再生可能エネルギーとは何かを簡単に解説!種類やメリット、導入状況など
- 再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーです。太陽光発電や水力発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電など、全9種類あります。
- 再生可能エネルギーには、「地球温暖化対策になる」「永続的に発電できる」「日本のエネルギー自給率向上に寄与する」といったメリットがあります。
- 企業としては、「発電設備の設置」や「再生可能エネルギーで発電された電力の購入」をすることが大切です。
一度利用しても比較的短期間に再生することができ、繰り返し利用可能な、再生可能エネルギー。環境問題への関心が高く、「どのような種類があるのか」「どういったメリットが期待できるのか」などを知りたい企業も多いでしょう。
この記事では、再生可能エネルギーの定義をはじめ、種類やメリット、導入状況などを簡単に解説します。これを読めば、再生可能の概要を理解できるだけでなく、企業として何をすべきかも明確になります。ぜひ最後までお読みください。
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーのこと。発電時に温室効果ガスを排出せず、国内で生産できるのが特徴です。日本のエネルギー安全保障にも寄与する重要な低炭素の国産エネルギー源として、注目されています。
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|総論』
【一覧表】再生可能エネルギーの種類
資源エネルギー庁のホームページによると、再生可能エネルギーは全9種類あります。再生可能エネルギーの種類と発電/利用方法を、一覧表にまとめました。
種類 | 発電/利用方法 |
---|---|
太陽光発電 | シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池により直接電気に変換する |
水力発電 | 高い所に貯めた水を低い所に落とすことによる位置エネルギーを利用して水車を廻し、水車につながっている発電機を回転させることで発電する |
風力発電 | 風のエネルギーを電気エネルギーに変えることで発電する |
バイオマス発電 | 動植物などから生まれた生物資源の総称である「バイオマス」を直接燃やしたり、ガス化したりして発電する |
地熱発電 | 地中深くから取り出した蒸気でタービンを直接回して発電する |
太陽熱利用 | 太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、熱媒体を暖めて、給湯や冷暖房などに利用する |
雪氷熱利用 | 寒い時期の雪や氷を保管し、冷熱が必要となる時季に利用する |
温度差熱利用 | 地下水や河川水、下水などの水源を熱源とし、水の持つ熱をヒートポンプを用いて利用する |
地中熱利用 | 浅い地盤中に存在する低温の熱エネルギーである地中熱を冷暖房などに利用する |
中でも主要なのが、「太陽光発電」「水力発電」「風力発電」「バイオマス発電」「地熱発電」の5つです。
種類ごとの特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事や資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは』を参考にしてください。
再生可能エネルギーのメリット・デメリット
再生可能エネルギーにはどのようなメリット・デメリットがあるのかを、簡単に紹介します。
メリット
再生可能エネルギーには、以下のようなメリットが期待できます。
- 温室効果ガスを排出しないため、地球温暖化対策として効果的である
- 化石燃料と違って枯渇しないため、永続的に発電できる
- 化石燃料のように資源を輸入する必要がなく、国内でエネルギー調達が可能なため、日本のエネルギー自給率向上に寄与する
- 自然災害などにより発電所が機能しない際に、予備電源として活用できる
- 酸性雨の原因となる物質(二酸化硫黄や窒素酸化物)が発生しないため、酸性雨対策にもなる など
デメリット
再生可能エネルギーにはさまざまなメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 天候や季節によって発電量が変動するため、電力の安定供給が難しい
- 現状、火力発電よりも発電コストが高い傾向にある
- 火力発電に比べて、エネルギー変換効率が悪い
- エネルギー変換効率が低い分だけ、広大な土地・設備が必要となる(同じ量を発電しようとした場合、火力発電の方が少ない土地・設備ですむ) など
企業としては、メリット・デメリットがあることを認識した上で、どのように再生可能エネルギーを活用するかを考えることが大切です。なお、企業が再生可能エネルギーを導入する方法については、後ほど紹介します。
再生可能エネルギーの導入状況
実際、再生可能エネルギーの導入はどのくらい進んでいるのでしょうか。日本における導入状況や世界との比較について、グラフを使って紹介します。
日本における導入状況
資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』によると、2022年度時点の再生可能エネルギーの発電割合(再エネ比率)は21.7%でした。一方で、化石燃料(石油・石炭・天然ガスの総称)による火力発電は発電電力量全体の約70%を占めています。
これらの結果から、日本では再生可能エネルギーは導入されているものの、化石燃料にはまだ遠く及ばないということが見て取れますね。
発電割合の推移を見ると、太陽光発電の割合が2013年頃から増加傾向にあることがわかります。なお、その他の再生可能エネルギーについては、顕著な増加は見られません。
日本と世界の比較
資源エネルギー庁の情報によると、2021年度時点における日本を含む世界主要国の発電割合は以下のグラフの通りです。
日本の「再エネ比率」は20.3%と、他国に比べると高いとは言えません。
一方で、日本の再生可能エネルギーの「発電導入容量(既に発電を開始した設備の設備容量)」は世界的に高い水準にあります。
