ペロブスカイト太陽電池とは?日本で注目される理由やメリットを解説

次世代の再生可能エネルギーとして近年ニュースなどで耳にする機会が増えた「ペロブスカイト太陽電池」。日本で発明され、ノーベル賞候補としても名高いこの技術は、従来のシリコン系太陽電池の常識を覆す可能性を秘めています。
本記事では、ペロブスカイト太陽電池の仕組みやメリット、実用化への課題について詳しく解説します。
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- ペロブスカイト太陽電池は薄く軽量で柔軟に曲がるため、壁や窓などにも設置可能です。
- 主原料のヨウ素は日本が世界第2位のシェアを誇り、エネルギーの安定供給に貢献します。
- 耐久性や量産化といった課題があるものの、2030年頃の本格普及を目指して開発が推進されています。
ペロブスカイト太陽電池とは?誕生の背景や仕組みについて
ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ材料を発電層に用いた、次世代型太陽電池です。
従来の硬くて重い太陽光パネルとは異なり、薄くて軽く、柔軟性に優れているという画期的な特徴を持っています。まずは、この次世代技術がどのように生まれ、どのような仕組みなのかを詳しく見ていきましょう。
(参考:資源エネルギー庁『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?』)
ノーベル賞候補!日本国内の大学で生まれた大発明
ペロブスカイト太陽電池は、2009年に日本国内の大学の研究グループによって発明されました。発明当初のエネルギー変換効率は3.8%でしたが、その後わずか十数年で向上。2024年11月には、従来のシリコン太陽電池の発電効率(20%程度)を上回る27%程度に達した例も報告されています。
「手軽に製造できる」という当初からの強みに「高い発電能力」が加わったことで実用化への期待は一気に高まりました。この技術の生みの親である研究者は、ノーベル賞候補としても大きな注目を集めています。
(参考:資源エネルギー庁『変換効率37%も達成!「太陽光発電」はどこまで進化した?』『令和6年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2025) 第1部 エネルギーを巡る状況と主な対策 第2章 グリーントランスフォーメーション(GX)・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取組 第3節 カーボンニュートラル実現に向けた次世代エネルギー革新技術の動向』)
従来のシリコン系ソーラーパネルとの違い・仕組み
現在、工場の屋根やメガソーラーなどで主流となっているシリコンタイプの太陽電池は、1平方メートルあたり約15kgにもなる重く硬い板状のパネルです。設置場所には一定の強度や平坦さが求められるという制限がありました。
■シリコンタイプの太陽電池の構造

一方、ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイト層で光を吸収して発電する仕組みを持っています。
■ペロブスカイト結晶構造とペロブスカイト太陽電池の断面構造

シリコンタイプとの最大の違いは、インク状のペロブスカイト材料を基板に「塗る」ことで製造できる点にあります。この製造工程により、重量を従来の約10分の1(1平方メートルあたり約1.5kg)にまで抑えた、フィルムのように薄く柔らかい仕上がりを実現しました。これにより、建物の耐荷重や形状の問題でこれまでシリコン系パネルを設置できなかった場所でも、太陽光発電が可能になると考えられています。
ペロブスカイト太陽電池の種類
ペロブスカイト太陽電池は、主に「フィルム型」「ガラス型」「タンデム型」の3種類に分類されます。
■ペロブスカイト太陽電池の種類と特徴

- フィルム型:薄くて曲がる特性を持ち、多様な場所に設置可能
- ガラス型:窓などの建材と一体化させやすい
- タンデム型:シリコン系太陽電池の上にペロブスカイト層を重ねたもので、高い変換効率が目指せる
このように複数の種類があるため、用途や設置場所のニーズに合わせて最適なタイプを展開できる点が、ペロブスカイト太陽電池の大きな強みです。それぞれの形態で実用化に向けた研究が進むことで、太陽光発電の導入エリアがこれまで以上に大きく拡大していくと考えられています。
ペロブスカイト太陽電池が日本で注目される理由2選
日本発の技術であることはもちろんですが、国をあげて実用化を推進している背景には、日本の国情に合わせた切実な理由があります。
(参考:経済産業省『月刊日本館』)
1.パネルを置く平地が不足している日本の再エネ事情
日本は国土の約7割を山地や森林が占めており、従来のシリコン系太陽光パネルを設置しやすい「平地」が諸外国と比べて圧倒的に少ないという地理的な課題を抱えています。
■各国の国土面積・平地面積・平地面積が国土面積に占める割合
| 日本 | ドイツ | イギリス | 中国 | スペイン | フランス | インド | アメリカ | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 国土面積(平方キロメートル) | 38万 | 36万 | 24万 | 960万 | 51万 | 55万 | 329万 | 983万 |
| 平地面積(平方キロメートル) | 13万 | 24万 | 21万 | 733万 | 31万 | 37万 | 256万 | 674万 |
| 平地面積が国土面積に占める割合(%) | 34 | 68 | 87 | 76 | 62 | 68 | 78 | 69 |
表の通り、主要国の平地面積の割合が60%〜80%台であるのに対し、日本は34%にとどまります。この限られた平地にメガソーラーなどの開発を進めてきた結果、従来のシリコン系太陽光パネルを大量に設置するための適地が不足してきています。
しかし、軽量で曲がるペロブスカイト太陽電池であれば、ビルの垂直な「壁」や、強度の低い「古い屋根」などにも設置可能です。限られた国土の未利用スペースを有効活用できるため、日本の再生可能エネルギー拡大の切り札として大きく期待されています。
2.主原料の「ヨウ素」は日本が世界シェア上位!資源問題の救世主
ペロブスカイト太陽電池の主原料である「ヨウ素」は、日本が世界シェアの26%を占め、世界第2位の生産量を誇る国内資源です。資源の少ない日本にとって、ヨウ素は貴重な存在と言えます。
■ヨウ素の国際シェア

