再生可能エネルギーの課題をわかりやすく!解決策や企業ができることを解説
- 日本における再生可能エネルギーの発電割合は、約20%です。発電割合が低い背景には、再生可能エネルギーの課題があります。
- 再生可能エネルギーの課題としては、「発電コストが高い」「再生可能エネルギーのみでは電力の安定供給が難しい」といったことが挙げられます。
- 課題解決策として、「新しい太陽電池の開発」「洋上風力発電の推進、蓄電池などの活用」が進められています。
日本では再生可能エネルギーの導入が徐々に進んでいるものの、普及に向けた課題も多いといわれています。「課題や解決策を理解した上で、活用を推進していきたい」と考えている企業も多いでしょう。
この記事では、再生可能エネルギーの課題や解決策、企業としてできることなどを解説します。これを読めば、再生可能エネルギーへの理解が深まるとともに、「課題はあるものの、積極的に活用していこう」という機運が高まるでしょう。
そもそも、再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーの課題を解説する前に、まずは再生可能エネルギーの概要について紹介します。
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーのこと。具体的には、太陽光発電や水力発電、バイオマス発電などがあります。発電時に温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることが、再生可能エネルギーの特徴です。日本のエネルギー安全保障にも寄与する重要な低炭素の国産エネルギー源として、注目されています。
詳しく知りたい方は、以下の記事や資源エネルギー庁のホームページを参考にしてください。
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|総論』
【一覧表】再生可能エネルギーの主な種類
資源エネルギー庁のホームページでは、9種類の再生可能エネルギーが紹介されています。種類と発電/利用方法を、一覧表にまとめました。
種類 | 発電/利用方法 |
---|---|
太陽光発電 | シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池により直接電気に変換する |
水力発電 | 高い所に貯めた水を低い所に落とすことによる位置エネルギーを利用して水車を廻し、水車につながっている発電機を回転させることで発電する |
風力発電 | 風のエネルギーを電気エネルギーに変えることで発電する |
バイオマス発電 | 動植物などから生まれた生物資源の総称である「バイオマス」を直接燃やしたり、ガス化したりして発電する |
地熱発電 | 地中深くから取り出した蒸気でタービンを直接回して発電する |
太陽熱利用 | 太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、熱媒体を暖めて、給湯や冷暖房などに利用する |
雪氷熱利用 | 寒い時期の雪や氷を保管し、冷熱が必要となる時季に利用する |
温度差熱利用 | 地下水や河川水、下水などの水源を熱源とし、水の持つ熱をヒートポンプを用いて利用する |
地中熱利用 | 浅い地盤中に存在する低温の熱エネルギーである地中熱を冷暖房などに利用する |
中でも主要なのが、「太陽光発電」「水力発電」「風力発電」「バイオマス発電」「地熱発電」の5つです。
種類ごとの特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事や資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは』を参考にしてください。
再生可能エネルギーはなぜ重要?
再生可能エネルギーは、「地球温暖化対策」や「発電の永続性」「エネルギー自給率」といった観点から、重要といわれています。
皆さんご存じかと思いますが、地球温暖化の主な原因は温室効果ガスの大量排出です。再生可能エネルギーは発電時に温室効果ガスを排出しないため、地球温暖化対策として有効といえます。
また、再生可能エネルギーは、化石燃料(石炭・石油・天然ガスの総称)とは違い、枯渇することがありません。そのため、永続的に発電できます。
さらに、再生可能エネルギーは、化石燃料のように資源を輸入する必要がありません。国内でエネルギー調達が可能なため、日本のエネルギー自給率向上に大きく寄与します。
このほか、「自然災害などにより火力発電所が機能しない際に、予備電源として活用できる」といったメリットがあることも、再生可能エネルギーが重要視されている理由の一つといえるでしょう。
日本における再生可能エネルギーの発電割合
資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』によると、2022年度時点の再生可能エネルギーの発電割合(再エネ比率)は21.7%でした。一方、化石燃料による火力発電は、発電電力量全体の約70%を占めています。
この結果から、日本では再生可能エネルギーは導入されているものの、化石燃料にはまだ遠く及ばないということがわかりますね。
発電割合の推移を見ると、太陽光発電の割合が2013年頃から増加傾向にあります。その他の再生可能エネルギーについては、顕著な増加は見られません。
