用を検討し、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みをさらに加速・強化しましょう。

カーボンニュートラルに取り組んでいる企業事例

実際に、各企業ではどのような取り組みが進められているのでしょうか。カーボンニュートラルに取り組んでいる企業の事例を紹介します。

花王株式会社

花王株式会社では、2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブの実現に向けた取り組みを実施。事業活動におけるCO2排出量削減や社会の排出量削減、大気中の炭素の固定化を通じての脱炭素社会実現への貢献も目指しています。スコープ1+2およびスコープ3のCO2排出量削減に向けた取り組みは、以下の通りです。

スコープCO2排出量削減に向けた取り組み
スコープ1+2省エネルギーな生産設備や脱炭素技術の積極的な導入

電力の再生可能エネルギー化の推進

・スペインにあるケミカル工場におけるバイオマスを熱利用するプラントの建設を公表(工場からのCO2排出量の95%削減が目標)

社内炭素価格制度の活用を国内外で継続

・和歌山工場の温水ヒートポンプ(2024年4月稼働予定)や、花王インダストリアルタイランドの太陽光発電設備(2025年1月稼働予定)の導入などを採択

・コーポレートPPA(需要家が発電事業者から、再生可能エネルギーを直接長期間購入するスキーム)の一種であり花王では初となる、バーチャルPPAを採用
スコープ3原材料調達における原材料の削減や再生プラスチックの利用を推進(2023年は、包装容器の6%に再生プラスチックを導入)

・すすぎが1回ですむ衣料用濃縮液体洗剤や、すすぎ時にすばやく泡切れする食器用洗剤など、水の使用によるCO2の排出を抑える節水製品を引き続き展開

・取引の大きいサプライヤーに対して、CDP(企業や自治体の環境情報開示のための世界的なシステムを有する国際的な非営利団体)サプライチェーンプログラムの「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」への回答を依頼し、評価結果をフィードバックすることで、脱炭素の推進を支援

廃棄・リサイクルにおける包装容器のプラスチック使用量削減の新たな取り組みを展開(回収した使用済みつめかえパックを一部に使用したリサイクル詰め替えパックの製品化、スティック形状の衣料用洗剤の包装をパウチ仕様にするなど)

・CO2排出量の少ない生産方法として知られている発酵生産技術でバイオケミカル素材をつくる、独自の生産プロセスを確立(今後、この研究技術を活用し、ケミカル事業での展開を検討中)

こうした取り組みにより、2023年には日本の購入電力100%再生可能エネルギー化を実現。

また、2025年までとしていたスコープ1+2 CO2排出量の中間削減目標(CO2排出量の絶対量を2017年の基準年から28%削減)を、2年前倒しで2023年に達成しました。

参考:花王株式会社『脱炭素』『発表資料: 2024年04月25日 2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現への活動を加速

河田フェザー株式会社

羽毛専業メーカーの河田フェザー株式会社は、羽毛業界では世界初、寝装業界では日本初のSBT認定企業です(2020年11月15日に認定)。カーボンニュートラルに関連することとして、「羽毛の循環型社会の構築」と「地球環境の保全」に取り組んでいます。

「羽毛の循環型社会の構築」については、日本市場に出回った高品質な羽毛を循環させる「羽毛のリサイクル事業(一般向け)」の仕組みづくりに日本で最初に着手しました。羽毛にはCO2が含まれており、償却廃棄する際に羽毛1キロあたり1.8キロのCO2が発生するといわれています。同社では羽毛のリサイクル事業により、羽毛を償却せずに循環させることで、CO2排出量削減を実現。あわせて、「UMOUプロジェクト」や「Green Down Project」という羽毛循環プロジェクトにも参加しています。

「地球環境の保全」については、脱炭素社会に貢献する事業を推進。具体的には、100%再生可能エネルギーの導入、LPガス式ボイラーの導入、ボイラーやコンプレッサー使用時の熱回収および有効活用などに取り組んでいます。

参考:河田フェザー株式会社『SCIENCE BASED TARGETS(SBT)事務局にて羽毛業界の世界初の登録を受けました』『サステナビリティ トップメッセージ』『KAWADA FEATHER®のSDGs取り組み事例

株式会社大川印刷

印刷業を営む株式会社大川印刷では、環境に配慮した「環境印刷」を行っています。その柱となっているのは、「CO2ゼロ印刷」「環境に正しい紙」「ノンVOCインキ」「エコ配送」の4つです。このうち、カーボンニュートラルとの関連性の高い「CO2ゼロ印刷」と「エコ配送」のポイントと取り組み内容は、以下の通りとなっています。

環境印刷の柱取り組みのポイント取り組み内容
CO2ゼロ印刷印刷事業における年間のCO2排出量を算定し、その全量をカーボン・オフセット・自社印刷事業で使用する電気・ガス・ 車両燃料によって排出される年間のCO2排出量(スコープ1、スコープ2に該当)を算定し、その全量にあたる180tを政府のJ-クレジットなどの活用によりオフセット

・太陽光発電パネルの設置などによる自家発電で電力の20%をまかない、残り80%についてはカーボン・オフセット済みの風力発電の電力を購入することで、「再生可能エネルギー100%印刷工場」を実現
エコ配送納品時の環境負荷低減を徹底・より環境負荷の少ない電気自動車やディーゼル車を使用

・廃棄物削減を目的に、プラスチックコンテナによる納品を実施

こうした取り組みが評価され、2015年度環境大臣表彰を受彰。2018年には第2回ジャパンSDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」を受賞しました。

また、同社では、2025年までにスコープ3のCO2排出量を100%削減することを目指しています。

参考:株式会社大川印刷『環境印刷について』『CO2ゼロ印刷』『エコ配送』『会社概要|経営理念

カーボンニュートラル実現に向け、企業としてできることから始めよう

地球温暖化への対応が急務であることから、企業規模や業種を問わず、すべての企業にカーボンニュートラルへの取り組みが求められます。「エネルギーコストの削減」や「企業イメージの向上」といったメリットも期待できるため、積極的に取り組みましょう。

具体的な取り組みとしては、「温室効果ガス排出量の見える化」「再生可能エネルギーの活用」「サプライチェーン全体での温室効果ガス削減推進」などがあります。紹介した企業事例も参考にしながら目標やロードマップを定めた上で、企業としてできることから、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めましょう。