従来のシリコン系太陽電池は、パネルの材料や製造を海外からの輸入に頼る部分が大きいのが実情でした。しかし、ペロブスカイト太陽電池であれば国内資源を中心にエネルギーを生み出せる可能性があります。
この強みを活かし、日本国内で強靭なサプライチェーンを構築できれば、課題とされる「エネルギー自給率の向上」と「エネルギーの安定供給」の両方の実現へとつながるため、国を挙げた一大プロジェクトとして開発が推進されています。
ペロブスカイト太陽電池のメリット3点
ここからは、ペロブスカイト太陽電池が持つ具体的な3つのメリットについて詳しく解説します。
1.薄い・軽い・曲がる!窓ガラスや壁にも設置可能
最大のメリットは、その物理的な特性です。薄くて軽いため、建物の耐荷重を気にすることなく設置できる場所が増えます。オフィスの窓ガラスや建物の壁と言った場所にも設置ができます。
■フィルム型ペロブスカイト太陽電池の活用イメージ

出典:資源エネルギー庁『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)~早期の社会実装を目指した取り組み』
また、柔軟性を持たせることで曲面にもフィットするため、円柱状の柱やドーム型の屋根、カーブした壁面など、これまで設置が難しかった場所でも太陽光発電が可能になります。
(参考:資源エネルギー庁『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?』)
2.曇りの日や室内光(低照度)でもしっかり発電
従来のシリコン系太陽光パネルは、晴天時の強い日差しでは高いパフォーマンスを発揮する反面、曇りや雨の日、朝夕などの弱い光の環境下では発電量が落ちてしまう弱点がありました。
ペロブスカイト太陽電池は、低照度(弱い光)の環境下でも効率よく電気を生み出せるのが強みです。朝夕を含めて一日中安定して稼働できるため、ピーク時の瞬間的な出力だけでなく「一日の総発電量が大きい太陽電池」として高い期待を集めています。
日照条件が悪い地域での導入はもちろん、室内のLED照明を活用したIoT機器の電源など、屋内空間での活用も見込まれるため、エネルギー利用の幅がこれまで以上に大きく広がります。
(参考:経済産業省『第10回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 グリーン電力の普及促進等分野ワーキンググループ』)
3.「塗って作れる」から製造コストが安い
ペロブスカイト太陽電池のメリットは、性能や設置場所だけにとどまりません。「製造工程」においても画期的な強みを持っています。
インク状の材料を基板に「塗って乾かす」という新しい製法により、150℃以下という低温での製造を可能にしました。従来のシリコン系パネルは製造時に1000℃以上の高温処理が欠かせませんでしたが、ペロブスカイトであれば製造に必要なエネルギーを大幅にカットできます。
今後量産化が進むことで、太陽電池の製造コストそのものを根本から引き下げる効果が期待されています。
(参考:経済産業省『月刊日本館』)
なぜまだ普及しない?ペロブスカイト太陽電池のデメリットや課題3点
画期的なメリットが多い一方で、実用化と本格的な一般販売に向けては、乗り越えなければならない課題も存在します。
1.水分や光に弱い?耐久性と寿命への懸念
ペロブスカイト太陽電池は多くのメリットを持つ一方で、寿命が短く耐久性が低いことが実用化に向けた大きな課題となっています。
ペロブスカイトは「水分」や「光」によって劣化してしまう性質を持っています。そのため、実用化にはフィルムの「封止(ふうし)」技術が不可欠です。
現在、この封止技術によって水分をシャットアウトし、光による劣化を防ぐための開発に力が注がれており、耐久性のさらなる向上が求められています。
(参考:資源エネルギー庁『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?』『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)~早期の社会実装を目指した取り組み』、経済産業省『月刊日本館』)
2.材料に含まれる「鉛」問題と鉛フリーへの挑戦
ペロブスカイト発電層の材料には微量の「鉛」が含まれています。そのため、将来的な廃棄時における環境負荷(毒性)や、リサイクルに関する懸念が環境省などでも議論されています。
現在、安全な回収・リサイクルスキームの構築や、鉛を使わない「鉛フリー」材料の開発への挑戦が続いています。
(参考:環境省『中央環境審議会意見具申「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について」について』、経済産業省『第2回 グリーンイノベーション戦略推進会議』)
3.大面積化と安定した量産化の高い壁
ペロブスカイト太陽電池を社会に広く普及させるための重要なハードルとして「大面積化」や「量産技術の確立」が指摘されています。
現在、実験室サイズ(小面積)でのペロブスカイト太陽電池の基礎性能の向上とともに、その性能を維持しつつ広い面積でもムラのない、高品質なペロブスカイト層を作るための「製造プロセス技術」の開発が急がれています。
さらに、量産化に向け、品質のばらつきを減らし安定した歩留まりを実現するための「装置開発」も進められており、早期の大量生産に向けた各企業の取り組みが日々加速している状況です。
(参考:経済産業省『グリーンイノベーション基金』)
ペロブスカイト太陽電池の実用化・一般販売はいつ?
多くの注目を集めるペロブスカイト太陽電池ですが、私たちの身近に導入されるのはいつ頃になるのでしょうか。
2025年大阪万博での実績と、2030年の本格普及に向けたロードマップ
2025年に開催された大阪万博においては、未来の社会を提示する場としてペロブスカイト太陽電池の大規模な実証実験が行われ、国内外から多くの注目を集めました。
■250m超のペロブスカイトの発電設備

