【簡単に】FIT制度とは?買い取りの仕組みや期間終了後の対策
- FIT制度とは、再生可能エネルギーで作った電気を、一定期間、国が定めた価格で買い取ってもらえる制度のこと。
- 固定価格で電力会社が買い取る仕組みですが、その費用は国民が負担する再エネ賦課金から支払われます。
- FIT制度の期間終了後の対策として、大きく分けると自家消費と売電の2つがあります。
FIT制度とは、太陽光発電など再生可能エネルギーで作った電気を売る際に、一定期間、国が決めた価格で電力会社に買い取ってもらえる制度です。「FIT制度の買い取り価格は?」「適用期間が終了したらどうなるの?」など、制度の内容が気になっている方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、自宅や産業用で発電を検討している方に向けて、FIT制度の仕組みをわかりやすく紹介しています。また、すでにFIT制度で売電契約をしている方も、期間満了後の対策について解説していますので、ぜひ参考にしてください。
FIT制度(固定価格買取制度)とは?
FIT制度とはどのようなものか、概要や目的を紹介します。
電気を一定価格で売電できる国の制度
FIT制度は、太陽光発電など再生可能エネルギーで作った電気を、一定期間、国が決めた価格で電力会社に買い取ってもらえる制度です。
FITの読み方は「フィット」。「Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)」の頭文字からとられた略称です。日本語では「固定価格買取制度」といいます。
FIT制度の目的。背景には日本特有の問題や地球温暖化も
FIT制度の目的は、再生可能エネルギーを普及させることです。太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーを使って電気を作るためには、高額な費用がかかります。FIT制度によって、作った電気がいくらで売れるかがわかれば、コストを回収できるかどうかの見通しも立ちやすくなるでしょう。
では、なぜ再生可能エネルギーを普及させる必要があるのでしょうか。背景にあるのが「エネルギー自給率」です。日本のエネルギー自給率は、2021年度時点で13.3%。一方、ノルウェー、オーストラリア、カナダ、アメリカなどは自給率100%以上となっており、日本のエネルギー自給率はOECD加盟38カ国中37位でした。
これらの結果からわかるように、欧米と比べると、日本のエネルギー自給率は低いのが現状です。エネルギー自給率を高めるとともに、地球温暖化対策の世界的な動きにも対応するため、再エネ発電を促進するFIT制度が作られました。
参考:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|1.安定供給』
【全5種類】FIT制度の対象となる再生可能エネルギー
FIT制度の対象となる再生可能エネルギーの種類と条件は、以下の通りです。
FIT制度の対象となる種類
・太陽光発電
・風力発電
・水力発電
・地熱発電
・バイオマス発電
FIT制度の対象となる条件
・国が定める要件を満たす事業計画を策定すること
・上記の計画に基づいて新たに発電を始める者
FIT制度は、個人住宅の屋根に太陽光パネルを載せて発電しているような小規模なものから、産業用の大規模な発電所まで幅広いケースを対象としています。
FIT制度は誰が買い取る?仕組みや申請方法
FIT制度の仕組みは複雑なため、「わかりにくい」と感じている方もいるのではないでしょうか。ここでは、FIT制度の内容についてわかりやすく紹介します。
国民の賦課金も使って電力会社が買い取る仕組み
FIT制度で「誰が電気を買い取るの?」と気になっている方もいるでしょう。前述した通り、一般的に、電気事業者が一定価格で買い取ります。ただし、この買い取り費用は、国民が負担している「(再エネ)賦課金」から支払われています。
資金源となっている賦課金は、電気を利用する全ての人が電気料金の一部として、払っているものです。
再生可能エネルギー発電事業者が申請
FIT制度の対象として認定されるには、発電設備の設置者が申請手続きを行う必要があります。代行事業者に手続きを委任することも可能です。
FIT制度の買い取り価格
FIT制度の買い取り価格がどのくらいか気になっている方も多いでしょう。認定時の買い取り価格は、制度が開始された当初より下がっているのが実情です。これまでの価格推移や、2024年以降の買い取り価格を詳しくみていきましょう。
再生可能エネルギーの買い取り価格の推移
再生可能エネルギーの買い取り価格は、「発電方法」と「規模」によって買い取り価格が分けられています。以下は、大規模な太陽光発電の買い取り価格の推移を表すグラフです。
FIT制度開始以降、買い取り価格は下がっています。つまり、早期にFIT制度の認定を受けた人の方が、後に認定された人より高い価格で電気を売っている状況です。
ただし、再エネ発電の普及につれて発電にかかるコストも下がっているため、トータルでみると大きく変わらないといった見方もあります。
【2024~2025年度】FIT制度における買い取り価格
以下に、2024年と2025年の太陽光発電の買い取り価格をまとめました。
■太陽光発電
電源 | 規模 | 2024年度 | 2025年度 |
---|---|---|---|
住宅用など | 10kW未満 | 16円 | 15円 |
事業用など(地上設置) | 10kW以上50kW未満 | 10円 | 10円 |
50kW以上(入札対象外) | 9.2円 | 8.9円 | |
事業用など(屋根設置) | 10kW以上50kW未満 | 12円 | 11.5円 |
50kW以上 | 12円 | 11.5円 |
