化石燃料はあと何年でなくなる?枯渇を遅らせるために企業ができること

私たちの日々の生活に欠かせない、化石燃料。ニュースなどで「化石燃料はいずれなくなってしまう」と聞いたことがある方もいるかもしれません。エネルギー問題に関心があり、「化石燃料があと何年くらいもつのか」「枯渇を少しでも遅らせるために、企業として何をすべきなのか」などを知りたい企業も多いことでしょう。
この記事では、化石燃料を採掘できる年数や、枯渇してしまった場合の影響、中小企業が取り組むべき対策などを紹介します。これを読めば、化石燃料の枯渇への対応として、企業がどのようなことに取り組むべきかのヒントが得られるでしょう。
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- 化石燃料は、石油・石炭・天然ガスなどの総称です。石油と天然ガスはあと約50年、石炭はあと約140年でなくなってしまうと考えられています。
- 化石燃料が枯渇すると、「エネルギーの安定供給が難しくなる」「エネルギー価格が高騰する」といった事態が生じ、企業経営に悪影響が及びます。
- 化石燃料の枯渇防止に向け、中小企業は「省エネの徹底」「再生可能エネルギーの活用」「中小企業版SBTの取得」などに取り組みましょう。
化石燃料は、石油・石炭・天然ガスなどの総称
化石燃料とは、地球の地下に埋蔵されているエネルギー資源のことで、古代に生息していた動植物の死骸などが長い年月をかけて変化したものです。一般的に、石油・石炭・天然ガスなどの総称として使われています。
資源に乏しい日本には、自国で必要な量をまかなえるだけの石油・石炭・天然ガスはありません。そのため、ほとんどを海外からの輸入に頼っているのが現状です。
主な用途
化石燃料の主な用途について、表にまとめました。
化石燃料の種類 | 主な用途 |
---|---|
石油 | ガソリンや灯油などの燃料、プラスチックなどの原料、火力発電の燃料 |
石炭 | 火力発電の燃料、製鉄の原料 |
天然ガス | 火力発電の燃料、家庭用の都市ガス |
化石燃料はさまざまな場面で化石燃料が用いられていることから、私たちの日々の生活に欠かせないものであるといえますね。
化石燃料を使用するメリット・デメリット
化石燃料には、メリットもデメリットもあります。
■化石燃料のメリット・デメリット
メリット | ・エネルギー効率がよいので、大量発電に適している ・採掘や輸送、保管が容易である ・燃料そのもののコストや流通・運搬コストを低く抑えられる ・先述の通り、さまざまな用途がある |
デメリット | ・埋蔵量に限りがあるため、いずれ枯渇してしまう可能性がある ・燃焼時に「温室効果ガス」や「有害物質」が排出されるため、地球温暖化や大気汚染につながる ・採掘現場には「低賃金」「長時間労働」「子どもの強制労働」といった労働問題・人権問題がある ・国際情勢などの影響により需給バランスが崩れると、価格変動が生じてしまう |
「さまざまなデメリットがあるなら、化石燃料がなくなっても困らないのでは」と考える方もいるかもしれませんが、メリットも大きいため、化石燃料の枯渇は避けなくてはいけません。私たち一人ひとりが、枯渇防止に向けたアクションを起こすことが大切です。なお、化石燃料の枯渇防止に向けて中小企業ができることについては、後ほど解説します。
化石燃料はあと何年もつ?
実際のところ、化石燃料はあと何年くらいもつのでしょうか。資源エネルギー庁の『令和3年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2022)』によると、可採年数(ある年に確認された埋蔵量をその年の年間生産量で割った値)は以下の通りです。
化石燃料の種類 | 可採年数 |
---|---|
石油 | 53.5年 (※2020年末時点のデータに基づく値) |
天然ガス | 48.8年 (※2020年末時点のデータに基づく値) |
石炭 | 139年 (※BP統計2021年版に基づく値) |
石油と天然ガスが約50年、石炭が約140年で枯渇する可能性があると覚えておきましょう。私たちの子どもや孫、その先の世代への影響を考えると、「化石燃料の枯渇をいかに食い止めるか」を早急に考え、実行に移していく必要がありますね。
ただし、これらの値はあくまで現時点での目安に過ぎません。新規油田が発見されたり、技術開発に伴い採掘できる場所が増えたりすれば、確認埋蔵量が増加するため、可採年数が長くなります。一方で、開発途上国における急速な経済発展や世界の人口増加などがあると、化石燃料の需要が高まって年間生産量を増やさざるを得なくなり、可採年数が短くなると考えられます。
化石燃料が枯渇するとどうなる?