経済産業省では次世代型太陽電池戦略にて、ペロブスカイト太陽電池の国内外での進め方について次のように示しています。

このロードマップでは、技術的な課題を段階的にクリアし、2030年頃には本格的な普及および社会実装を目指す方針が示されています。
(参考:資源エネルギー庁『未来のエネルギー技術が集結!大阪・関西万博の見どころをチェック ~太陽光・水素編』)
気になる価格・費用と、国の補助金制度(GI基金など)
ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた価格や導入費用については、市場で十分に競争力を持つ水準までコストを引き下げることを明確な目標として技術開発が進められています。
具体的には、国の「グリーンイノベーション(GI)基金」を用いたプロジェクトにおいて、2030年までに発電コストを「14円/kWh以下」にするという目標が掲げられています。
環境省などの各省庁はペロブスカイト太陽電池の早期の社会実装を後押しするため、すでに需要家向けの導入支援(補助金)事業を展開し始めています。実用化の初期段階では、こうした国や自治体の手厚い補助金制度が積極的に活用できる可能性が高いため、導入を検討している企業は最新の動向を常に注視しておきましょう。
(参考:環境省『ペロブスカイト太陽電池の導入支援』、経済産業省『第10回 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会』)
ペロブスカイト太陽電池を開発する日本企業・メーカーと世界動向
世界の市場を見据え、日本国内の企業もペロブスカイト太陽電池の事業化に向けて積極的に動いています。
積水化学工業、リコー、アイシンなどの最新動向
国内ではさまざまな有力企業がペロブスカイト太陽電池の研究開発に取り組んでいます。
| 企業名 | 研究開発内容 |
|---|---|
| 積水化学工業 | 30cm幅のロール・ツー・ロールによる製造を確立、2027年度に100MWの供給体制を稼働開始予定 |
| リコー | 複合機開発などで培った技術を応用、全機能層インクジェット印刷で製造する技術を展開 |
| アイシン | 自動車部品のノウハウを活かし、ペロブスカイト材料をムラなく吹き付けるスプレー工法を構築 |
このように、各社がこれまで全く別の分野で培ってきた「独自の強み」をペロブスカイト太陽電池の開発に見事に掛け合わせており、早期の実用化と量産化に向けた動きを力強く牽引しています。
(参考:経済産業省『日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)~早期の社会実装を目指した取り組み』『第16回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 グリーン電力の普及促進等分野ワーキンググループ』)
中国企業との量産化競争と日本の優位性
世界中でもペロブスカイト太陽電池の開発が進んでおり、特にタンデム型において研究と開発が加速しています。さらに、中国企業が国を挙げて急速に量産化を進めているのが現状です。
しかし、経済産業省の戦略にもある通り、曲がるフィルム型における耐久性の向上や大型化の技術においては、日本が大きく世界をリードしています。高い品質と、ヨウ素をはじめとする材料メーカーが国内に揃っているという強固なサプライチェーンを活かし、グローバル競争の中で日本の優位性を発揮することが求められています。
(参考:経済産業省『第9回 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会』『次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会 次世代型太陽電池戦略』)
日本発の技術として、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた課題解決に期待
ペロブスカイト太陽電池は、平地不足や資源の輸入依存といった日本特有のエネルギー課題を解決する可能性のある「次世代エネルギーの切り札」です。耐久性の向上や鉛フリー化、量産技術の確立といった実用化に向けての課題が残るものの、産学官が連携し、2030年の本格普及に向けた開発が急ピッチで進んでいます。
企業の脱炭素経営が急務となる現在、自社の窓や壁などの未利用スペースを活用できる本技術は、再エネ導入の新たな選択肢となりえます。今後の技術動向や補助金情報にぜひ注目していきましょう。
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