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【わかりやすく】Jブルークレジットとは?仕組み、価格、認証、購入方法を解説

目次
記事の要点
  • Jブルークレジットとは、ブルーカーボンを定量化して取引可能なクレジットにしたもの。ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が管理・運営しています。
  • 申請者(創出者)・購入者、それぞれ決められた手続きがあります。価格は3つの方式により決定。
  • 取り組むメリットとして、申請者(創出者)はクレジットの売却により資金調達ができる、購入者は温室効果ガスを間接的に削減できる点が挙げられます。

Jブルークレジットは、ブルーカーボンを定量化して取引可能なクレジットにしたもの。国土交通省認可のジャパンブルーエコノミー技術研究組合が管理・運営しています。2020年の取り引き開始以降、認証実績は増加傾向にあります。

この記事では、Jブルークレジットの概要をはじめ、認証の申請方法、購入方法を解説。創出者と購入企業の事例も紹介しているので、Jブルークレジットの活用を検討している企業の参考になるでしょう。ブルーカーボンに興味がある方もぜひご覧ください。

Jブルークレジットとは

Jブルークレジットとは、ブルーカーボンを定量化して取引可能なクレジットにしたもの。カーボン・クレジットのひとつで、2020年より取り引きが開始されています。

カーボン・クレジットとは
プロジェクトにより実現した排出削減または炭素吸収・除去の量に関して、認証を受けたクレジットを、国や企業などの間で取引可能にしたもののこと

Jブルークレジットは、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が管理・運営しています。同組合は、日本初のブルークレジットに関する技術研究組合として、2020年に国土交通省に設立を認可されました。

以下のグラフに示したように、Jブルークレジットの認証実績は2022年度から2023年度にかけ大幅に増加しています。

Jブルークレジットにおける累積認証量の推移
参考:農林水産省『Jブルークレジット制度の概要(国内)』を加工して作成

グラフから推察し、今後、さらなる増加が予想されるといってよいでしょう。

カーボン・クレジットについては、以下の記事で深堀りしています。参考にご覧ください。

対象となるブルーカーボンとは

ところで、ブルーカーボンとはどのようなものでしょうか?Jブルークレジットの対象となるブルーカーボンとは、海洋生物によってCO2が取り込まれ、海洋生態系内に吸収・貯留された炭素のこと

CO2吸収源は主に以下の4種類があります。この4種はまとめてブルーカーボン生態系と呼ばれています。

■ブルーカーボン生態系の種類と特徴

種類特徴、代表的なもの
海草(うみくさ)根・茎・葉が分かれており、海中の砂泥底に根を張り、花を咲かせ種子によって繁殖し、海中で一生を過ごす海産種子植物。
アマモ、コアマモ、スガモなど
海藻(うみも)根・茎・葉の区分がなく、岩などに固着する藻類で、胞子によって繁殖。海葉色によって緑藻・褐藻・紅藻の3種類に分けられる。
アオサ、コンブ、ワカメなど
干潟干潮時に干上がり、満潮時には海面下に没する場所
マングローブ林熱帯や亜熱帯の河口付近など、河川水と海水が混じりあう汽水域で、砂や泥質の環境に生息する樹木。
オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギなど

ブルーカーボンには、グリーンカーボン(陸の植物によってCO2を吸収し、貯蔵された炭素)よりも炭素の貯蓄期間が長い、地球規模で吸収量が多いといった特徴があります。まだ未解明な部分もありますが、新しいCO2吸収源として注目されています。

ブルーカーボンについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考:国土交通省『ブルーカーボンとは

Jブルークレジットの仕組み

Jブルークレジットの仕組みについて説明します。Jブルークレジット化の流れは、以下の通りです。

■Jブルークレジット化される流れ

  1. ブルーカーボン創出者(申請者:ブルーカーボン活動の主体)が、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合に認証を申請。ブルーカーボンを定量化しクレジットにする
  2. ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が、購入希望者(企業など)を公募する
  3. 購入希望者は申込みをする
  4. 譲渡が決定したら、購入者は購入手続きをする
  5. 購入者が、Jブルークレジットでカーボン・オフセットする

