【図説】日本の発電割合は?現状や推移、再生可能エネルギーについて解説
- 現状、日本の発電割合の約7割が火力発電です。太陽光や水力といった再生可能エネルギーの発電割合は、約2割にとどまっています。
- 地球温暖化対策につながることから、再生可能エネルギーの発電割合の向上が期待されています。
- 再生可能エネルギーの発電割合を高めるため、企業・個人は「太陽光発電パネルの設置」や「再生可能エネルギーで発電された電力の購入」をしましょう。
化石燃料や太陽光などさまざまな発電方法がありますが、日本の発電割合の現状はどのようになっているのでしょうか。また、「これまで、どう推移してきたのか」「注目されている再生可能エネルギーにはどのような種類があるのか」なども気になるところです。
今回は、日本の発電割合の現状や推移、再生可能エネルギーの種類・特徴などについて、わかりやすく解説します。これを読めば、日本の発電割合について理解できるとともに、「企業や個人が、再生可能エネルギーの発電割合を高めるために何をすべきか」も明確になるでしょう。
【円グラフで解説】日本の発電割合の現状は?
日本の発電割合(電源構成)について、円グラフで解説します。
資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』によると、2022年度の発電割合が一番高かったのは「天然ガス」で33.8%でした。次いで、「石炭(30.8%)」「太陽光(9.2%)」「石油等(8.2%)」などとなっています。
なお、石油・石炭・天然ガスを総称して「化石燃料」と呼びますが、化石燃料による発電(火力発電)は発電電力量全体の72.8%でした。日本の発電割合の約7割が火力発電であることがわかりますね。一方、太陽光や水力といった「再生可能エネルギー(※詳細は後述)」の発電割合(再エネ比率)は、約2割にとどまっています。
世界の発電割合との比較
資源エネルギー庁の情報によると、2021年度時点における日本を含む世界主要国の発電割合は以下のグラフの通りとなっています。
日本の「再エネ比率」は20.3%です。カナダ(67.2%)やフランス以外の欧州諸国(40%前後)に比べると高いとは言えません。
しかしながら、下の2つのグラフからわかるように、日本の再生可能エネルギーの「発電導入容量(既に発電を開始した設備の設備容量)」は世界的に高い水準にあります。
2021年度時点で、日本の再生可能エネルギー発電導入容量は世界第6位、太陽光発電導入容量は世界第3位でした。つまり、先ほど紹介した「発電割合」だけ見ると日本は他国に遅れを取っているものの、「どれだけ発電できるか」で考えると日本のポテンシャルは非常に高いということです。今後に期待ができそうですね。
一方で、上のグラフからは、世界主要国と日本では「太陽光発電が再生可能エネルギーに占める割合」が大きく異なることもわかります。ブラジル、ドイツ、カナダ以外の世界主要国では、「太陽光」「風力」「水力」それぞれの割合に大きな差はありません。しかし、日本の再生可能エネルギーは、その大半を太陽光発電が占めています。つまり、日本は太陽光発電に頼っており、他の再生可能エネルギーの発電は少ないといえますね。
日本の発電割合の推移
日本の発電割合は、どのように変化してきたのでしょうか。資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』によると、発電割合の推移は以下のグラフの通りです。
参考:資源エネルギー庁の『令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)』を加工して作成
このグラフから特筆すべきなのが、「原子力」と「太陽光」の発電割合の変化です。
原子力については、2010年時点では全体の約25%を占めていましたが、2011年を境に激減しました。その背景には、2011年東日本大震災によって、東京電力・福島第一原子力発電所で水素爆発事故があったことが影響しています。
それを受け、「東日本大震災後に定期点検入りした原子力発電所がほとんど再稼働しなかったこと」「2013年10月から2015年7月まですべてのプラントが稼働を停止したこと」から、原子力発電が激減。その後、再稼働プラントが徐々に増えたため、2016年頃から微増傾向となりました。
また、太陽光については、2013年頃から増加傾向が続いています。その理由として、「2012年に太陽光の全量買取制度が開始されたこと」や「人々の間で環境への意識が高まっていること」などが考えられるでしょう。
発電割合の向上が期待される「再生可能エネルギー」
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能で、繰り返し利用できるエネルギーのこと。火力発電と異なり、発電時に二酸化炭素(CO2)が発生しません。そのため、地球温暖化対策に寄与するとして、発電割合の向上が求められています。
資源エネルギー庁のホームページによると、全部で9種類の再生可能エネルギーがあります。
■再生可能エネルギーの種類
- 太陽光発電
- 水力発電
- 風力発電
- バイオマス発電
- 地熱発電