発電割合の詳細や世界主要国との比較について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
再生可能エネルギー導入を促進する上での課題
再生可能エネルギーについて紹介してきましたが、「概要や種類、必要性は理解したものの、どのような課題があるのかも気になる」という方も多いでしょう。再生可能エネルギー普及に向けた主な課題としては、以下の4つが挙げられます。
■再生可能エネルギーの課題
- 発電コストが高い
- 再生可能エネルギーのみでは電力を安定供給できない
- 電力系統が完全には整備されていない
- 長期的に考えると安定性が低い
それぞれについて、解説します。
参考:資源エネルギー庁『再エネの主力電源化を実現するために』
課題1.発電コストが高い
最大の課題と考えられるのが、日本における再生可能エネルギーの発電コストの高さです。
諸外国では、再生可能エネルギーの発電コストは低下してきており、他の発電方法と比べて、コスト面で優位性を確保できています。
一方で、平野部の少なさや自然災害の多さ、人件費・物価などの影響で、諸外国と比べると、日本の再生可能エネルギーの発電コストは高い傾向にあります。日本における再生可能エネルギーの普及に向け、避けては通れない課題といえますね。
課題2.再生可能エネルギーのみでは電力を安定供給できない
再生可能エネルギーの中には、太陽光や風力のように発電量が季節や天候に左右されやすいものがあります。そのため、「電力需要を見越して、今月は●●Kw発電したい」と思っても、計画通りに発電量をコントロールするのは困難です。
「晴天が続き、電力需要以上に発電できる」ときもあれば、「雨の日が多く、電力需要をはるかに下回る発電しかできない」ときもあるでしょう。電力を安定供給できず、需給バランスが崩れた状態が続けば、大規模な停電が発生する可能性もあります。
課題3.電力系統が完全には整備されていない
電力系統が完全には整備されていないことも、課題の一つです。
日本ではこれまで、電力会社が設置した大量の電力を生み出す発電所と、電力を必要としている需要地を結ぶ形で作られてきました。しかしながら、「従来の大規模な発電所のある地域」と「再生可能エネルギーでの大規模発電が見込まれる地域」は必ずしも一致しません。
「既存の電力系統と再生可能エネルギーを発電できる地域が離れていて、そのままでは発電した電力を供給できない」「電力系統の増設/新設が必要だが、時間やコストがかかる」という問題が生じています。
課題4.長期的に考えると安定性が低い
再生可能エネルギーの発電事業者には、小規模事業者も多いといわれています。そのため、将来的に設備の改修・刷新が必要となった際のリソース確保が難しく、発電事業から撤退する企業が続出する可能性があります。長期的な安定性が低いといわざるを得ないのです。
このほか、再生可能エネルギーの大規模発電に関しては、「発電効率が低く、広大な土地が必要」「事前調査や施工などに時間が必要で、すぐには発電事業を開始できない」といった課題もあります。
再生可能エネルギーの課題の解決策
上で紹介した再生可能エネルギーの課題は、どのようにすれば解決できるのでしょうか。残念ながら、現状ではまだ明確な解決策が見つかっていないものもあります。
そこで、ここでは現時点で明らかになっている2つの解決策にフォーカスして、紹介します。
■再生可能エネルギーの課題解決策
- 新しい太陽電池の開発
- 洋上風力発電の推進や蓄電池などの活用
参考:資源エネルギー庁『再エネの主力電源化を実現するために』
解決策1.新しい太陽電池の開発(対:コスト削減)
コスト削減に向けた取り組みとして、「ペロブスカイト太陽電池」という新しい太陽電池の開発が進められています。
一般的に、太陽光発電で用いられているのは「シリコン系太陽電池」というものです。開発中のペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト結晶構造という独自の構造を持つ化合物を用いています。
そのため、シリコン系太陽電池にはない「薄くて、軽く、柔軟」という特性があります。また、ペロブスカイト太陽電池は、製造工程が少なく、大量生産できるため、低コスト化が見込めると期待されています。
なお、2025年の大阪・関西万博では、積水化学工業株式会社が開発中の「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」が会場内のバスシェルターの夜間LED照明用の電力として活用される予定です。
参考:資源エネルギー庁『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?』
参考:積水化学工業株式会社『2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)への協賛およびフィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置について』
解決策2.洋上風力発電の推進や蓄電池などの活用(対:安定供給)