カーボン・オフセットとは、自社ではどうしてもゼロにできない排出量について、他者による CO2の削減・吸収量の購入によって埋め合わせることを意味します。

カーボン・オフセットのイメージ
参考:環境省『カーボン・オフセット ガイドライン Ver.3.0』を加工して作成

イメージとしては、上記のようになります。

Jブルークレジットの利点・効果

申請者と購入者の、それぞれの利点と効果は以下が挙げられます。

利点効果
申請者・クレジットの売却により資金調達ができる
・環境に配慮した企業としての認知度が向上する
企業として環境保全に寄与できる
購入者・温室効果ガスを間接的に削減できる
・環境保全の取り組みを支援できる
環境保全の取り組みをアピールすることで企業価値が向上する

環境と経済の両面において好循環が生み出され、双方に利益をもたらす仕組みとなっています。こうした利点・効果が、Jブルークレジットの認証実績増加につながっているのでしょう。

参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット®認証申請の手引き

Jブルークレジット認証の考え方

Jブルークレジットの認証は、「コアカーボン原則」の考え方に準拠し、Jブルークレジット審査認証委員会が行っています。

コアカーボン原則とは
ボランタリークレジット(民間主導のクレジット)における高品質な炭素クレジットの世界基準のこと。ICVCM(ボランタリーカーボン市場整合性評議会)が提案しました

コアカーボン原則の項目と判断基準は、以下の通りです。

■コアカーボン原則の項目と判断基準

求められる項目判断基準
追加性クレジットの取得があることにより、温室効果ガスの排出削減/吸収除去が実現するか
情報公開 クレジット活動に関する情報を、網羅的かつ透明性を持って開示しているか
二重計上のないこと 重複した申請・発行・売却がないか
持続性温室効果ガスの排出削減/吸収除去が持続的か
体制透明性・説明責任・クレジットの品質を担保する体制となっているか
削減/吸収除去量の計量温室効果ガスの排出削減/吸収除去の計測が保守的かつ科学的に行われているか
持続可能性社会や環境の持続可能性に好影響をもたらすものか
ネットゼロ適合性化石燃料の使用を増大するような活動や技術活用など、ネットゼロに反することを行わず、かつ温室効果ガス削減の取組みを継続的に進めているか

コアカーボンの原則に基づき認証される対象・範囲は、以下のグラフのようにプロジェクトの実施によって吸収・貯留されたCO2吸収量です。

Jブルークレジット認証対象となるCO2吸収量
参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット ®認証申請の手引き』を加工して作成

つまり、プロジェクト実施前のCO2吸収量は対象外で、あくまでも実施後の吸収量に着目するのですね。プロジェクトは持続性が求められますが、申請は1年単位で行います。

参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット ®認証申請の手引き

Jブルークレジットの価格を決定する3つの方式

価格やクレジット購入者(落札者)、購入数量を決める方式は「総量配分方式(口数型)」「コンベンショナル方式(複数単価入札方式)」「指定単価入札方式」の3通りがあります。各方式について説明します。

総量配分方式(口数型)

  1. 購入申込者は、口数を示して応札する
  2. 公募対象クレジット総量を、購入申込者による購入申込口数の総数で除した数量を1口あたりの譲渡数量とする
  3. 申込総口数に応じ、購入者にクレジットが譲渡される

■コンベンショナル方式(複数単価入札方式)

  1. 購入申込者は、購入申込総額と購入申込数量を示して応札する
  2. 申込平均単価(購入申込総額を購入申込数量で割った額)が高い順に購入者が決定される
  3. 先順位の購入申込者から、順次、購入申込数量と同量のクレジットを配分される

■指定単価入札方式

  1. 購入申込者は、定められた指定単価で購入申込数量を示して応札する
  2. 申込先着順で落札者が決定される
  3. クレジットが配分される

2023年度第4回公募では、17プロジェクト・計19コースのうち、総量配分方式(口数型)が7つ、コンベンショナル方式(複数単価入札方式)が3つ、指定単価入札方式9つでした。

参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『令和5年度(2023年度)第4回Jブルークレジット®購入申込者公募 -終了-

【創出者必見】Jブルークレジット認証の申請方法

ブルーカーボン創出者(申請者:ブルーカーボン活動の主体)による、Jブルークレジット認証の申請方法について、みていきましょう。

なお、申請は随時受け付けされますが、審査や発行時期は一定の期間が設けられています。

Jブルークレジット認証の申請方法

参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット ®認証申請の手引き

ステップ1.対象プロジェクトを整理する

ブルーカーボンをブルークレジット化したい場合、まずは対象プロジェクトを整理し、要件に当てはまるのか確認します。

■対象プロジェクトの要件

項目内容
基盤自然基盤でも人工基盤でも可能
・自然基盤:藻場、干潟、マングローブ、その他内湾などの自然海岸ならびに自然海域における活動
・人工基盤:構造物、養殖施設などにおける活動
追加性クレジット取得が、活動の維持や発展につながる
ベースライン活動の結果、吸収量の増加をBACI(※)で示せる
※「Before-After:事前調査‐事後調査」「Control-Impact:事業実施区‐事業未実施区」という観点から、活動の結果を評価すること