将来的に化石燃料が枯渇してしまうとどのようなことが起きるのでしょうか。化石燃料の枯渇によるリスクを紹介します。
エネルギーの安定供給が難しくなる
化石燃料が枯渇すると、当然ながらエネルギーの安定供給が難しくなります。化石燃料はさまざまな用途に用いられるため、エネルギーが安定的に供給されなくなると、電力供給や物流などに支障をきたすリスクがあります。「商品の製造が滞り、納期に間に合わない」「遠隔地への輸送ができなくなる」といった事態が生じると考えられるでしょう。
エネルギー価格が高騰する
化石燃料が枯渇すると、エネルギーの需給バランスが崩れるため、エネルギー市場価格(エネルギー市場におけるガスや原油、石炭の取引価格)が高くなります。石油・石炭・天然ガスの輸入業者の負担が増してしまうため、すぐにどうなるかはわかりませんが、購入者・利用者側への価格転嫁、すなわちエネルギー価格の高騰がいずれ生じる可能性があるでしょう。その結果、「経費が増大した影響で、企業としての売上はこれまでと変わらないのに利益は大幅減」という状況に陥る企業が少なくないと考えられます。
日本経済が停滞する
上で紹介した2つのリスクが実際に生じてしまうと、当然ながら、企業活動全体に悪影響が及びます。その影響が大きければ大きいほど、また影響を受ける企業の数が多ければ多いほど、日本経済が停滞してしまいます。
企業としては、こうした深刻なリスクがあることを認識し、自社にできることを早急かつ確実に実行する必要がありますね。
企業が脱炭素経営を進める重要性
化石燃料の枯渇が懸念されている中、企業として推進すべきなのが「脱炭素化経営」です。脱炭素経営とは、気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のこと。脱炭素経営を進めるには温室効果ガス排出量の削減が必要ですが、その過程で化石燃料への依存を軽減することができます。
つまり、脱炭素経営を推進することは、先述した化石燃料枯渇の3つのリスクを減らすことでもあるといえます。加えて、「企業イメージの向上」「人材獲得の円滑化や定着率の向上」「資金調達の容易化」などのメリットも期待できます。こうしたことから、脱炭素経営の推進はとても重要なのです。
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化石燃料の枯渇防止に向け、中小企業ができること
化石燃料の保全に向けて、中小企業ができる取り組みとしては以下のようなものがあります。
■化石燃料の枯渇を遅らせるために中小企業ができること
- 省エネを徹底する
- 3Rを徹底する
- 社員の移動手段を変える
- 再生可能エネルギーを活用する
- エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入する
- 中小企業版SBTの取得を目指す
それぞれについて、見ていきましょう。
省エネを徹底する
明日からでもすぐできるのが、省エネの徹底です。空調や照明の無駄使いをなくしたり、省エネ効果の高い設備・機器に切り替えたりしましょう。
■省エネの具体例
- 無理のない範囲で、エアコンの設定温度を適切に調整する
- 部屋を使用していないときは、必ず照明をオフにする
- オフィスや工場の照明を蛍光灯からLED照明に切り替える
- 生産設備を省エネ効果の高いものに切り替える など
3Rを徹底する
ゴミを減らすためのアクションである「3R」も徹底しましょう。ゴミの削減は資源の有効活用でもあるため、自ずと化石燃料への依存を減らすことができます。
■企業における3Rのアクションの例
3つのアクション | 意味 | 企業におけるアクションの例 |
---|---|---|
Reduce(リデュース) | 資源の消費、ゴミの発生をもとから減らす | ・原材料の使用量を可能な限り削減する ・耐久性が高く、長く使える製品を作る |
Reuse(リユース) | 繰り返し使うことで、ゴミを減らす | ・廃棄予定の製品の部品を回収し、別の製品を作る際の部品として再使用する |
