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【ガイド版】CO2排出量の計算方法。基本と分野別の計算式を解説

目次
記事の要点
  • 基本式は「CO2排出量=活動量×排出原単位」です。
  • 電力使用に関する排出量は「電気の使用量×排出原単位」で求められます。
  • トラックの輸送による排出量を求めたい場合、燃料使用量が不明なケースはトンキロ法を用いて計算できます。

CO2排出量の計算方法は「活動量×排出原単位」の式が基本です。しかし、「実際に、どのように計算すればよいのか」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

今回の記事は、「CO2排出量の計算方法を具体的に知りたい」と思っている方に向けて、実際の計算方法を紹介します。電力の使用や自動車での移動、トラックでの輸送、廃棄物の処理などの計算例も紹介していますので、参考にしてください。

【基本】CO2排出量の計算方法

CO2排出量を計算する際は、まず以下の基本式を押さえておきましょう。

CO2排出量の基本式
参考:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』を加工して作成

「CO2排出量=活動量×排出原単位」というのが計算の基本的な考え方ですが、イメージしにくい方もいるでしょう。式に出てくる「活動量」と「排出原単位」とは、次のようなものを指します。

活動量

意味排出活動の多さ、大きさなど、規模を表す量
・電気の使用量
・輸送した貨物の量
・委託業者に支払った金額 など

排出原単位

意味一定量当たりのCO2排出量。電気などエネルギー分野に関するものは、排出係数とも呼ばれる。計算して数値を出すこともできるが、各分野の排出原単位をまとめたデータベースを利用する方法もある
例 ・電気1kWh当たりのCO2排出量
・廃棄物1tを燃やしたときのCO2排出量

つまり、電気であれば、「電気の使用量」と「電気1kWh当たりのCO2排出量」を掛けることで、CO2排出量を計算できます。

【種類別】具体的な計算方法。電気や輸送など。計算例もあり

代表的な活動の計算方法をチェックしていきましょう。なお、計算方法にはいくつかの種類があり、本来は目的や状況によって適したものを選びます。ここでは、一般的に計算しやすい方法を紹介しています。

CO2を排出した活動計算方法(単位)
エアコンなど電力の使用電気の使用量×排出係数
自動車での移動<燃料法>燃料使用量×排出原単位
<燃費法>移動距離÷燃費×排出原単位
トラックによる輸送<燃料法>燃料使用量×排出原単位
<燃費法>移動距離÷燃費×排出原単位
<トンキロ法>輸送トンキロ×トンキロ法燃料使用原単位×排出原単位
廃棄物の処理廃棄物の重量×排出原単位

それぞれの計算について、実際の計算例も含めて詳しく見ていきましょう。

計算例1.エアコンなど電力の使用

オフィスなど、電力使用にともなうCO2排出量は、電気使用量をもとに計算できます。電力会社から送られてくる明細を参照するとよいでしょう。

電力使用によるCO2排出量の計算式
CO2排出量=電力の使用量×排出係数(電力1kWh当たりのCO2排出量)

大手電力会社などの排出係数は、環境省『算定方法・排出係数一覧』の「電気事業者別排出係数一覧」に、会社別・メニュー別に記載されています。

【例】以下の条件で実際に計算してみます。

・月の電気使用量:1000kWh
・契約している電力メニューの排出係数:0.000376t-CO2/kWh

式:【電気使用量:1000】×【排出係数:0.000376】=0.376

答え:1カ月の電力使用によるCO2排出量は0.376t-CO2です

また、「工場の製造機器を1時間稼働させた場合のCO2排出量」など、特定の設備の限られた時間による電力使用のCO2排出量を計算したい場合は、以下の方法で行います。

CO2排出量=設備の電気使用量×設備稼働状況×排出係数

上記の方法で、エアコンを使用した際のCO2排出量も計算できます。

計算例2.自動車での移動

自動車での移動によるCO2排出量を計算したい場合には、燃料法または燃費法を使います。

燃料法
CO2排出量=燃料使用量×排出原単位

燃費法
CO2排出量=移動距離÷燃費×排出原単位

「排出原単位」は、以下の表から該当するものを掛けて、CO2排出量に換算した数値です。

燃料の種類単位発熱量(GJ/kl)炭素排出係数(tC/GJ)
揮発油33.40.0187
ジェット燃料油36.30.0186
軽油38.00.0188
A重油38.90.0193
B・C重油41.80.0202
潤滑油40.20.0199
液化石油ガス(LPG)50.1(GJ/t)0.0163
参考:環境省『第Ⅱ編温室効果ガス排出量の算定方法