ステップ2.運営事務局に事前相談する

情報の整理ができたら、「Jブルークレジット運用システム」にて運営事務局へ事前相談します。相談内容としては、「申請しようとしているプロジェクトがJブルークレジットの対象プロジェクトに該当するか」「ベースラインの考え方は妥当か」などです。

ステップ3.調査データとりまとめ・CO2吸収量を算定する

プロジェクトの実施場所の面積など調査データをとりまとめます。必要なデータが揃ったら、CO2吸収量を算定します。

基本的な計算式
CO2吸収量=プロジェクトの実施対象生態系の分布面積 × 生産量から推定した吸収係数(単位面積当たりのCO2吸収量)

具体的には以下の3方式があります。

ブルーカーボンによるCO2吸収量の算定方法
参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット ®認証申請の手引き』を加工して利用

式1は、全てのブルーカーボン生態系に適用できます。式2は海草藻場生態系と海藻藻場生態系に適用できます。ただし、海藻養殖でロープを使用している場合は、式2-2で求めることが可能です。

単位面積当たりの吸収量とブルーカーボン残存係数は、調査ではなく文献値を用います。ひとつの文献値では精度が低いため、複数の文献から収集し設定することが望ましいです。文献の収集方法については、事務局などに相談し、値の妥当性を確保するようにしましょう。

ステップ4.申請手続きを行う

Jブルークレジット運用システム」にて、申請の手続きをします。具体的には以下の項目を入力します。

■主な入力項目

  • プロジェクト名
  • プロジェクト概要
  • 申請対象期間に実施した活動の概要
  • プロジェクト実施場所
  • 対象とする海洋植物の選択
  • クレジット認証申請対象期間
  • 対象とする面積(ha)
  • 面積の算定根拠
  • 単位面積当たりの吸収量
  • 単位面積当たりの吸収量の算定根拠
  • 調査などに使用した船舶
  • ベースラインCO2吸収量
  • Jブルークレジットが発行された場合の当初保有者

ステップ5.運営事務局が申請内容確認し、現地ヒアリングを実施する

運営事務局が申請内容を確認し、クレジットの二重計上防止のため、申請者名とプロジェクト概要をもとに意見公募が行われます。

その後、新規申請の場合には原則として、運営事務局による現地ヒアリングが行われるので、申請者は立ち合います。なお、ヒアリング結果によっては、申請内容や添付資料の修正が必要になることもあります。

ステップ6.審査認証委員会による審査が行われる

審査認証委員会が、申請内容について、Jブルークレジットの要件を満たしているのか審査します。なお、審査認証委員会は、沿岸環境や⽣態系⼯学などを専門する大学教授や水産研究員、調査会社の社員などで構成されています。

ステップ7.クレジット認証・登録される

審査結果を受け、申請内容や添付資料に修正が必要な場合には対応します。審査が通れば、クレジットが認証・登録されます。

なお、認証・登録されたクレジットについては、クレジット購入申込者公募手続きへの参加・不参加を選べます。

  • 参加の場合:公募による取引方式などを協議する
  • 不参加の場合:独自で取引する

【購入希望者必見】Jブルークレジットの購入方法

Jブルークレジットを購入したい場合、どのような手続きが必要なのでしょうか?

希望者が購入できるJブルークレジットは、認証・登録されたクレジットのうち、公募手続きに参加すると表明した分が対象です。購入手順を紹介します。

Jブルークレジットの購入方法

参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット®購入申込者公募(常設)

ステップ1.購入申込の意向を表明する

購入申込を希望する場合は、まずは下記の宛先に電子メールにて購入申込意向表明を送信します。

■宛先

■購入申込意向表明内容

  • 会社など法人の商号/名称
  • 住所(本店所在地/主たる事務所の所在地)
  • 法人番号(国税庁法人番号公表サイトで検索可能な13桁の半角数字)
  • 購入申込の意向があるプロジェクトの整理番号記号およびプロジェクト名