- 太陽熱利用
- 雪氷熱利用
- 温度差熱利用
- 地中熱利用
なお、太陽や地熱、風といった自然現象によって得られるエネルギーを総称して、「自然エネルギー」と呼びます。再生可能エネルギーと自然エネルギーはほぼ同じ意味合いですが、自然エネルギーに「バイオマス発電」は含まれないといわれています。
ここでは、再生可能エネルギーの中でも主要な5つの発電(太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電)について、紹介します。
再生可能エネルギーについて詳しく知りたい方は、以下の記事や資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは』をご覧ください。
太陽光発電
太陽光発電とは、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池により直接電気に変換する発電方法。近年、日本における導入が進んでおり、「日本を代表する再生可能エネルギー」といわれています。
太陽光発電の主な特徴は、以下の通りです。
■主な特徴
- エネルギー源は太陽光:それゆえ、基本的には設置する地域に制限がなく、導入しやすい
- 用地を占有しない:屋根、壁などの未利用スペースに設置できるため、新たに専用地を用意する必要がない
- 遠隔地の電源として有効:山岳部や農地など送電設備のない遠隔地の電源として活用できる
- 非常用電源として有効:災害時などに非常用電源として使用可能
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|太陽光発電』
水力発電
水力発電とは、高い所に貯めた水を低い所に落とすことによる位置エネルギーを利用して水車を廻し、水車につながっている発電機を回転させることで発電する方法。水資源に恵まれた日本では、昔から水力発電が行われています。
ダムのような大規模水力発電をイメージする方が多いかと思いますが、近年は農業用水や上下水道などを利用する中小水力発電の建設が活発化しています。
水力発電の主な特徴は、以下の通りです。
■主な特徴
- 安定供給が可能:自然条件によらず、一定量の電力を安定的に供給できる
- 長期稼働が可能:一度発電所を作れば、その後は数十年間にわたり、発電できる
- 発電時のCO2排出がゼロ:発電時にCO2を排出しない、クリーンエネルギー
- 成熟した技術力:日本では昔から水力発電が行われてきたため、技術・ノウハウが蓄積されている
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|水力発電』
風力発電
風力発電とは、風のエネルギーを電気エネルギーに変える発電方法。欧米諸国に比べると導入が遅れているものの、2000年以降は導入件数が増加傾向にあります。
風力発電の主な特徴は、以下の通りです。
■主な特徴
- 陸上と洋上で発電が可能なエネルギー源:日本では陸上風力の設置が進んでいるものの、導入可能な適地は限定的。大きなポテンシャルを持つ洋上風力発電の活用も検討・計画されている
- 将来的に経済性を確保できる可能性のあるエネルギー源:大規模発電ができれば火力発電なみに低い発電コストですむことから、将来的には経済性も確保できる可能性がある
- 変換効率がよい:風車の高さやブレード(羽根)によって異なるものの、風力エネルギーは高効率で電気エネルギーに変換できる
- 夜間も稼働可能:風さえあれば、夜間でも発電できる
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|風力発電』
バイオマス発電
「バイオマス」とは、動植物などから生まれた生物資源の総称です。バイオマス発電では、バイオマスを直接燃やしたり、ガス化したりして発電します。現在は技術開発が進んでおり、さまざまな生物資源が有効活用されています。
バイオマス発電の主な特徴は、以下の通りです。
■主な特徴
- 地球温暖化対策に寄与:光合成によりCO2を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とした発電は、国際的なルール上、CO2を排出しないものとみなされる
- 循環型社会の構築に寄与:未活用の廃棄物を燃料とするため、廃棄物の再利用や減少につながり、循環型社会構築に大きく寄与する
- 農山漁村の活性化:国内の農産漁村にある家畜排泄物や稲ワラ、林地残材などのバイオマス資源を利活用することにより、農産漁村の自然循環環境機能が維持増進され、持続的発展が可能となる
- 地域環境の改善:家畜排泄物や生ゴミなど、これまでは捨てていたものを資源として活用することで、地域環境の改善に貢献できる
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|バイオマス発電』
地熱発電
地熱発電とは、地中深くから取り出した蒸気でタービンを直接回して発電する方法。火山帯に位置する日本において、地熱の利用は第2次世界大戦後早くから注目されていました。総発電電力量はまだ少ないものの、安定して発電できる純国産エネルギーです。