排出原単位の計算式
排出原単位=単位発熱量×排出係数×44/12

※44/12(44÷12)は、炭素をCO2に換算するために必要な式。44はCO2の分子量、12は炭素の原子量

【例】以下の条件で燃料法を用いて実際に計算してみます。

・車両の燃料使用量:100L(=0.1kL)
・燃料の種類:揮発油

:【燃料使用量:0.1】×【排出原単位:33.4×0.0187×44/12】=0.2290126666666667
答え:自動車の移動によるCO2排出量は0.2290t-CO2です

計算例3.トラックによる輸送

トラックによる輸送によるCO2排出量の計算方法は3つあり、ケースによって適した計算式が異なります。

自社で輸送したとき燃料法、燃費法
他社に輸送を依頼したときトンキロ法

燃料をどのくらい使用したか把握できる場合は、燃料法での計算が一般的です。自社による輸送の場合は、燃料使用量や燃費といった情報を集めやすいので問題ないでしょう。

ただし、他社に輸送を依頼したケースでは情報収集が困難な場合がほとんどと考えられます。その際に使われるのが、トンキロ法です。「トンキロ法」とは、運んだ荷物の重量と距離に基づいて計算する方法です。

トラックによる輸送(トンキロ法)の場合の計算式

「輸送トンキロ」は、トラックで運んだ荷物の重さ(輸送量)と距離を掛けた数値です。

「トンキロ法燃料使用原単位(1トンキロ当たりの燃料使用量)」は、以下の式で計算します。

トンキロ法燃料使用原単位
参考:環境省『第Ⅱ編温室効果ガス排出量の算定方法』を加工して作成

この計算には、積載率(%)を把握する必要があります。不明な場合は、以下の表を参考に概算してもよいでしょう。

積載率が不明な場合の輸送トンキロ当たりの燃料使用量
参考:環境省『第Ⅱ編温室効果ガス排出量の算定方法』を加工して作成

「2tトラックや10tトラックなどで、CO2排出量は異なる?」と気になっている方もいるかもしれません。ここまで見てきたように、トンキロ法を用いる場合は、最大積載量の区分によって輸送トンキロ当たり燃料使用量が異なるため、CO2排出量も変わります。計算する際は、最大積載量と合わせて、車両に使う燃料の種類も洗い出しましょう。

排出原単位は、自動車の場合と同じく、「排出原単位=単位発熱量×排出係数×44/12」で計算できます。

【例】以下の条件で実際に計算してみます。

・輸送した荷物の重量:1t
・輸送した距離:100km
・積載率:不明
・区分:事業用
・最大積載量:1000kg以上2000kg未満
・燃料の種類:軽油
・該当基準:2025年基準達成車

:【輸送トンキロ:1×100】×【トンキロ法燃料使用原単位:0.286】×1/1000×【排出原単位:38.0×0.0188×44/12】=0.07491674666666667
答え:トラックの輸送によるCO2排出量は0.0749t-CO2です

計算例4.廃棄物の処理

廃棄物処理でのCO2排出量を計算する場合、廃棄物の種類と処理方法によって計算方法は異なります。

廃棄物処理によるCO2排出量の計算式
CO2排出量=廃棄物の重量(種類・処理方法別)×排出原単位(種類・処理方法別)

処理方法の分類は、「燃焼・埋め立て・リサイクル」の3つです。各分類に応じた排出原単位の引き当てには、環境省の「排出原単位データベース」が使えます。

廃棄物種類・処理方法別の排出原単位
参考:環境省『サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.2.5)』を加工して作成

【例】以下の条件で実際に計算してみます。

・廃棄物の種類:廃プラスチック類
・廃棄物の重量:10t
・処理方法:焼却
・廃棄物輸送段階における排出も計算に含む

:【焼却した廃棄物の重量:10】×【排出原単位:2.6833】=26.833
答え:廃棄物処理でのCO2排出量は26.833t-CO2です

産業廃棄物の場合も、上記の式に当てはめて計算できます。

参考:環境省『マニュアル・様式』『サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.6)』『算定方法・排出係数一覧

CO2排出量の計算方法についての代表的なガイドライン

CO2排出量の計算に取りかかる際は、「何を、どの範囲まで計算するのか」など、計算方法以外にもわからないことがあるかもしれません。

CO2排出量の算定では、「サプライチェーン排出量」と「CFP(カーボンフットプリント)」の2つのアプローチ法がよく使われます。各アプローチ法について、省庁がガイドラインを出しているので参考にしやすいでしょう。各ガイドラインについて紹介します。