2021年度時点で、日本の再生可能エネルギー発電導入容量は世界第6位、太陽光発電導入容量は世界第3位でした。つまり、「発電割合」だけ見ると日本は他国に遅れを取っているものの、「導入した設備でどれだけ発電できるか」で考えると日本のポテンシャルは非常に高いといえますね。
一方で、上のグラフからは、世界主要国と日本では「太陽光発電が再生可能エネルギーに占める割合」が大きく異なることもわかります。ブラジル、ドイツ、カナダ以外の世界主要国では、「太陽光」「風力」「水力」それぞれの割合に大差がありません。しかし、日本の再生可能エネルギーは、その大半を太陽光発電が占めています。
再生可能エネルギーの普及に向けた政府の取り組み
再生可能エネルギーの普及に向け、政府はFIT制度とFIP制度を導入しています。
FIT制度は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度です。再生可能エネルギーで発電した電気を、国が決めた価格で買い取ることを電力会社に義務付けています。
FIP制度とは、市場連動型の再生可能エネルギー買取制度のこと。再生可能エネルギーの発電事業者が卸市場などで売電する際、売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みとなっています。
両制度についての詳細は、こちらの記事をご確認ください。
企業が再生可能エネルギーを導入する方法
企業が再生可能エネルギーを導入する方法は、「発電設備の設置」と「再生可能エネルギーで発電された電力の購入」の2つです。それぞれについて、解説します。
発電設備の設置
企業が真っ先に検討すべきなのが、発電設備の設置です。
具体的には、太陽光発電パネルを設置するとよいでしょう。設置場所としては、社屋の屋上や会社の敷地内などが挙げられます。カーポートの屋根を利用する方法もあります。「日光を遮るものがない場所」や「傾斜のない場所」「自然災害の影響を受けづらい場所」が適しているので、参考にしてください。
再生可能エネルギーで発電された電力の購入
立地やコスト面などの制約によって太陽光発電パネルの設置が難しい場合は、再生可能エネルギーで発電された電力の購入を検討すべきです。
具体的には、再生可能エネルギーで発電された電力を供給している電力会社と契約を結ぶ形となります。こうした契約を結ぶ企業が増えれば、再生可能エネルギーによる発電の推進にもつながっていくでしょう。
再生可能エネルギーの活用事例
再生可能エネルギーの活用を検討している企業にとっては、他社の活用事例も気になるところでしょう。資源エネルギー庁の『再生可能エネルギー事業事例集』をもとに、簡単に紹介します。
青森県の社会福祉法人拓心会では、敷地内にある5つの施設の屋根に計731枚の太陽光発電パネルを設置。施設内消費電力としての使用を予定しています。
北海道の北海道健誠社では、クリーニング工場に木質バイオマスボイラーを導入。燃料調達の安定化のため、建築廃材と林地残材を自ら調達するとともに、それらを原料にしたチップを自家生産する体制を整備しています。
再生可能エネルギーについてのよくある質問
再生可能エネルギーの概要や現状などについて見てきましたが、「もっと知りたい」という方もいるでしょう。そこで、再生可能エネルギーについてのよくある質問とその答えを紹介します。
Q1.再生可能エネルギーと「自然エネルギー」の違いは何ですか?
自然エネルギーとは、太陽や地熱、風といった自然現象によって得られるエネルギーの総称です。再生可能エネルギーと自然エネルギーはほぼ同じ意味の用語として使われますが、一般的に自然エネルギーには「バイオマス発電」は含まれないとされています。
Q2.再生可能エネルギーは「ZEH」や「ZEB」とどのような関係がありますか?
ZEH(Net Zero Energy House)やZEB(Net Zero Energy Building)は、いずれも「1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする」という考えに基づく建物です。ZEHは一般住宅を、ZEBはビルや工場を対象としています。
ZEHやZEBを実現するためには、「省エネ技術」のみならず、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーにより電気を創り出す「創エネ技術」も必要です。つまり、再生可能エネルギーはZEHやZEBの実現に必要不可欠なものといえますね。
参考:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」』
参考:環境省 ZEB PORTAL『やさしい説明|1. ZEBとは?』『やさしい説明|5.どうやったらZEBがつくれるの?』
Q3.日本の発電を「再生可能エネルギー」だけにすることはできますか?
再生可能エネルギーだけで日本の発電をまかなうことはできません。再生可能エネルギーの多くは季節や天候によって発電量が変動し、年間を通して電力を安定的に供給し続けることができないからです。
また、電力の安定供給のためには、再生可能エネルギーのみに依存するのは望ましくありません。火力発電など他の発電方法と組み合わせることが必要です。また、蓄電池のように、エネルギーを蓄積する手段の確保も有効といえます。
参考:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|7.再エネ』
再生可能エネルギーについて理解し、活用を進めていこう
一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できる再生可能エネルギーには、「太陽光発電」「水力発電」「バイオマス発電」など9種類があります。再生可能エネルギーを活用することで、「地球温暖化対策になる」「永続的に発電できる」「日本のエネルギー自給率向上に寄与する」といったメリットが期待できるでしょう。
しかしながら、日本の発電割合に占める再生可能エネルギーの割合は、現状ではそれほど高くありません。再生可能エネルギーの普及に向け、政府はFIT制度やFIP制度を導入しています。企業としては、再生可能エネルギーについて理解した上で、「発電設備の設置」や「再生可能エネルギーで発電された電力の購入」といった方法で活用を進めていきましょう。