地熱発電の主な特徴をまとめました。
■主な特徴
- 高温蒸気・熱水の再利用が可能:発電に使った高温の蒸気・熱水は、農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房などに再利用できる
- 長期にわたり持続可能な再生可能エネルギー:地下の地熱エネルギーを使うため、化石燃料のように枯渇する心配が無く、長期間にわたる供給が期待できる
- 昼夜を問わない安定した発電が可能:昼夜を問わず坑井(井戸)から天然の蒸気を噴出させるため、連続して発電できる
参考:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー|再生エネルギーとは|地熱発電』
再生可能エネルギーを普及させる上での課題
再生可能エネルギーを普及させるにあたっては、以下のような課題があります。
■再生可能エネルギーを普及させる上での課題
- 発電コストが高い:日本の平野部の少なさや自然災害の多さ、人件費・物価などの影響で、諸外国と比べると、日本の再生可能エネルギーの発電コストは高い傾向にある
- 長期的に考えると安定性が低い:太陽光発電に偏りすぎているなどの理由から、安定性が低い
- 電力系統が完全には整備されていない:再生可能エネルギーの発電場所と既存の電力系統が遠く離れている場合には、電力系統の増設/新設が必要になる
- 再生可能エネルギーのみでは電力を安定供給できない:気象条件に左右されやすい再生可能エネルギーに依存してしまうと、電力の需給バランスが崩れるリスクがある
課題や解決策について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
再生可能エネルギーの発電割合を高めるための取り組み
再生可能エネルギーの発電割合を高めるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。政府主導で進められている取り組みや、企業・個人で進められる取り組みを紹介します。
【政府主導】FIT制度・FIP制度
再生可能エネルギーの発電割合を高めるため、政府はFIT制度とFIP制度を導入しています。
FIT制度とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のこと。再生可能エネルギーで発電した電気を、国が決めた価格で買い取ることを電力会社に義務付けています。
FIP制度は、市場連動型の再生可能エネルギー買取制度です。再生可能エネルギーの発電事業者が卸市場などで売電する際、売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みとなっています。
FIT制度・FIP制度についての詳細は、こちらの記事をご確認ください。
【企業・個人】太陽光発電パネルの設置
企業や個人が真っ先に検討すべきなのが、太陽光発電パネルの設置です。設置場所としては、社屋や自宅の屋上、会社の敷地内、個人所有の土地などが挙げられます。「日光を遮るものがない場所」や「傾斜のない場所」「自然災害の影響を受けづらい場所」が適しています。
【企業・個人】再生可能エネルギーで発電された電力の購入
立地やコスト面などの制約によって太陽光発電パネルの設置が難しい企業・個人は、再生可能エネルギーで発電された電力の購入を検討しましょう。具体的には、再生可能エネルギーで発電された電力を供給している電力会社と契約を結ぶ形となります。こうしたニーズが高まれば、再生可能エネルギーによる発電の推進につながっていくでしょう。
再生可能エネルギー普及のために中小企業ができること
先ほど紹介した「太陽光発電パネルの設置」や「再生可能エネルギーで発電された電力の購入」の他にも、再生可能エネルギーの普及のために中小企業としてできることがあります。それが、「再エネ100宣言 RE Action」という枠組みへの参加です。
この枠組みは、企業や自治体などの電力需要家が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示すことで市場や政策を動かし、社会全体の再エネ利用100%を促進するもの。2024年10月現在、384の企業・団体が参加しています。参加するには、「遅くとも2050年迄に使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表すること」といった要件を満たす必要があります。
同枠組みに参加することで、企業価値の向上・ビジネスチャンスの拡大が期待できたり、再生可能エネルギー100%・脱炭素化の早期達成を目的としたプラットフォームに参加できたりします。再生可能エネルギーの活用に本腰を入れたい中小企業は、「再エネ100宣言 RE Action」への参加を検討しましょう。
参考:再エネ100宣言 RE Action『再エネ100宣言 RE Actionについて』
【Q&A】日本の発電に関するよくある質問
日本の発電割合について解説してきましたが、「もっと知りたい」という方もいるでしょう。そこで、日本の発電に関するよくある質問とその答えを紹介します。
Q1.日本のエネルギー自給率はどのくらいですか?