サプライチェーン排出量のガイドライン

目的事業のサプライチェーンにわたる温室効果ガス排出量の可視化
メリット・一通りの計算式が載っている
・事業全体で見たときにどの分野で排出が多いのかを特定し、的確な環境施策に役立てられる

温室効果ガスを計算する際の国際基準「GHGプロトコル」に準拠して、環境省がまとめたのが、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.6)」です。電気を購入・使用した場合や、輸送など、どのように計算を行えばよいのかが示されています。

特徴は、CO2の排出に関するあらゆる活動をScope1・Scope2・Scope3の3つに分類して、サプライチェーン排出量で考えたときの一通りの計算方法を紹介していることです。

サプライチェーン排出量の対象
参考:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』を加工して作成

上の図を見てわかるように、自社からの直接排出だけでなく、自社のビジネスが関わっている取引先などでの間接的な排出も対象としています。

詳しく知りたい方は、以下の記事で紹介していますのでご覧ください。

CFP(カーボンフットプリント)のガイドライン

目的製品のライフサイクルにわたる温室効果ガス排出量の可視化
メリット消費者や取引先などに対して、商品別に環境負荷(環境価値)を示せる

CFP(カーボンフットプリント)は、一つの製品における原材料の調達から廃棄までに排出された温室効果ガスの排出量を計算できます。このCFPの国際規格である「ISO14067」のほか、経済産業省・環境省が作成した『カーボンフットプリントガイドライン』も参考にできます。

CFPに基づいて計算すれば、受注先から「納品している製品についての、CO2排出量を報告してほしい」と求められた場合にも対応できるでしょう。

以下の記事では、カーボンフットプリントの要点や企業でどのように活用されているかについても詳しく紹介しています。

CO2排出量の計算は必須?企業に求められる環境対策の理由とは

ところで、計算方法を調べている人の中には、「そもそも計算は必須なのか」「なぜ計算が必要なのか」、その背景を詳しく知らない人もいるかもしれません。CO2排出量の報告や削減は、大企業のみならず中小企業でも重要性が増しています。その背景にある、世界の動きについて紹介します。

世界の地球温暖化対策と企業への規制

2015年、環境問題の改善に向けて世界共通の目標を立てたパリ協定をきっかけに、温暖化対策が促進。日本をはじめ世界各国では、CO2を大量に排出するなど一定条件に当てはまる企業に対して、排出量報告の義務付けなどを行っています。

また、2023年6月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、「サステナビリティ開示基準」を発表。この中で、Scope3を含むサプライチェーン全体でのCO2排出量について、情報開示の義務化を決定しました。

日本でも、ISSBに沿った内容で開示基準を検討しています。今後、規制が強化されれば、下請け企業などにも影響が伝播する可能性も考えられます。

大企業だけでなく中小企業でも重要に

CO2排出量の情報提供が求められる場面

・取引先からの要求
・補助金などの申請時
・SBT申請時やその他の環境認証の取得時

一方で、CO2排出量を計算し、削減に向けた対策を早期に始めることで、他社との差別化につなげることもできるでしょう。環境への配慮をアピールする方法の一つとして、「SBT認定」を取得する企業が増えています。

SBT(Science Based Targets)とは、5~10年先を見据えて企業が設定する排出削減目標のこと。 その目標が妥当だと認められれば「SBT認定」を取得でき、取得後も定期的な報告が必要となります。「SBT認定」と「中小企業版SBT」の2種類があります。

4ステップ|CO2排出量を計算する際のフロー

実際の計算方法はわかりましたが、CO2排出量の計算に取り組む際、どのような流れで進めるとよいでしょうか。以下は、事業のサプライチェーン排出量を計算する場合の取り組みステップです。

サプライチェーン排出量の算定の流れ

先述したように、サプライチェーン排出量のガイドラインでは、概算方法や精度の高い方法など複数の計算式を紹介しています。「まずは大まかな排出量が知りたい」「施策の効果検証をしたい」など、目的に合わせて計算する範囲や方法を選択することが重要です。

CO2排出量の計算をどのように進めるか迷っている方は、まず計算の目的を明確にすることから取り組んでみてはいかがでしょうか。

CO2排出量の計算方法を理解して実際に取り組んでいこう!

CO2排出量は、データを揃えれば該当する計算式を使って計算できます。計算方法と合わせて、効率的なデータ収集の体制づくりも重要です。CO2排出量の計算を始めようとしている場合は、まず計算の目的を明確にし、どの程度の精度を求めるか検討しておくと進めやすいでしょう。今回の記事で紹介したガイドラインも参考にして、自社のCO2排出量を計算してみてはいかがでしょうか。