電力の安定供給に向け、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの導入が推進されています。中でも、注目されているのが「洋上風力発電」です。日本は周囲を海に囲まれているため、洋上風力発電が普及するポテンシャルが高いと考えられています。
また、充電によって電気を蓄えて繰り返し使用できる「蓄電池」の活用も有効です。余った電力を貯めておけるため、電力が不足しそうなときは蓄電池から使うようにすれば、電力の需給バランスを保ちやすくなります。
この他、以下のような新しい仕組みや技術の活用も期待されています。
■新しい仕組み・技術の例
- バーチャルパワープラント(VPP):既存の発電設備や蓄電池などを、IoT技術で統合的に制御し、電力の需給調整に活用する仕組み
- Power-to-gas:電力を水素に変換して貯蔵する技術
参考:資源エネルギー庁『これからの再エネとして期待される風力発電』『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~「蓄電池」は次世代エネルギーシステムの鍵』
課題解決に向けては、日本政府も動きを進めています(次章を参照)。企業としては、政府の動向を押さえつつ、自社の取り組みを考えていくことが大切ですね。なお、再生可能エネルギーの普及に向けて企業ができることについては、後ほど詳しく紹介します。
日本政府は再生可能エネルギーの課題解決を後押し
再生可能エネルギーの普及に向け、日本政府は課題解決を後押ししています。
例として、先ほど紹介した「ペロブスカイト太陽電池」や「洋上風力発電」についての政府の動向を表にまとめました。
課題解決策 | 政府の動向 |
---|---|
ペロブスカイト太陽電池の開発 | ・2兆円規模の「グリーンイノベーション基金」において、「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」を立ち上げ ・開発プロジェクトの予算を、「498億円」から「648億円」に増額 ・今後は、基盤技術の開発事業や大型化・発電コストの向上に向けた実用化事業、量産技術なども含めた実証事業などの拡充により、2030年を待たずに社会実装の実現を目指す方針 |
洋上風力発電の推進 | ・2020年に制定された「洋上風力産業ビジョン」において、政府として2030年に10GW、2040年に30~45GWの案件形成、および産業界として2040年までに国内調達比率60%とする目標を設定 ・再エネ海域利用法に基づき、沿岸海域において、年平均1GWのペースで10箇所の促進区域を創出中 ・今後は、2040年目標の実現に向け、「EEZにおける洋上風力の導入に向けた具体的な制度措置の検討」「欧米などと連携した研究開発・調査の実施」などを実施する予定 |
今後の動向についても、注視していきましょう。
参考:資源エネルギー庁『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)~早期の社会実装を目指した取り組み』
参考:経済産業省『洋上風力発電に関する国内外の動向等について』
再生可能エネルギーの普及に向けて、企業ができること
再生可能エネルギーを日本全体に普及させるには、各企業が自社としてできることを確実に実行することも大切です。「企業として、どのようなことに取り組めばよいのか」を紹介します。
太陽光発電パネルを設置する
企業が真っ先に実施すべきなのが、太陽光発電パネルの設置です。環境省の資料によると、太陽光発電には、他の再生可能エネルギーに比べ「発電コストが安い」「施工期間が短い」「運転・維持管理にかかる手間が比較的少ない」といった利点があります。そのため、多くの企業にとって、太陽光発電が最も取り入れやすい再生可能エネルギーとなっています。
設置場所としては、社屋の屋上や会社の敷地内などが挙げられます。また、カーポートの屋根を利用する方法もあります。「日光を遮るものがない場所」や「傾斜のない場所」「自然災害の影響を受けづらい場所」が適しているので、参考にしてください。
参考:環境省『はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)』
再生可能エネルギーを提供する電力会社と契約する
立地やコスト面などの制約によって、太陽光発電パネルの設置が難しい企業もあるでしょう。そうした企業におすすめしたいのが、再生可能エネルギーで発電された電力の購入です。
具体的には、再生可能エネルギーで発電された電力を供給している電力会社と契約を結ぶ形となります。こうした契約を結ぶ企業が増えることで、再生可能エネルギーによる発電の推進につながっていくでしょう。
課題もあれど、再生可能エネルギーの発電割合を増やしていくことが重要
再生可能エネルギーには、「発電コストが高い」「再生可能エネルギーのみでは電力の安定供給が難しい」などの課題があります。しかしながら、再生可能エネルギーは「地球温暖化対策」「発電の永続性」「エネルギー自給率」といった観点でとても重要なため、課題はあれど、発電割合を増やしていくことが大切です。
課題解決策としては、「新しい太陽電池の開発」「洋上風力発電の推進、蓄電池などの活用」が有効です。また、日本政府も課題解決を後押ししています。企業としては、再生可能エネルギーの普及に向け、「太陽光発電パネルの設置」や「再生可能エネルギーを提供する電力会社との契約」を進めましょう。