エネルギー自給率とは、国民生活や経済活動に必要なエネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率のこと。日本のエネルギー自給率は、2021年度時点で13.3%で、OECD加盟38カ国中37位でした。
OECD加盟国では、エネルギー自給率が100%超の国(ノルウェー、オーストラリア、カナダ、アメリカなど)や50%超の国(イギリス、フランスなど)も少なくありません。そうした国々と比べると、日本のエネルギー自給率は著しく低いといえます。
参考:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|1.安定供給』
Q2.日本の発電を「再生可能エネルギー」だけにすることはできますか?
再生可能エネルギーだけで日本の発電をまかなうことはできません。再生可能エネルギーの多くは季節や天候によって発電量が変動し、年間を通して電力を安定的に供給し続けることができないからです。
電力の安定供給のためには、再生可能エネルギーのみに依存せず、火力発電など他の発電方法と組み合わせる必要があります。また、蓄電池のように、エネルギーを蓄積する手段の確保も有効です。
参考:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|7.再エネ』
Q3.災害大国の日本では電力の安定供給が難しいと思いますが、大丈夫なのでしょうか?
確かに、台風や豪雨などにより、電力・燃料供給インフラが損壊したケースがこれまでに何度かありました。こうしたことを踏まえ、政府は「電力インフラの強靱化」を進めています。
その一環として、2023年3月、電力広域的運営推進機関(電気事業法に基づき、日本の電気事業の広域的運営を推進することを目的として設立された団体)は、広域連系系統のマスタープランを策定・公表。これは、再生可能エネルギーの量導入とレジリエンス(強靱性、回復力、弾力性)強化を目的としたものです。あわせて、北海道~本州間の海底直流送電などについて、具体的な整備計画の検討が開始されました。
また、東日本大震災による津波で原子力発電所が損壊したことを受け、原子力発電所の再稼働にあたっては、原子力規制委員会の定めた新規制基準に適合することが求められています。新しい規制基準では、従来のものと比べ、事故防止のための対策を強化。加えて、水素爆発といった「シビアアクシデント」や、航空機による意図的な衝突のような「テロ」への対策も新規制基準に追加されています。
参考:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|4.安全性』
日本における再生可能エネルギーの発電割合を高めていこう
現状、日本の発電割合の約7割が火力発電で、再生可能エネルギーの発電割合は3割弱しかありません。地球温暖化対策という観点から、発電時にCO2が発生しない「再生可能エネルギー」の発電割合の向上が必要です。
再生可能エネルギーの主要な発電方法としては、「太陽光発電」「水力発電」「風力発電」「バイオマス発電」「地熱発電」があります。中でも、日本で導入が進んでいるのが、太陽光発電です。
日本における再生可能エネルギーの発電割合を高めるため、「太陽光発電パネルの設置」や「再生可能エネルギーで発電された電力の購入」を検討・実施しましょう。