Recycle(リサイクル) | 資源として再び利用することで、ゴミを減らす | ・顧客が使わなくなった製品を回収し、別の製品を作る際の資源として活用する |
社員の移動手段を変える
日常的に車を使用している企業では、社員の移動手段を変えることも有効です。具体的には、「社用車のガソリン車からEV車への切り替え」「公共交通機関を使っての通勤・移動の推奨」などをしましょう。社内会議や採用面接などにおいて可能な範囲でWeb会議ツールを活用し、移動そのものを減らすのも一つの手です。
再生可能エネルギーを活用する
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーのこと。再生可能エネルギーの活用を進めることも、化石燃料の枯渇防止のために中小企業ができることの一つといえます。

上のグラフは2022年度時点の日本の発電割合を示したものです。化石燃料による火力発電が約7割を占めている一方、再生可能エネルギー発電は約2割でした。
こうした中、日本政府は、電力を安定的に供給するために、複数のエネルギーをバランスよく組み合わせて利用する「エネルギーミックス」を推進しています。エネルギーミックスの実現に向けては再生可能エネルギー発電を増やし、火力発電への依存を減らす必要がありますが、それができれば化石燃料の枯渇防止に直結するのです。
日本における再生可能エネルギーの発電割合を増やすために企業ができることは、再生可能エネルギーの活用を推進することであるといわれています。具体的には、「オフィス・工場の屋上やカーポートの屋根などへの太陽光発電パネルの設置」「再生可能エネルギー発電事業者からの電力購入」などを行いましょう。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入する
エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、企業や施設がエネルギーの使用状況を効率的に管理・最適化するためのシステムのことです。EMSを活用すれば、エネルギー使用量をリアルタイムで監視できるので、無駄なエネルギー使用の洗い出し・削減がしやすくなります。その結果、化石燃料の枯渇防止につながるでしょう。
■EMSの主な活用例
- 季節や時間帯による消費量の変動を分析し、空調など設備の運転を最適化する
- 人感センサーと連動して照明を自動点灯・消灯する
- 工場の生産ラインの稼働状況を監視し、異常を早期に感知する
中小企業版SBTの取得を目指す
省エネの徹底や再生可能エネルギーの活用といった取り組みとあわせて検討したいのが、中小企業版SBTの取得です。
中小企業版SBTとは、中小企業が温室効果ガスの削減目標を設定し、SBTi(SBTという国際認証の運営機関)が目標を妥当とみなせば取得できる認定のこと。中小企業版SBTの取得を目指す中で、上で紹介したさまざまな取り組みの強化が図られていくため、化石燃料の枯渇防止に大きく寄与するでしょう。
中小企業版SBTについての詳細は、以下の記事をご覧ください。
企業の行動・取り組みが化石燃料の可採年数を左右する
化石燃料の可採年数は、石油と天然ガスが約50年、石炭が約140年とされています。このままでは、私たちの子どもや孫、その先の世代の生活に深刻な影響を与えてしまうかもしれません。また、化石燃料が枯渇すると、「エネルギーの安定供給が難しくなる」「エネルギー価格が高騰する」といった事態が生じ、企業経営への悪影響も懸念されます。
企業に目を向けると、商品の製造・運搬、オフィス・工場の冷暖房や空調などさまざまな場面において、化石燃料が日々使われています。企業がどのように行動するか、どういった取り組みをするかが、化石燃料の可採年数を左右するといっても過言ではないでしょう。「省エネの徹底」「再生可能エネルギーの活用」「中小企業版SBTの取得」など、企業としてできることを早急かつ確実に実行していくことが重要です。