表明後、受付や審査を経て、申込必要書類の様式と契約約款の各電子ファイルが送られてきます。

ステップ2.購入申込をする

所定の様式により作成した購入申込書に記入・押印の上、それをスキャンしたPDFを、ステップ1と同じ宛先に送信します。申込は、購入申込の意向を表明してから原則として2週間以内に行います。単一のメールにて、複数プロジェクトに申し込むことも可能です。

なお、押印済み購入申込書(原本)については、郵送の必要はありません。

ステップ3.購入者・譲渡数量・譲渡金額が決定される

プロジェクトごとに設定された公募方法に基づき、購入者や譲渡数量、譲渡金額が決定します。購入者に認められた場合は、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合より「Jブルークレジット® 購入承諾書兼ご請求書」(予定)が電子ファイル(PDF)にて届きます。

ステップ4.購入代金を支払う

購入代金を支払います。支払い期限は、原則として、「Jブルークレジット® 購入承諾書兼ご請求書」(予定)の記載日付が属する月の翌月25日が締め切りとなります。

期限までに全額支払われない場合は、公募参加資格などを喪失する場合もあります。必ず期限内に支払うようにしましょう。

Jブルークレジットの購入における注意点

Jブルークレジットの購入に関する注意点を2つ紹介します。

無効化申請が必要

無効化とは、一度使われたクレジットが再び利用されたり、販売されたりされないようにする手続きのこと。ジャパンブルーエコノミー技術研究組合の公募により購入・取得したJブルークレジットは、無効化しないとカーボン・オフセットできません。

Jブルークレジットの無効化のためには、所定の様式にて無効化申請書を作成し、提出します。

カーボン・オフセット証書の発行は有償

Jブルークレジットを活用し、カーボン・オフセットが実施されたことを証明する書類として、「Jブルークレジット・カーボンオフセット証書」があります。オフセットロゴが記載された同証書は、有償で発行してもらえます。無償で自動的に発行されるものではないので、希望する場合は事務局に相談しましょう。

Jブルークレジットの取り組み事例

実際にJブルークレジットの認証・発行を行った創出者と、購入者となった企業を一例ずつ紹介します。

【認証・発行】日本製鉄株式会社ほか

プロジェクト名千葉県君津市沿岸における鉄鋼スラグを用いた地盤改良技術による海藻藻場造成
概要・2011年、水深約10mの砂地に、鉄鋼スラグによる地盤改良技術と鉄鋼スラグ人工石を用いた浅場造成を実施し、ワカメを移植
・2011年以降は、毎年浅場造成を継続し、2023年8月までに合計6.66haの浅場を造成
・造成地のうち、4.73haにおいてワカメ藻場が造成されたことを確認
クレジット対象期間2022年4月28日~2023年4月27日
認証対象吸収量12.6t-CO2

日本製鉄株式会社と千葉県漁業協同組合連合会、君津市による共同プロジェクト。企業・漁連・市町村がブルーカーボン創生に共同で取り組んだ、全国初の事例です。企業ならではの技術力、漁協ならではの指導や施行支援活動を、自治体と連携して進められ、共同推進ならではの利点が十分に発揮されました。

参考:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『令和5年度(2023年度)第2回Jブルークレジット®認証・発行について

【購入】三洋テクノマリン株式会社

対象プロジェクト名循環型藻場造成「積丹方式」によるウニ増殖サイクルとブルーカーボン創出プロジェクト
購入クレジット2.1t-CO2
購入年月2024年3月

測量・地質調査や環境調査、生物分析・化学分析などを行う三洋テクノマリン株式会社は、藻場や干潟の調査・再生業務に積極的に取り組んでいます。ブルーカーボン生態系の調査・育成に関わる事業に参画することで人間・社会・地球環境の持続可能な発展に貢献するとしています。

参考:三洋テクノマリン株式会社『「Jブルークレジット®」を購入しました(2023年度2回目)

Jブルークレジットを理解し、認証・発行または購入希望の企業は活用しよう

Jブルークレジットは、ブルーカーボンを定量化して取引可能なクレジットにしたもので、2020年の取り引き開始以降、認証実績は急増しています。創出者はクレジットの売却により資金調達ができます。購入者はカーボン・オフセットすることで温室効果ガスの間接的な削減が可能だったり、カーボンニュートラルの実現に向けた活動に貢献できたりします。

Jブルークレジットの概要や仕組みなどをしっかり理解し、自社でできる取り組みを推進していきましょう。