このほか、風力、水力、地熱、バイオマスの買い取り価格は以下の参考資料から確認できます。
参考:経済産業省『再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します』
FIT制度のメリット
FIT制度は、以下のようなメリットがあります。
売電する人のメリット
・市場で価格が下がっていても、一定価格で買い取ってもらえる
・売電による収入の見通しがつきやすい
社会全体のメリット
・日本のエネルギー自給率が向上する
・再エネ電力の主力化によって地球温暖化の抑止につながる
FIT制度は、再エネ発電を始める人が安心して取り組めるように後押しする制度といえるでしょう。また、日本のエネルギー自給率向上や地球環境への貢献も期待できます。
FIT制度のデメリット
FIT制度には次のような、デメリットや課題があります。
売電する人のデメリット
・卒FIT後に買い取り価格が安くなる
※卒FIT=FIT制度であらかじめ決められている価格の適用期間が満了となること
社会全体のデメリット
・賦課金により国民への負担がかかる
FIT制度は、一定期間のみ適用される期限付きの制度です。期間満了となり、FIT制度での売電が終了した後は、売電収入が減ることが予想されます。賦課金の問題については、後で解説します。
FIT制度の期間終了はいつ?卒FIT後の対策
FIT制度の期間終了と聞くと、「FIT制度がなくなる?」と思う方もいるかも知れません。これは誤解で、FIT制度は終了せず、継続しています。FIT制度が適用される期間が満了となる、と考えるのが正確です。
先述したように、FIT制度で発電した電気を固定価格で売ることができるのは、契約時に決められた期間のみです。FIT制度の適用期間と、期間終了後の対策についてみていきましょう。
【一覧】FIT制度の調達期間
固定価格で買い取ってもらえる期間(調達期間)は、再生可能エネルギーの種類や規模によって異なります。各分類の調達期間は、以下の通りです。
種類 | 調達期間 |
---|---|
太陽光 | 10kW未満:10年間 10kW以上※:20年間 |
風力 | 20年間 |
水力 | 20年間 |
地熱 | 15年間 |
バイオマス | 20年間 |
個人の住宅なら、太陽光発電で出力10kW未満が一般的です。調達期間は10年なので、例えば2014年度にFIT制度の適用を開始したら2024年度に期間満了となります。
産業用など、太陽光発電で出力10kW以上のケースでは、調達期間が20年と2倍に。調達期間が長い分、売電で得られる収入も多くなることが予想できるでしょう。
参考:経済産業省『再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック2024』
FIT制度の期間終了後の対策
FIT制度の期間終了後の対策として、個人住宅(太陽光など)では「自家消費」「売電」の大きく2つの方法があります。
個人住宅の場合
・自家消費の促進
・電力会社との継続契約
・新たな電力会社との契約
自家消費を促進するためには、電気自動車(EV)や蓄電池など、余剰電力を貯めておくためのものが必要です。EVに貯めておいた電気は、V2H機器※を接続して自宅に送ることもできます。太陽光エネルギーでお湯を沸かす給湯器の導入も一案でしょう。
一方、事業として発電を行っている場合は、「自家消費」「売電」のほか、「発電所の売却」「撤去」なども選択肢の一つです。
産業用の場合
・電力会社との継続契約
・新たな電力会社との契約
・自家消費への転換
・発電所の売却
・土地所有者への返還
・発電所の撤去
権利を譲渡して発電所ごと売却するケースでは、売却益を次の投資の資金に回せます。土地を賃貸して発電している場合は、地主との契約内容によってとるべき方法が異なります。事前に確認しておきましょう。
※V2H機器=Vehicle to Homeの略で、EVなどのバッテリーに蓄えた電気を家に給電できる機器
FIT制度の問題点。課題解決のため制度改正も
FIT制度には、以下のような問題点があります。
FIT制度の問題点
・国民負担による賦課金
・認定取得後の未稼働案件
1つ目の問題は、デメリットでも触れた賦課金の負担です。2024年度の賦課金単価は、1kWh当たり3.49円。1カ月の電力使用量が400kW※の家庭では、月額1,396円となります。
2つ目の問題は、FIT制度で認定されたのにもかかわらず未稼働の発電施設があることです。これについては制度見直しによって、2022年4月以降は運転開始期限を設けています。
※総務省家計調査に基づく一般的な世帯の1カ月の電力使用量
参考:経済産業省『再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します』
新たに「FIP制度」がスタート。FIT制度との違いとは
先述した問題点も踏まえ、FIT制度と並行して、2022年度から新たに「FIP制度」が始まりました。FIP制度は売電による収益と手当(プレミアム)が受け取れる、市場連動型の仕組みです。
FIP制度の目的は、再エネ電力を市場へと段階的に統合していくことです。FIT制度は適用期間内であれば契約時の固定価格のまま一定ですが、FIP制度は価格が変動します。FIP制度を使って電気を売る場合は、より多く収入を得るために、市場の状況を意識することが重要です。
FIT制度の活用も視野に入れて再エネ発電に取り組もう
電気を一定価格で買い取ってもらえるFIT制度。再エネ発電を導入する人にとっては、売電による収入が予測できることで、一定の安心が得られる制度といえるでしょう。ただし、期間終了後の対策について、事前に考えておく必要があります。市場連動型のFIP制度も含めて検討し、それぞれに合った制度を活用して再エネ発電に取り組んでいきましょう。